122.がんばること | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

122.がんばること

翌日の朝、いつものように私は彼にメールを打つ。
返事は欲しいけれど、確実には返ってこないメールをそれでも私が打つのは、朝起きて彼の事を想うから。
<おはよう。今日も仕事がんばってね、いってらっしゃい>
そう想うから打つ。
彼もそうあって欲しいと思うから、少しだけ寂しくなる。
だけど、彼の心と私の心は感じ方が違う、そう思う事で楽になれた。
少し強がりだけど・・・。


しばらくして半分期待していなかった彼から返事がきた。
朝のメールは久しぶりだったので、心躍った。
だけど・・・。
<俺はお前が思ってるほど頑張ってないし、仕事も全然出来ない男やねん。何となく過ごして、手抜いて、忙しいって言うてるだけで、自分に甘いと思ってるよ。改めないといけないね・・・>
思いもよらない彼の弱音だった。
私の軽い一言が彼を傷つけた。
こんな彼に頑張れなんて追い討ちをかけて言えないし、このまま流せるメールではないと思ったが私は返事をする事ができなかった。


頑張ることってなかなか結果には繋がらない。
頑張りは他人から評価されたくないもので、だけど自分でなんて評価できない。
昨日の自分と今日の自分は同じであっても、人から見れば違ったりする。
手を抜いている時に「頑張ってるね」と言われたり、必死な時に「手を抜くな」と言われたり、頑張っていたって結果に繋がらなければ充分ではなく、かといって手を抜いていて結果に繋がればそれでいいのかといえばそうではない。
一生懸命頑張って結果がでて、そしてやっとはじめて「頑張ったね」を嬉しい言葉として受け入れられる。


何度もメール本文を書いたり消したり右往左往。
余計に傷つけたくはなくて、それでも私は彼の頑張りを認めたかった。
仕事の結果なんて私には関係のない事だもの。


<頑張ってないと思うならもっと頑張らないといけないね。仕事してるゆうじを見たことないけど、いつも死にそうだし今出来るゆうじの精一杯なんじゃないの?ゆうじの夢は期限つきなのかな?いつかじゃダメなの?私は今日の精一杯でカッコいいと思えるよ。誰にも褒められなくったって精一杯出来る事が素敵なんじゃないの?だから、今日はゆうじの精一杯で頑張って☆でも倒れないで・・・。それくらいはセーブして。私はゆうじに元気でいて欲しいと思ってる。勘違いしないでね、私はあなたを応援してるんだから>


頑張ってるつもりで毎日を過ごしている人よりも、自分を甘いと感じている彼を本当に素敵だと思った。
彼を励ます為だけの言葉じゃない。
彼をカッコいいと思う。


<ありがとう>
一言、彼からの返事が来たけれど、私は多分充分に彼を励ませなかったと思う。
きっとずっとずっと悩み続けるんだ。
私の言葉を受けて、今日の日の頑張りを自分で評価してしまう人ではない。
何故手を抜いてしまうのだろうときっと悩むのだろうなと思った。


そんな彼は、私をどうみるのだろうか。
毎日、精一杯の人間なんていないのに・・・。



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