164.誕生日前日 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

164.誕生日前日

誕生日の前日、とても忙しかった。
忙しい用事といっても、家事専門なのだけど。
いつもに増して雑用が多かった。
来客も多かった。
済ませる前に次の雑用を頼まれ、中途半端に残した雑用を行ったり来たり。
要領が悪いだけか・・・。


<今日、何してた?>
夕方の彼からのメール。
<暇だった>
私は何故かそう答えたのだ。


とても忙しかったが、嘘じゃない。
はぁっと一息ついて時計を見ると全然時間は経っていないのだ。
忙しくしていた筈なのだけど、時間を持て余していた。
忙しくしていたいだけだったのかもしれない。


<はぁ?暇なら何かしろよ!今日は今日だけ。充実した1日をちゃんと送りなさい>
怒られてしまった。
毎日を充実させろだなんて無理だ。
何も手に付かない日だってある。


そう、今日私は何も手につかずに焦っていた。
考えたくない事考えていた。
明日が来なければいいのに、そう思っていた。
寂しかったんだ。


彼はまだ仕事をしているらしく、暇を見つけては私に説教をメールで送ってきた。
寂しいから落ち込んでたなんて言えやしない。
だから、私は「暇だ」と答えたんだ。
嘘だけど嘘じゃない。
何でもないフリをしたかった。
たかが誕生日くらい…って思わせたかった。


このままじゃバレそうでまた彼を困らせてしまう。
私はおちゃらけて話をそらす。
彼も乗ってきて、楽しいと思えた。
彼と話が出来るって事が私は一番嬉しいかもしれない。
コレが電話だったらなと少しだけ残念がってみる。
<あぁエッチしたい>
彼はまたエッチな事を言い出す。
<ゆうじはどんなエッチがしたいの?>
<バック>
<バック好きだね。他にはないの?>
<立ちバック>
<基本後ろなんだ>
<攻めてる感が溜まらん>
<Sなんだ・・・>
<そんなプレイには興味ないけどな>
<興味ないんだ>
<裸にエプロンとか道具とか逆に萎えるかもな>
<萌え~>
<そんな言葉使わないの!>
<こう言うんじゃないの?>
<燃えないから>
<え?何が燃えるの?>
<ってか、お前解かって使ってる?>
<え?>
<いい!とにかく今度はバックな>
<しょうがないな~>
<仕方ないんだ・・・>
<だって私は抱きしめられながらがいいもん>
<んじゃ、後ろから抱きしめたるわ>
<そうしてもらう>


途切れたメール。
時計をみると23時半だった。
彼との時間は早い。
もう直ぐ誕生日だ。
10月14日を目前に23時50分、少しだけ泣いた。



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