109.青空 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

109.青空

お互いの仕事が忙しくなり、彼も私もどちらも連絡を取らなくなって1週間。
<最近お前の事考えると胸が苦しくなるわ>
そんな彼のメールも開封したのは届いてから3日後の事だった。
今まで忙しさに気をとられていたけれど、彼のメールを読んでから急に私の胸の中に寂しさが広がった。


どういう意味だろうか。


しばらくして私の仕事は落ち着き、また彼に毎日メールを送るようにした。
彼の仕事はまだ忙しいらしく、返事はこない。
寂しさに増して辛さまで心を支配する。
自分でも解かっていた。
わがままだなって。
私も忙しい時は放ったらかしにしていた携帯を今は大事そうに抱えている。
辛い辛いと思いながら、こんな辛い恋なんていらないと思いだす。
そんな思いを消し去りたくて、何かが私を守ろうとする。
「寂しくなんかない」「辛くなんかない」「大丈夫」だと。


私は彼と居る時が大好きだ。
素直になれる自分が大好きだ。
今、私の素直は一体どれなんだろうか。
一人自分の心と向き合うと解からなくなる。


湧き上がる感情を殺そうとしたりする。
辛ければ止めてしまえばいいのに。
だけど、それも辛かった。


私は、彼を好きでいられる理由を探している。


メールの返事さえくれれば、心晴れて私はきっと楽しく毎日を暮らしていけるのだろう。
<忙しくて倒れてしまいそうや>
偶に来る彼のメールで嬉しくなる。
<がんばってね>
そして、私はこう言うのだ。
だけど、私が送ったメールがタイミングよく返ってこないと寂しくなる。


また彼からの着信メロディーがなる。
私は、会話できるチャンスに携帯へ飛びつく。
これを逃がしたら、今度はいつ話せるか判らない・・・。
もう彼の事よりも、携帯が光ることだけに私の想いは注がれている。
馬鹿馬鹿しくなる。
それでも大好きで、彼が居るであろうずっとずっと遠くの窓の外を眺めた。


携帯なんかがあるから寂しいのだ。
パソコンやメール、遠い世界を繋ぐ便利なものがあるから辛いのだ。
繋がるのが当たり前で、そんな当たり前がなくなると辛く寂しい。
携帯なんてなくなってしまえばいい。


青い空で繋がっていると感じていた子供の頃が懐かしい。



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