162.二番がいい | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

162.二番がいい

ラブホテルを出て、そのまま家まで送ってもらった。
彼はまたソフトへ行く。
「行かないで欲しい」と言いたかった。
そんな気持ちに彼は気付いているようで「ごめんな」そう言う。
私の為に会いに来て欲しいという言葉は、私だけではなく彼の異物にもなっていた。
引っかかっている。
「俺、お前に会いに来てるから」
「うん」
「ついでなんかじゃないから」
「うん」
「そんな顔すんな」
「うん」
「誕生日も仕事でごめん」
「うん」
「連絡するから」
「うん」
「何か言えよ…」
「うん」
「…好きやで」
彼にキスをされた後、私は車を降りた。
一緒に居て欲しいって事ばかり考えていて他の言葉が出てこない。
彼の今口にした言葉さえも通り過ぎていくようだ。


自分の部屋に戻ってポーっとしている。
何をどう考えていいのか解からなかった。
いろんな事をこの頭は考えたがている。
さぁ、私はどれを優先すべきなのか。
とりあえず、私はもう一度眠ることにした。


昼ちょっと前に、彼からのメールで目が覚める。
<昨日はバタバタで疲れたね。でも楽しかったよ、ありがとう。やっと、せのりとセックスが出来てよかった。気持ちよかったわー。次はバックやで!今日はとりあえず体力温存という事で…乗り切るわ>
どうやらソフトは午前中に終わったらしく、明日からの仕事の為に早々と彼は大阪へ帰っていったみたいだ。
ふーん、そんな感想だった。
ただ、ふーんとは返事ができない。
<一緒に居たかった>
多分、素直な気持ちだと思う。
複雑な自分の心が解からないのだけれど。


夕方、また彼からメールがくる。
<ごめんな。俺も一緒に居たい気持ちはあるよ。俺のワガママについてきてくれてありがとうな、いつも>
彼は謝ってばかりだ。
謝られる事にずっと違和感を感じていた。
確かに、私が腹を立てているから彼は謝っているのだけれど、私の心はこの立腹は謝罪なんかじゃ収まらないと言っている。
返事ができなかった。


夜、また彼からメールがくる。
こんなにも連絡をする人ではないのに。
<何か疲れとれへんな。せのりはもう寝たか?明日からまた仕事や、頑張らないと。せのりもしっかり勉強するんやで!夢があるのは素晴しいことで、その夢に向かって頑張れるのはさらに素晴しいことやと思う。夢に到達するまでの過程は生きてる中で充分、充実した自分が輝いている時間やね。せのり、頑張れよ>
彼が私の側にいる。
そう感じた。
何故私は彼を遠ざけようとしているのだろうか。
返事が出来ない自分がいた。

どんなメールが来てもピンとこなかった。


はぁ、ため息を漏らすと、電話がなる。
彼の名が携帯の液晶で点滅するのをじっと眺めた。
しばらくして私はその電話に出る。
「もしもし」
「・・・・」
プーップーップーッ・・・無言で電話が切れる。
電波でも悪いのだろうかと掛け直すのだけど、繋がる電話に彼は出ない。
何なの?一体。
もういいやと電話を机の上に置いた時、また携帯がなる。
彼からのメールだった。
<メールの返事がないから確認しただけ。寝るわ。おやすみ。腕枕したるで、こっちおいで>

おやすみとだけ伝え私は眠った。


彼は、彼女の存在を忘れては居ないだろうか。
私の誕生日が近いから?
それとも、私の思い違いでこういう事こなせる人なの?
思い違いであって欲しい。
彼の愛情が大きいなんて、思い違い。

そんな筈はない、私は二番目なんだもの。

これが浮気相手への接し方、そうに違いない。

彼は彼女をもっと愛しているんだ。


私は、選べないと言える彼が好きなのに。
まだ彼女と別れられないと言われているほうがいいと思った。
彼女と付き合っている内は、彼女が上であって欲しい。
彼女が居ながら私を愛さないで欲しい。
私が好きだと言うのなら…。
私を愛する時は彼女と別れる時なんだ。
彼女が一番、私が二番。
だから、付き合っていけるんだよ。
私が一番、彼女が二番じゃ・・・だめなんだ。


きっと彼には理解できない。


愛されるのはオンリーワンがいい。

私は他の女を許さない。



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