100.恋愛観 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

100.恋愛観

彼とのデート中に親友の水着を買いに行くことになり、私は先日親友が購入した同じ水着を探している。
彼はアレからずっと不機嫌で、あまり話をしてくれない。
側にいるだけで・・・そう思ったけれど、本当に親友の為の時間のように思えてきて、全く楽しくなかった。


やっと購入し終え、ピンク色の紙袋を見て彼が少しホッとしたような顔を見せてくれた。
約束の時間まで、休もうかという事になり、近くの喫茶店へ。


「なぁ、お前、あいつと何話してる?」
「うーん、色々」
「何で俺あいつに嫌われてる?」
「嫌いなんじゃない?」
「お前が俺をか?」
「あぁ~ん、違うよ。私も嫌いって言われたもん」
「あいつが勝手に怒ってるって、違うやろ?」
私は彼のこういう台詞に弱い。
無意識に隠そうとしている心に気付かせてくれる。
「あはは、そうかもね。ウチが怒ってるのかもしれん」


そういうと彼が急に真剣な顔つきになったので、体が少し強張った。
背筋がピリッとする。
私は彼の目から目線を外した。
私は何故か、彼の真剣な顔が苦手だった。
真正面から聞き入れる事が怖いのかもしれない。


「俺、お前の事好きやで」
「うん」
「一目惚れやった。守りたいと思った」
「うん、聞いたよ。急に何?もういいよ・・・」
「ちゃんと聞けって」
「・・・・・」
「でもな、そういう気持ちが恋愛なのかどうかって、正直今でも迷ってる。守りたいって気持ちで人を好きになったことはないから。でも、一緒に居たいと思うし、抱きしめたいと思うし、今、恋愛していたいと思うのは、せのりなんだ。声を聞きたいと思うし、手を繋ぎたいと思う。だけど、決められない理由もある」
「ウチな、勝手にあなたの事好きなんよ。ずっと好きやった。他の人と付き合っても好きやった。これから先もずっと好きなんやろうなって思える。だから、振られるまで好きでいようって思ってん。でも、やっぱり辛く思うから愚痴ってしまうねん。だから嫌いって言われた。もう、愚痴らないよ。親友からも好きになってもらえるように」
「別にあいつに好かれる為にやってるわけじゃないけどな。辛い思いさせてごめん。しっかり考えてるから。もう少し待っててな」
「うん」


親友には理解しがたい事だろうなって思った。
きっと心から人を好きになれる人には理解しがたい事だろうなって思った。


私が彼の話に同意したのは、多分、私もこれが愛なのかどうか解からなかったからかもしれない。
他の誰かと比べてるんじゃない。
比べているのは、自分の恋愛観。


私はドンドン彼を自分の恋愛に当てはめていってる。
全てが当てはまるとドンドン膨らんでゆくんだ。

私の恋愛観
だけど彼の小さな恋愛観には、まだ埋まらないものがある。
埋まらずに別の恋愛観が増えたらきっと戸惑う。
埋まらない穴はどうするべきなんだろうか。
潰してしまう?
新しい人で補う?
彼が今、どちらかを選ぶということは、また埋まらない穴が増えるということなんだ。
空いた穴は、私にも彼女にも埋めることはできなくて、潰してしまわなければいけないんだ。
それか・・・また、新しい全ての穴を埋めてくれる人か。


余地広い彼の恋愛観 私に彼女の穴を埋める事はできないし、埋めようとも思わない。
彼の小さな恋愛観は、大きな余地を残した大きな恋愛観。
広すぎて私は孤独を感じてしまう。


動けない・・・待つしかない。



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