88.遊びと本気 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

88.遊びと本気

私は、7年間続けているホームページの日記で、彼女の居る男の人を好きになり恋愛を始めたという事を報告した。
沢山のお祝いの言葉が届いた。
それを読んで、嬉しくも思ったりしたが、同時に、やっぱり世間は「好き」に甘いなとも思った。
だけど、そこは友達とはまた違う空間。
中には、固定ハンドルネームを伏せ、私を叱るものもいた。
そして、必ず言われるだろうと覚悟していた言葉もあった。


「絶対に、遊ばれている。男とはそういうもの」


覚悟していただけに、動揺はなかった。
それに、それだけはないと言う、不思議な確信があった。
私が馬鹿なのかもしれない。
だけど、4年間彼を見てきて私がそう思った。


親友にも、随分前になるが報告をした。


「バーテンダー君に告白した」
「マジで?」
「うん、向こうも好きって、デートもした」
「へ~、彼女と別れたん?んで、あんたは男と別れたん?」
「ウチは別れたけど、向こうは別れてない」
「はぁ?」
「これから考えるって」
「せのりは、別れたのに?!向こうはこれから?」
「それは、私が望んだことかもしれん」
「あんたが?何で?また、繰り返すん?」
「繰り返すつもりはないよ。そやけど、ウチ、他の男と付き合っても彼の事ずっと想ってたし、心に決着つけなあかんなって思ってん。それが、二股やったとしてもどんな形ででも、振られるなら振られたいし、付き合えるなら付き合いたい。だから…どんな事があっても、彼だけを見てこうって思ってん」
「ケジメ…節目…最後のチャンス…やね…」
「そう…」
「バーテンダー君が、せのりに気があるのは解かってたけどさ、こんなことする奴やとはね」
「あぁ、ウチも信じられへんかな。ウチ、遊ばれてる?」
「う~ん、本当、これだけは疑い難い現実やけど、遊ばれてなかろうが辛いもんは辛いやん」
「うん」
「恋してさ、そんな落ちこんで、ありえんやん。遊びでも本気でも、せのりの事傷つけてる事には変わりないやん。ウチはあの人の事知らんけど、せのりが悲しんでるなら、ウチはあの人嫌い」
「うん、もしも遊びやったとしても、ウチも彼の事嫌いになれればそれでいいし、それでも好きなら続ける。遊びやって解かったら諦められるし、次へ進める。でも、このままじゃいつまで経っても前へ進めない」
「かもしれんな…。ある意味初めての恋愛やね。あの人は嫌いやけど、あんただけは応援するで。絶対、辛くても苦しくても、自分からやめたらあかんで。振られるまで…」
「振られるまで…」


遊びではないと思える心も持っているが、もしそうなら・・・という恐怖もどこかにあった。
だけど、親友と話していて思った。
遊びだったら何?ってね。
遊びだったら、そんな簡単なことはない。
気持ちよく、綺麗サッパリ諦められる。
そう、私が辛いのは、彼がそんな事をする人ではないと思っていること。
気付ければそれでいい。


ただ、彼の彼女への想いと私への想いが、両方とも本気だった場合…。
辛い辛い、長期戦になる。
私が思う彼はきっと、どんな小さなことでも真面目に一つずつ考えてゆく人だ。
一方の考えだけで行動する人でもない。
そう、私が好きだからと言って彼女を振ることもないし、彼女が好きだからと言って私を振ることもない。
そして、彼女を好きでなくなったとしても、必要だと思えば、振る理由材料が集まらなければ動かない。
彼はきっとこういう人。
だからこそ好きになった。
私をちゃんと見てくれている。

彼女の事もちゃんと見ているのだけれど…。


この二股の辛さは、今までとは違う。
今までずっと私を遊びだと扱い、体だけを見られていたことに辛さを感じていた。
私に気持ちがない事への辛さ。
だけど、今、私が辛い事は…。
彼女もまた、愛されているということ。
真剣に、相手を考える彼だからこその辛さ。


遊びの辛さじゃない。
愛の深さが辛い。



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