172.生活スタイル一変 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

172.生活スタイル一変

ここ最近、ずっと微熱が続いていた。
ストレスで、過食になりストレスを解消せぬままダイエットに入った所為なのか体調は優れなかった。
ダイエットと言っても過度の食事をしないといった、やる気があるのか無いのか分からないようなダイエットだったのだけども。
私の体調を気にかけていたのは彼だけではなく、父にもとても心配をかけた。
父親に「男にフラれた」などと泣きつけはしない。
ずっと部屋に閉じこもっており、やっと部屋から出ていった時、父の顔はとてもホッとしたような顔をしていた。
「死んでるかと思った」なんて冗談を言っていたが、父はある提案を私に持ちかけてきた。
家族に与えられた部屋を交換しようというものだ。
環境が変われば、気分も変わるだろうという安易な考えだが賛成した。
12畳収納付きの広い部屋から、8畳収納なし+母の嫁入り道具で半分占領されているが日当たりは良い父の部屋へと引越しを開始した。


捨てられない性格の私の部屋からは沢山の思い出が溢れ出た。
私は全て持ち込むつもりだ。
が、父は情のひとかけらも見せずに離婚した母の品である物全てをゴミ袋へ詰め込んでいた。
「お前さ、部屋の大きさ考えろよ!この際思い切って捨てろ」
父は私にそう言う。
「これ何?」
「え?これは中学の時付き合ってた男からもらったもん」
「これは?」
「あぁ、それは・・・誰っけな?とにかくもらったもん」
「いや、もう既に思い出でも何でもなくなってないか?」
そう言われ、私は捨てる決意を固める。
残すものと残さないものの厳選。
思い出せるものと思い出せないものの厳選だ。
残ったものは少なかった。
彼から貰った物と憧れの先輩がくれたオルゴールのみだ。
オルゴールを残したのは、彼以外で自分の気持ちを伝えようと思った人だったからだ。
これを見ると勇気が出る。
何となく淡い思い出だ。


微熱はそれからも何日か続いた。
気持ちの切り替えですんなり治るものでなかった。
が、徐々に笑顔になってゆく。
やる気も出てくる。
そして、私は目標を立てた。
自分の知識をもっと確かなものにして資格を取ろう。


私は父に相談し、資格を取るためもう少し踏み込んだ勉強が出来るようにある学校へ願書を出した。
学費は自分で払うという事でローンを組んだ。
カウンセラーとはまた違う分野の精神保健福祉士という資格を目指すことにしたのだ。
仕事にするかどうかはまだ決めてはいない。
が、確かなものを目指すという意味では今までの勉強の仕方よりは良いと思えた。


相変わらず彼からの連絡は少ない。
だけど、四六時中彼の事を考えるという事もなくなった。
何かに集中できるものがある。
これを充実というのだろうか。
特別何かをするというわけではない。
ただ生きるという事が楽しいと思える。
足の裏に大地を感じる。



[ ← 171 ]  [ 目次 ]  [ 173 → ]