161.幸せ破壊願望 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

161.幸せ破壊願望

朝、ぼやーっと目覚めると彼の胸がまず目に飛び込んできた。
彼の匂いがする。
半分起きてはいない身体で感じるこの空間を堪らなく、幸せと私は呼びたい。


徐々に思考回路がつながり始めると、右手に違和感を感じる。
手を握られているのかと思っていたのだが、触り心地が変化を始めたのだ。
自分で触り返して確かめると、彼はペニスと自分の手の間に私の手を挟み上下に動かしていた。
「やだ、何やってんのよー」
「調度、お前の手があったから」
「提供はしてない!」
「そうやった?」
「もぅ~」
「いいじゃん、大きくなってるからお願い」
そう言われ、私は温かく固くなった彼のペニスを自ら擦ってみた。
「くわえて」
「何それ、朝からそんなワガママよく思いつくよね?!」
「ずっとしてないし、溜まってんねん」
何故か罪悪を感じた。
自分の所為だと感じた。
自ら下着を脱ぐ彼に抵抗することもなく、私は彼のペニスを口に含んだ。


いやらしい気分ではなかった。
だからだろうか、疲れが私に押し寄せる。
彼も少々不満だったのだろうか、彼は私の頭を抑え自ら腰を振り始めた。
アゴがガクガクする。
吸い付く力も薄れ、彼も感じ取ったのだろう。
「疲れた?」
彼はイク前に、やめてしまった。
彼のペニスはまだまだ元気に上を向いている。
「うぅん、大丈夫だよ」
「うーん、疲れたんやな…別に無理せんくってもえぇのに」
そういうと彼は、昨晩セックス時に使用していたバスタオルを腰に巻きながらトイレへ入った。


トイレから出てきた彼の腰にはバスタオルが巻かれている。
そのまま彼はお風呂へと向かい、シャワーを浴びた後、下着で出てきた。
私はずっとベッドに座りっぱなしだ。
逐一彼の様子を伺っている。
彼のペニスはどうやら平常に戻っているようだった。
「ねぇ、立ったままおしっこって出きるの?」
「そりゃ出来るよ、修行したから!」
「何の修行やねん!でも出るとこ一緒だよね?どっちが出てくるか判るわけ?」
「んーー、説明できん」
「そ…。で、いつ平常に戻ったの?イッたの?一人でしたの?」
「いや、コレ朝立ちやからな!イッてない」
「何それ、違うの?」
「んーー…お前、気にしてんのか?」
「だって、私いっつもイかせてあげられないから」
「えぇよ、べつに」
正直、私なんかが相手でかわいそうだと思った。
セックスがろくに出来ない相手を何故彼は選んだのか。
何故…何故…?
自分の中では一つの答えが煌びやかに在る。
それを肯定するには、あまりにもおこがましい。


私は愛されているのだろうか。


今までずっと性欲処理の為だけでしか男性と付き合ってこなかった。
だから…だから…イかない男見ると不安で仕方ない。


彼とやっとセックスが出来て、幸せを味わってしまったら、胸が張り裂けそうに痛かった。
彼女の存在が大きかった。
何故…沢山の何故が頭を支配する。
やっぱり答えを肯定するには、おこがましい。


幸せを破壊したい気分になった。



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