70.可愛くなったよ | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

70.可愛くなったよ

彼の連絡を待つ。
そんな毎日が続いてた。
仕事をしていても、ご飯を作っていても、携帯が鳴らないかと気に掛けた。
トイレへ行く2・3分という時間でも、携帯から身を話す事が何だか怖かった。


彼はとっても近くにいて、この5年間で今一番近い所にいるのに、手にした感触、実感が全くなかった。
連絡を逃がす事が怖かった。
常に最後のチャンスのように思えてた。


<今、何してる?>


彼のメールが届く。
友達という枠にいた頃は、これほどまでに「今」を大切だと思ったことはない。
今を聞かれて過去を答える。
そんな回答を今はする気はない。


<本読んでる>
<お前は、見かけによらず勉強大好きっ子やな、昔から>
<本は為になるよ>
<そうやけど、そんなに頭に詰め込んで疲れんか?>
<馬鹿も結構疲れるしね、程ほどにだよ>
<それはそうと、お前日曜は仕事?>
<う~ん、一応入ってくれとは言われてるけど未だに連絡なし>
<そか、俺、そっち泊まって日曜も遊べたらって思ってんけど>
<マジで?!>
<仕事、大丈夫か?>
<さぁ?連絡してみるよ。でも実家まだ部屋残ってんの?>
<一応ね、でも母親の新婚生活邪魔したくないしね。ラブホ行く?>
<いいよ~>
<いや、本気で言うてるんやけど・・・>
<いいよ~>
<俺、お前とセックスしたいって思ってるで>
<いいよ>
<本気で思ってないやろ?!>
<セックスしたい気持ちはあるよ。出来る出来ないは別にしてね>
<セックスは置いておいて、泊まりでOK?>
<うん、ずっと一緒>
<あぁ、いっぱい一緒にいよう>
<セックス出来ないかもだけど・・・>
<ってか俺セックスしに行くみたいやん>
<でも、ギュッてしてね>
<あぁ、抱きしめたいよ>
<土曜も出来るだけ早く来てね>


言葉が溢れ出す。
数分前まで思いつかなかった言葉達が出てくる。
というよりも、私はこんなこと考えてたんだと、溢れ出た言葉を聞いて思う。


<お前、本当に可愛くなったよ。前のお前を知ってるだけに・・・。いつも恋をするとお前はこんな感じなんか?>
<恋愛してる私?高飛車で自己中で何様って感じでやってきた。面倒だったし>
<それって恋?>
<知らない。初恋なんじゃん?毎回新しい初めての恋なんじゃん!>
<でも俺も惚れた弱みは出さんな。同じく高飛車>
<というより、逃げでしょ。私はそうだけど>
<そうだな!でも、今は素直で居たいと思ってるよ>
<私も>

<好きやで>
<私も好き。セックスできたらしようね>
<無理するな>
<うぅん、これだけは無理したいの。したいって思えた事なかったもん>
<あぁ、いっぱいキスもしような>
<うん>
<ヤバイ。メールしてたらお前にハマりそうやから・・・オヤスミ>


ハマればいいのに・・・。
気付けば日付が変わっていた。
私も寝よう。
彼と同じ時を刻みたい。
離れていても・・・。


<オヤスミ>


実感がない。
彼が遠くに感じる。
繋がっていた携帯が途切れようとした瞬間から、寂しさが強くなる。
素直な気持ち、伝えられなくて唇をかみ締める。
「オヤスミ」と言うことだけが精一杯。
だから、少しでも感じたくて彼を追う。
彼が眠るその時に私もそっと目をつむろう。


<夢で逢おうな>


そう言ってくれる彼に出会う為に。



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