128.同じ夜 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

128.同じ夜

朝までカラオケをし、同級生の部屋で目を覚ますと、部屋は真っ暗だった。
遮光カーテンの所為かと思ったが、カーテンを開けると既に日は落ちていた。
携帯を開けるとやけに眩しかった。
着信はない、PM8時。
辺りを見回すと、三人はまだ寝ていた。
誰かの携帯が鳴る。
鳴り響く。
また、誰かの携帯がなる。
鳴り響き、重なり合う、不協和音。
気持ちが悪い。
煙草に火をつけると、同級生が目を覚ました。
鳴り響く1つの携帯の主は、どうやら同級生。
ボタンを連打し、音だけをさえぎり携帯を閉じ、座ったまままた目を閉じた。
そして、何処へとなく携帯を軽く放り投げた。
目覚めの人間なんてこんなものかもしれない。
折角の不在着信アイコンも夢の狭間の連打で消え去り彼に伝えることなく忘れ去られるのだろう。
あれ?こんな着信いつあった?なんて思い出してくれる日が来るといいのだが・・・。
もう1方の携帯はまだなり続いている。
ミスチルの着メロは、多分親友のものだろう。
そんな親友の携帯を、ウザそうに同級生が目をつむったまま音を頼りに探り当て、また同じ様に連打して音を消した。
静まる部屋。
しばらく同級生は携帯を握りしめたまま眠っているのか目をつむったまま動かない。
私も含め、よく寝るよな・・・。
そう言えば体がダルイ。
もう朝まで遊ぶ体ではないのだろうか。
煙草を灰皿に押し付け、私はボーっと同級生と親友を眺める。
そして、寝ている間リョウに外されたのであろうブラジャーのホックを付け直した。


一息ついて私は帰る準備を始める。
わざと大きな音を立てて。
その音で、順に皆が起きはじめた。
親友も起き「もうこんな時間やん」と愚痴りながら帰る準備を始めた。
時間が勿体ないと騒ぎながら親友は、同級生に早く車を出せと煽る。
とりあえず一服と皆が煙草に火をつけた。
「携帯番号教えてよ」
リョウが煙草を吸いながら携帯を弄る親友に言い寄った。
そして私にも言い寄ってきた。
「親友に聞いて、覚えてないし携帯出すの面倒くさい」
「じゃぁ、教えてもらうから電話出てね」
「んじゃ車出すし行こうか」
同級生が立ち上がり、私はリョウの言葉に返事をすることなく部屋を出た。
親友は早口に携帯番号を口にし、バタバタを私の後を追ってきた。
ピコピコと携帯のボタンを打つ音がする。
あの早口で二人の番号を登録できるリョウを遊び慣れているなと感じた。


家まで送ってもらい、一人自分の部屋で携帯を眺めた。
携帯が光る。
一瞬ハッとしたが、音も鳴ることなく不在アイコンを表示させた。
リョウだと直ぐに解かった。
登録していない番号は、繋がらないようになっている。
嫌な事から逃げる為の便利な機能だ。
馬鹿な奴と、鼻で笑っていると親友から電話がなった。
「番号教えてよかった?」
「別にえぇよ、繋がらんし、さっき掛かって来たけど留守電行き」
「私も掛かってきたで、あいつ軽いし教えたくなかったけど流石やな、あれ登録されると思わんかったわ」
「うちら相手にせんでも、屁でもないやろ」
「でも、あいつあんたと付き合うとか言うとったで」
「あぁ、寝てるとき告白されたけど寝たフリした」
「よーやるな、あいつも」
「んで、キスされたわ」
「はぁ?もう最悪やな」
体を触られて、そのまま抵抗することなく触らされたことは言わなかった。
その後どうなったか親友は聞かなかったし、どうでもいいことなのだ。
そう、リョウなんてどうでもいい。
対するは、ゆうじという一人の男だけ。

万が一、リョウとセックスまでしてしまっていたとしても、続く親友の言葉は変わらなかっただろう。
「それもこれもあいつから連絡ない所為やわ」
「あんまりそれは関係ないけど、ないとも言い切れんかったりね」
「せのりはあいつ以外の男と遊ばんし、行かんかったらよかったかな」
「別に省みることは一つもないよ」
「連絡来た?」
「来てないよ」
「何やっとねん、あいつ。答えは一つやん」
「答えは一つね・・・」


親友の言葉は重かった。
二の舞を舞い終わった私は、三の舞まで舞おうとしている。
何も変わることなく答えは一つ。
変わればいいのにと願いつつ、戻れると良いなと願うのだ。
また、同じ夜がやってくる。



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