123.過食 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

123.過食

<お疲れ、また残業でした>
久しぶりに、その夜彼からメールが来た。
本当に弱ってるんだなって思った。
嬉しいような悲しいような、複雑な気持ちだった。
<どう?納得いくまで頑張れた?>
<どうだろう?>
<そか。ご苦労様でした。明日は私も仕事だわ>
<そか。お前も頑張れよ>
<頑張るよー、一生懸命頑張るよ>
<俺、ほんまはこんなんじゃないねんで>
<ん?何?>
<ほんまは仕事も私生活も充実させたいと思ってるよ>
彼のベストな位置が何となく見えた気がした。
彼の頑張れた時の姿が何となく見えた気がした。
見えてしまって心かき乱されて、放って置かれている私はそれが私じゃなかったらなんてネガティブに考えてしまって、私は…腹を立ってしまった。
<じゃぁ、もっと頑張ればいい>
<頑張るよ>


それから彼は沢山のメールをくれた。
私生活とやらを充実させるかのように。
私も相変わらず沢山のメールを彼に送っている。
だけど、どちらも一方通行だった。
1往復でさえ会話にならないメール。
私は一体誰にメールを送っているのだろうか。
彼は本当に私宛にメールを送っているのだろうか。


<ねぇ、私のメール読んでる?>
<読んでるよ、返してるだろう?>
<メールって途切れてる?>
<いや、署名入ってるよ>
<そう、ならいい>


しっかり読んでいたとしても読んでいなかったとしても腹立たしかったんだと思う。


<ただいま。残暑厳しいね。ねぇ、今度いつ休み?>
<お疲れ。元気ですか?俺はヘトヘト。明日も忙しそうで寝ます>


あなたは一体誰にメールを送っているの?
私は自分に言われている自信がない。
何でだろうね。
話がかみ合ってないからかな。
きっと、そうだね。
「元気」とだけ書いたメールを私は彼に送るのだ。
そして眠る。
何故私の元気を聞いてきたのかなんて意味のない疑問を抱えたりして。


イライラは食べ物で解消されていった。
携帯をパタンと閉じるたびに空腹を感じた。
食べると「お腹すいた」と感じるようになった。
食べないとキューっと胃が縮まるような感覚が空腹だと感じるようになった。
食べ物を探すようになって1週間。
片時も離さず食べ物と共にするようになって3日。
私の体重はもう直ぐ10kg増の記録を打ち出しそうだ。


限界を感じる。
それが心のパンクだったのか、胃のパンクだったのかは解からない。
苦しい。


<私の声は届いてますか?>

私の最後に響かせたS.O.S.だった。



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