87.会うために・・・ | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

87.会うために・・・

人って、本当に自分が可愛くて仕方ないんだなって思う。
それは良心なのか偽善なのか・・・。
私にはよく解からない。


それとも、悪意?


私は彼の仕事が終わるのを待っている。
沢山頭の中で考えたけれど、何も聞こえてこなくて、自分が何を考えているのか解からなかった。
私の心は秘密主義らしい。


彼から連絡があったのは、日付が変わってから。
メールだった。


<もう寝てしまったかな?再来週、俺と会える?会いたい?俺は会いたいよ…。勝手なことばかり言ったけど、せのりの事好きやで>


私は、話し足りなかったのかな。
それとも、話し尽くしちゃったのかな。
それとも、何?

<もう、会いたくない>

私はこんなこと言ってた。


これが素直な気持ちとかそんな事私には解からない。
素直と言うものが、自分の中の一番大きい気持ちだとするならば、本当だ。
私は、彼女の居る人とお付き合いする気はない。
彼の事を好きかと聞かれたら、大好きだ。
だけど・・・彼の半分だけの愛は大嫌いだ。


<そっか…でも、俺は会いに行くよ。会ってくれるよね。会いたい。会いたいよ。せのりに会いたい>
<会いに来ても会わないよ。会えない。心の何処かで誰かの事好きな人とは会えない。楽しくない>


そう、こんなこと駄目なんだ。
愛だの恋だの、甘い言葉を並べてたって駄目なんだ。
好き?好きならなんでもありなの?
だったら、私はあなたを殺して永遠を手に入れる。
私たちの関係に呼び名がない、そんな事はない。
これは列記とした「浮気」。


私は、気持ちを言葉にした。
そしたら、私の気持ちに魂が宿った。
心はどんな形にでもできるけれど、言葉は辞書を引けばそれがどんな形なのか教えてくれる。


<俺は今、せのりが本当に好きやで。嘘や偽りなく!お前が今の状況が嫌で不安で堪らなく辛いなら仕方ないと思う>


胸が痛かった。
うぅん、この言葉だけじゃなくずっと胸はチクチクと刺すけれど、彼の言葉がズキンと痛かった。
私の気持ちが嘘や偽りみたく思えた。
裏表のある気持ち。
どちらが裏でどちらが表かなんて解からないけれど。


壊れる・・・。


いっぱい考えた。
自分の知らない事までも思い出そうとしてた。
どんな償いをすれば、私は彼を好きでいられますか。


<でも、簡単には結果は出せないんだ。俺はせのりをすごく求めてる。知りたいと心底思ってる。でも・・・即決論にはいけない。ただ、マイナスな方向へは絶対に行かない。会いたい。抱きしめたい>


彼は、沢山の言葉を並べ「会いたい」と言った。
裏も表もあって、だけど、裏も表も「会いたい」だった。


私は友達には相談しなかった。
きっと親友なら「会いたいなら会いに行け」って言うのは目に見えてたし。
そう、友達に相談しようかなって思った私の気持ちが一番大きい。
会いたい理由探してる。
万人の賛同をどうにかこうにか得ようとしている。
だけど、どう足掻いたって彼の彼女からの同意は得られはしないだろう。


で?!
突然、私の心が開き直った。
そしたらすごく気持ちよかった。
人って、悪い事をすると何故か快感を得る。
後から罪悪感とか辛気臭い痛みに襲われるけど、気持ちいい。
そんな気持ちよさ、少しだけ・・・・うん、堪らない。
あぁ、私はこんなに彼を愛してるんだって酔いが回る。


そしたら、余計に彼には言えなかった。
「会いたい」気持ちが、嘘に思えた。


<色々考えてくから。お前と会ってゆく内に様々に変わっていくと思う。会わなきゃ変わらない。だけど、今の気持ち大切にしてゆきたい。悩ませてごめん。会いたい>

<好き>


彼の言葉に、私はそう答えるだけが精一杯だった。
多分、私は彼に会いにゆく・・・。



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