170.友より男 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

170.友より男

突然、彼に別れを告げられて、泣きじゃくり死のうとか考えた自分が怖くて誰かを探した。
握りしめた携帯のボタンを連打して、耳に当てる。
プルルルル プルルルル。
出てください…出てください…祈り続けた。
敏感にコール音が途切れる音をキャッチャして助けを求める。
「もしもし…」
「キャーーーー、何で号泣?!」
親友はかなりの驚きようだった。
「ウグッ…さよならって」
「はぁ?」
「答え出たよ」
「はぁ?あいつ?答え?さよなら?はぁ?」
「・・・・」
「ちょっと待って!ありえへん!マジでちょぉ待ってな、整理する」
「ウグッ」
「号泣してるとこ無理させるけど、冷静に聞けよ」
「ウグッ」
「大丈夫、直ぐに元に戻るから。これは、勢いだけに過ぎんから。あんたが別れようって言うたわけじゃないやろ?」
「待つ言うた」
「よし!あいつには別れを切り出した理由が必ずある。それは嫌いになったとか別れたいって言う感情以外のとこや。答えが出ぇへん言うてたやつが、数時間で答えが出せるとは思われへん。好きなんは変わってない」
「もう何も言わんし解からん」
「そんなもん、いつもの事やん。あんたがエライ事なってる事は想定内やし、そんな時に連絡取ろうなんて思わんわ」
「エライ事なっとる?うち」
「あぁ、もぅ、手に負えんくらいな、ヒステリック寸前」
「ごめん、ウグッ、ウグッ、また泣きそう」
「泣け泣け!!」
私はしばらく泣き続けた。
「ヒック、ヒック、でも良かった。電話繋がらんかったらどうしようかと思った」
「あぁ、偶々今日は仕事遅番やってん」
「でもな、何かどんなに言葉もらっても立ち直られへんねん」
「うん…」
「正直、大丈夫って言葉も根拠はない…」
「まぁ、そや!」
「うちが、ゆうじに言うて欲しい言葉言うてくれてるよな」
「かな…」
「そやったら、ゆうじの口からその言葉を聞きたいと思うねん」
「そやな」
「うち、あんたに電話したけど、本当はゆうじが電話に出て欲しかってん」
「そうやな」
「ゆうじじゃないと元気になられへん…」
「当たり前やん!今を乗り越えられたらそれでいい。当然、諦めんよな!」
「・・・・」
「元気になってもらわな困んねん。じゃないと、私はあいつを一生恨まなあかんしな」
「何であんたが怒っとるん・・・」
「うぅーん、ま、うちもあいつから色々聞いてるからな。こんな形、ホンマに許されへん」
「でも、どうしたらいいか…」
「もう一回連絡し。あいつなら、連絡してくるから。それまで待つ。待たれへんかったら、うちに電話してくる。解かった?変な気、起こすなよ!絶対。そしたら私はあんたも許さんからな」


私は親友に助けを求め、自ら助けを断り電話を切った。
友より男を選んだのだ。


だけど、親友の電話が繋がらなければ、親友の言葉がなければ、私はこのまま彼を諦めていたし、気持ちを整理することもなかったし、何より落ち着くこともなかった。
「アナタの言葉は助けになりません」何より大切な親友だからこそ言えた言葉だ。
私は充分に親友に助けられた。
私は親友がいないと、友より男を選べないダメな奴なのだ。
親友が彼へと気持ちを向けさせてくれた。


女の心はたった一人の男だけが傷つけられるのだ。
そして、女の心はたった一人の男にしか癒せない。


<夜、11時には帰ってますよね。電話するので出てください>
私は、早速彼にメールを打った。

別れを切り出されてから24時間が経とうとしている。



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