166.彼女と別れてください | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

166.彼女と別れてください

誕生日の翌日。
<大好きです>
前触れもなく、突然彼にメールをした。
夕方…もう夜になっていただろうか。
きっと、好きだと返事が返ってくるはずだ。
そういつものように。


<俺も好きやで、せのり>
今日はいつもより早く仕事が終わったのか、休憩中なのか、1時間も早くにメールが届いた。
いつものように。


<嬉しい。でも、他にも好きな人が居るからムカつく>
いつも、じゃないメールの続きを送る。
私にとってはいつものことだった。
心の中でいつもそう思っていた。
だけど、彼にとっては突然。


それから返事はなかった。
無反応だった。
おやすみも居えずに、少しだけ期待した返事を諦めた。
でも想定していた。
彼が黙ること。
だから、傷つきはしない。
自分で自分の首を絞めたまでだ。
ここ最近、とても幸せだったと思う。
だから、その幸せを壊した。
目をつむったら、真っ暗で何も見えなくなる。
だけど、目の前には彼女という存在がある。
目をつむったって消えない事実だ。
忘れちゃいけない。
調子に乗っていちゃいけない。
私はこんなことの為に、恋愛を始めたわけじゃない。
満足何かしてない。


だけど夜遅くに、彼からメールが届く。
<好きやで>
知ってる。
彼はいろんな事、考えてくれたんだと思う。
でも、私が知りたいのは、今までこんな時間まであなたが考えていたことだ。
考えていたのは私の事だけじゃないはず。
<彼女と別れてください>
私は彼にそう送ったのだ。
返事が来たわけでもないのに、辛すぎる胸の痛み。
返事はなかった。
また彼を悩ませた。


返事は翌日の昼に届いた。
朝にはまだ整理がつかなかったということ。
<ごめん、まだ答えは出せない>
昼にも整理はつかなかったみたいだ。
面倒くさいだろうな。
うっとおしいだろうな。
この糞忙しい時に、きっと彼の頭の中はパンパン爆発寸前だろう。
もっと悩めばいい。
もっともっと毎日真剣に考えればいい。
私は返事をしなかった。


人生の節目に立った人間は積極的だ。
だけど、ビクビク怯えてる。
でも、許さない。
本当は答えなんて聞きたくはない。
無理やり選ばれたくもない。
ただ、今、彼が何を想うのか知りたい。
コレが恋愛なのか確かめたい。



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