108.大人の都合 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

108.大人の都合

「あのさ・・・」
私がそういいかけた時、彼は仕事の休憩中だったらしく、私の話を切り裂いた。
「仕事終わったらまた連絡するから」
「ほんまに?」
「あぁ」
「そんな事言うたら私待ってるで」
「あぁ、待ってて」
「ほんまに?」
「俺ってそんなに連絡してないかな?」
「うん」
「それは誰と比べて?」
「私が送ったメール」
「あはは、それは俺が悪いな!とりあえず連絡するから、な」
「解かった」


結局、連絡が来たのは朝だった。
いつもと同じ、朝の「ごめんね」メール。
悔しくって私は、返事を返さなかった。

待ってなんかいない。
メールが欲しいんじゃない、もっと話していたいんだ。
謝罪メールなんていらい。
私がメールしなければ、彼も謝る事もなくなるのかな。


そんな意地になった我慢は1日を長く感じさせた。
イライラと気も立った。
受け取るだけじゃなく、送りたいという思いも不満足でため息ばかり。
あまり連絡を取らない彼は、こんな風に思ったりしないのだろうななどと考えてみたり。


携帯を見るたび腹が立った。
携帯を手にとり、目に付かないようベッドに放り投げてやった。


やっとで迎えた夜。
微かに響く着信メロディー。
私は慌ててベッドに投げた携帯を探した。


<せのり、好きやで>

彼からのメールだった。
私の気持ちを知ってから知らずか、このタイミングはやられた感たっぷりだ。


<もう寝るんやろ?オヤスミ>

やっぱり何だか悔しくって、私は強がってみせた。


<誰かさんが早く寝かせたいみたいやから寝るわ>
<折角早く帰ってこれたんやから体休めやなな>
<あぁー疲れた、癒されたい>
<そんなもん知るか!>
<冷たいのな>
<あぁー寂しかった、癒されたい>
<はいはい、よしよし>
<体気遣って優しい私、えぇ子やろ>
<そやな、えぇ子やわ>
<ご褒美ちょうだい。構って>
<ふにゃチン立たせたら構ったる>
<ウチのフェラ気持ちいい?>
<気持ちえぇな、もうちょっとテク欲しいけどな>
<どやったら気持ちよくなるん?>
<そやなぁ、色々試して欲しいな>
<ふ~ん>
<お前、もう寝るんか?>
<なんか誰かさんが寝かせたいみたいやから寝るわ>
<寂しいな。もっと構って欲しいのに>
<珍しいな、どうしたん?>
<珍しいって。俺、ほんまはゆっくり話してたいで。仕事の事考えるとな、どうしても優先してしまうかな>
<ふ~ん、ハゲに扱き使われてるんや>
<若いの俺だけやしな>
<また残業ばっかり増えたら、上司の毛むしりに行ったるしな>
<むしり取る毛もないけどな>
<ほな、ピンセット持ってくわ>


彼と久しぶりに馬鹿な話をしたように思う。
真面目な濃い話もいいけれど、何故かこんな馬鹿な話で満たされた気分になった。
彼女の存在忘れてた。


そして、時間が過ぎて行くのも忘れてた。
日付が変わり、お互い明日の仕事の為に眠りについた。

また、仕事が忙しくなる。


嫌だと言いつつ、お互い「待っててね」と言い合った。

大人の都合。



← 107 ]  [ 109 →