ミクロネシア連邦
ミクロネシア連邦で唯一暫定リストに記載されているのが、石の貨幣で有名なヤップ島である。ヤップ島の集会所などには、中央に穴を空けた円形状の石の貨幣が置かれている。大小さまざまで、大きいものだと直径3mを超えるものまである。子供の頃、アニメで見た石器時代の貨幣が本当に存在していたとは驚きだ。
この石貨(stone money)の価値は、単純に大きさだけで決まるわけではない。材料となる結晶石灰岩(limestone)は、約500km離れた場所にあるパラオ(Yapease Quarry Sites) でしか採れない。石はそこから切り出され、船でヤップ島に運び込まれる。この間の航海には危険が伴い、時には命を落とす者もいたという。航海の困難さ、犠牲者の数。これら来歴によって、石貨の価値は決まるという。
ミクロネシアには元々、羅針盤や六分儀などに頼らない伝統的航海術があった。主に星などの天体現象から自分の位置と方向を割り出す航海術で、この航海術とカヌーを用いて、島同士の広範な交流を行っていた。ミクロネシアがギリシャ語で「小さな島々」を意味するように、それぞれの島は小さく、またそれゆえに個々の島が持つ資源も限られてくる。そこで交易を活発化させることでお互いの資源不足を補っていたのだ。この航海術は、石貨が残るヤップ島ではすでに失われてしまっていたが、サタワル島をはじめとするヤップ島の離島に受け継がれており、ミクロネシアの人々のアイデンティティを示すものとして再評価されている。
暫定リスト(全1件)
Yapese Disk Money Regional Sites (2004) 文化遺産