2005-07-12

73.緊張する

テーマ:彼女じゃない恋愛

暇を持て余す時間が流れた。
彼は一人ラブホに入ったっきり返ってこない。
妙に緊張感が解れてしまった。


一人時間を持て余すと、女は化粧を直したくなるもの。
違う?私だけだろうか。
あと、数分後には流れ落ちるであろう化粧品を贅沢に使う。
普段ならケチケチ使っているにも関わらず。


それでも彼は返ってこなくて、打つ相手など居ないのに携帯のメール画面を開いてみたりした。
開いてみれば、何か思いつくだろうなんて安易な考えも見事に崩れ去る。
最後にもらった彼のメールを読んで、携帯を閉じた。


しばらくぼーっとしていると、彼が窓の外にいて、窓を開けるようにジェスチャーしていた。
「もう少し掛かりそうやけど、車で待ってる?それとも中で待ってる?」
「一緒に行く」
彼は優しい。
でも、時に私が感じる優しさがズレる。
一人にしないでよ・・・私はそう思うのだ。


彼に手を引かれ、ラブホに入った。
目の前には大きなパネルに部屋の写真が並んでいる。
そのパネルは今は未使用。
全ての部屋のランプが消えていて「いらっしゃいませ」という機械音だけを響かせていた。


大きなパネルを回り込むと不自然な位置に疎らにソファーが並んでいる。
沢山のカップルがその一つ一つに座ってた。
私たちも、一つのソファーに腰掛けた。
あんなに沢山ソファーが並んでいるのに、座ると誰一人として顔を合わせる事がなかった。
不思議な配置だ。
敷居などの圧迫感など何もないのに、凄いと思った。


「何か飲む?」
「うん」
「うんじゃないやん普通」
「何よ、普通って」
「お前ってホンマお姫様よな」
「ムッ」
「私が取ってくるよ。とかないの?」
「いいよ~取ってきてあげるから」
「その言い方じゃ嫌や」
「ふぅ・・・・何か飲む?取ってくるよ」
「マジで?!初めてや。やればできんじゃん!」
「嬉しそうに・・・」
「お前が照れるこっちゃないやん」


何となく、沢山の照れが交じり合ってた。
彼とこうしてここに居ることとか、彼がワガママを言ってくれてることとか、普通という女の子らしいことをしようとしていることとか、彼が嬉しそうにしてくれることとか、私が素直に彼を聞き入れていることとか・・・。
可愛くいたいと思うこととか。


セルフサービスのドリンクバーで、爽健美茶をコップに入れた。
まずい・・・。
振り返ると、迷子状態だった。
私の悪い癖なのだろうか、私は迷子になると相手を探さない。
その場にぼーっと立ち尽くす。
仕舞いには座り込んでしまう。
無意識の内に迎えに来て・・・そう思うのだ。
昔からそう。
三つ子の魂、百まで・・・。


「せのり」
彼が私を呼んでくれた。
「何してたん?」
「・・・・判んなくなった」
「こんなとこで普通迷子になるか?!」
「・・・・」
「ありがとう。お前も飲むか?」
「うん」
「あ、ちょっと待ってて」
「何?」
「部屋できたみたい」


何をどう気付いたのか、彼は大きなパネルに向かって行った。
そして、何も変わった様子もなく戻ってきて、私の頭をポンポンと軽く叩く。
チラチラと2・3度辺りを彼は見回し、「エレベータあった」と私の手を引き連れられる。

エレベータに乗り込み、しばらくして戸が開く。

私たちの部屋のナンバーが光っている。
誘うように。
ピカッ・・・ピカッ・・・ピカッ・・・。
少し心臓の鼓動よりも早いランプが私を少し緊張させる。
心臓がランプに合わせて踊りだす。
ドクッ・・・ドクッ・・・ドクッ・・・。


部屋のノブに彼が手を掛けた。

「緊張するな」
彼がそう言ってくれたからかな。
嬉しくて笑顔になったんだ。


彼の手によって、ドアが開こうとしている。



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コメント

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10 ■> ammoniteさん

あぁ…その謙遜を逆に捉えてしまったということですね。「若さ」ではなく、積み重ねそして失って得る人生の中で、ドキドキは失われゆくものなのかと読み取ってしまったようです。成長して捨てるものは捨ててゆくという中で、私はいつまでも失われない気持ちだなと思っています。良かったです☆

9 ■ある種の謙遜ですw

あたしは自分の年齢を卑下したことは全くありませんし、生まれてこの方「○○歳に戻りたい」と思ったことも一度もありません。楽しかった、良かったと思い出せる時代がないわけではないですよ。どんなに良くても、もう一度やってきたからもういいや、って感じですw 10年前の自分よりは5年前の自分、5年前の自分よりは今の自分のほうが間違いなく成長しているし、失ったものも確かにありますが失うことによってでないと得られないものもあると思っています。
あまり外見にこだわる人間ではありませんが、確かに肌のハリもつやもなくなりました(これは手入れをロクにしないせいも大きいです^^;)。要らないお肉もあちこちに見受けられます。けれど内側の充実は明らかに表情や行動に表れているはずで、自分自身はそちらに価値を置いていますし、またそういうものを評価する人と生きて行きたいと思っています。
「そういう歳でもないし」と言うのは、「若さ」に価値を置きがちな多くの人が、真っ向から反感を感じずに読めればと思って使うちょっとした気配りです、ぶっちゃけるとw 偉そうでしょ?w

8 ■> ammoniteさん

あはは、そうでしたか。いやね、「年だから」的な発言が結構みられるので、気にしておられるのかなと思ったんです。口癖だけのようですね(^ー^)安心しました。
結構「結婚してるから」とか「年だから」とか「子供がいるから」とかいう理由はよく聞くんです。私は未婚ですし、年も中途半端ですし、子供もいないのでそういう立場になったことはなく、否定したい気持ちはあっても自分もそうなるかもしれないという事もあり全否定は出来ません。回りくどい返事を書いてしまってごめんなさい。あまり意見を押し付けたくないと言う私の癖なんです。
いくつになってもドキドキして居たいと思う私は、とけめきを忘れないammoniteさんがいることに嬉しく思います。

7 ■違うよぉw

年齢でも経験でもないですよ、ドキドキ。ないだろうなぁって思ったのは彼とそういう場面を迎えることがもうないんじゃないかなと思ったからです。そして、もう彼以外とはそういう関係にならないから。あたしはもう世で言う「おばちゃん」ですが、彼に逢えると分かっただけで心臓はバコバコだし、手を握られたら頭の3割くらいは働かなくなります。こんな経験は恥ずかしながら今までありませんでした。心を殻に入れて生きていたんだものね^^;
きっとおばあちゃんになっても彼にならときめきを感じ続けられると思っています。エロ婆と言われるかなw

6 ■> ammoniteさん

ドキドキって年齢?それとも経験?経験の多さじゃないだろうな…。だって、数年前までは通い詰めるほど遊んでた。年を重ねるごとに、トキメキはなくなるのでしょうか…。ずっと寄り添う人でも、ずっとずっと何十年でもときめいていたいと思う私です。多分、トキメク!!

5 ■いいなぁ。。。

が、正直な感想でした。こんな可愛いドキドキ、もうないんだろうなぁ。。。´@_@`

4 ■> sodifficultさん

私のキャラは彼仕様です。
彼以外の人間にはポーカーフェイスの無感情人間ですから・・・。
可愛い以前に人が寄り付きません・・・(悲)。
彼に「思ったことは全部出すように」と言われ、出来上がったキャラです。
もしも、彼が一般的な男性なら、いつも私がこのキャラだったなら、男性にそう思われるのかしら☆モテる?!
他の男性にこんなキャラ出せないので・・・どうなんでしょうね。
彼以外でも、素直な自分だせればいいんだけど。

3 ■せのりちゃん

みたいな女の子って男性から見たら可愛いんだろうなぁ。わたしとは正反対のキャラ。いいな。

2 ■> るうさん

きっと恋をした人が誰もが体感するであろう、ドキドキ。
私はこの時が初めてでした。
いや、ラブホに行ったのは初めてではないのだけど・・・。
好きな人と一緒に居るという幸せなドキドキってこんなに気持ちが良いんだなって思いました。

1 ■すごく

ドキドキ感が伝わってきます><

あたしまでドキドキしてしまいました!

大好きな人と一緒に居れる。
幸せなどきどきですね(*'ー'*)

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