暇人の部屋 -4ページ目

情報の取捨選択は冷静に

宮崎の口蹄疫に関して、ネットで支援の輪が広がっており、ツイッターやブログで牧場主さん、農水省の人など現場・関係者の生の声も伝わってきています。絶望的な状況で奮闘しておられる方たちに、もう頑張ってと言うのもおこがましいほど事態は切迫しているようですが、残念ながら、かなり怪しい情報まで拡散されているようです。

安易に当該ブログのアドレスを貼って怪しい情報の拡散元になるのは避けたいので、この件のツイッターのまとめのほうを紹介します。このブログから元ネタのブログに当たるなら、以下のまとめをきちんと読んでから冷静に読まれることをお願いします。

まとめ「小沢の口蹄疫消毒薬横流しと口コミの怖さ」
まとめ「消毒薬の備蓄について@FumiHawk」

デマでも何でも拡散することで国が動けばいいと言うような意見もあるようですが、出所不明・真偽不明の情報が拡散して、デマだと判明した場合、打撃を受けるのは、本当に現場から必死に声を伝えてる人たちです。現場からという形でネットにデマ情報が拡散した場合、その後は本当の現場の声まで疑惑の目で見られてしまいます。

今回の出所不明の情報を拡散している人たちは自分の正義感で行っているのでしょうが、ネットの情報の確度をチェックするのに必要なのは主観ではなく客観的な分析です。主観で情報に踊った結果、現場に不利益があっては大問題ですし、証拠もなく個人を誹謗することは、マイナスにしかなりません。また、現に被害にあっている人を政治的主張のために利用することは言語道断です。

今回の政府・マスコミの対応は、批判されてしかるべきだと思います。政府に危機意識が低いと思われても仕方がないし、ひょっとしてマスコミも風評被害を考慮したかもしれないにしても、寧ろ風評被害を避けるために正確な報道をすべきだったと思います。もちろん、ウイルスのキャリアーには決してならないよう厳重に注意してですが。
報道規制の噂に関しては、民主政権に批判的な産経でもデマとしています

とにかく今は感染拡大の阻止、そして、大切な家畜を失う人たち、殺処分にあたる人たちへの精神的なケアが重要だと思います。すでに消毒薬の件も含めて早くから指摘されています が、ここまで長引いている以上、緊急のことではないかと思います。

宮崎を応援したいという人たちは、とにかく冷静に事実関係を見極めて、ネットの情報に当たってほしいと思います。ネットの情報は諸刃の剣です。パニック状態にならないようにするためにこそ、ネットユーザーは冷静に情報を分析する必要があります。自ら情報発信する以上、間違った情報のもたらす影響も考えていかなければいけません。言論の自由は責任とセットです。

ノアの方舟 続報

先日、ノアの方舟発見のニュースを取り上げましたが、4月30日に既に偽物であるという告発ニュースが出ていました。発表から疑惑までたった二日

ニュースによれば

~ しかしながら調査隊はその資金を調査に使わなかったどころか、黒海近辺にあった古い構造物をアララト山まで運び、その翌年にアララト山の洞窟内に運び入れ、今回の発表のもととなる動画を撮影したのだという。~

つまり、古い木造の建造物かなにかをわざわざアララト山に運び込んで捏造したという告発です。随分面倒な話ですが、当の団体 は、標高4千メートルまで構造物を運んで組み立てるには、軍用ヘリや重機を使わないと無理だと火消しに躍起なようです。それはその構造物の大きさによると思いますが。先日のブログ で取り上げたように、内部の様子の動画だけでは大きいのか小さいのかすら判別不能です。

慎重な見方をすれば、構造の規模が分かりませんから、確かにこの告発だけでは弱いかもしれません。それで、他のニュースを当たってみると、クリスチャン・トゥデイというキリスト教系サイトでも疑惑を報じていました

こちらのニュースは捏造ニュースよりは関係者のコメントのほうに重点を置いていますが、その中の創造調査研究所のジョン・D・モリス所長という人物が引っかかりました。研究所名から見ても、おそらく聖書の記述は事実であると主張し、証明しようとしている創造科学関連で名がある人物だろうとググってみると、かつてパラクシー川の足跡化石の擁護者だったらしい のを見つけました。

パラクシー川の足跡化石は、かつて恐竜と人類の共存の証拠と創造論者たちが主張したもので、日本では今でもオーパーツとして取り上げられることのあるものですが、実際は恐竜の足跡化石を勘違いしたものです。
このサイトによると、モリスはこの化石を擁護する本を書いたのですが、結局恐竜の足跡であることを認めざるを得なくなり、著書の販売を中止しました(この話の顛末は知っていましたが、さすがに名前までは覚えていませんでした)。

このバリバリの創造論者であり、かつてはこの探索チームの協力者だったモリスが

「私は科学者だ。明確な証拠が欲しいが、今のところはない」

とコメントしています。創造科学が科学かどうかは置いておいて、仲間のはずの創造論者にまで証拠がないと言われているのですから、まあ、そんな程度の話なのでしょう。

偽書色々 その4 ~竹内文書~

竹内文書は、日本の偽書のなかでは、特にメジャーなものです。今も信者は絶えることなく、陰謀論、超古代文明、宗教など様々なオカルト分野で根拠とされています。モーゼ渡来説、キリスト渡来説、他にも釈迦・孔子・マホメットと、有名な宗教の開祖がのきなみ日本に来たという記述があったり、超古代に日本の天皇家が全世界を支配したとか、実にその筋が好みそうな内容です

もともとは、天津教という宗教の開祖、竹内巨麿という人物が、昭和の初めに祖先である古代の有力豪族、平群真鳥から伝わったものと称して公開したものです。その後、官憲による天津教弾圧事件などがあり、逆にそれが真の歴史が書かれているゆえだという箔をつける結果にもなっているようです。

ただし、この古文書は著名な学者、狩野亨吉 によって史料批判がなされて、既に戦前に偽書として決着がついています
一応これは基本ですが、新史料と見られる文献が見つかった場合、まず行われるのが史料批判です。他の文献、考古学史料、判明している歴史的事実、文法、筆跡その他から、本当にその時代の文献なのか、この検証を行うのは当然の話で、これを史料批判と言います。勿論、検証は客観的に行われなければならず、場合によっては他者による再検証も当然行われます。この史料批判がされないと、歴史の世界は何でもありとなってしまいます。
 
この狩野の論文は、その史料批判の観点からは完璧と言えるもので、現在でも史料批判のお手本にされると聞いたことがあります。この狩野の論文、『天津教古文書の批判』は、ネットでも閲覧可能 です(訳はこちら )。

狩野が使用した資料は、天津教信者から手に入れた文書の写真5枚のみで、ごく一部の写真だけでそんな判定ができるのかという批判も当然あり、狩野もそれは認めるとしています。ただ、「しかしながら同時に又生命を取るには一箇の致命傷にて足る」ともしています。それだけ、このわずか5枚の写真は致命的な欠点を露呈しているのです。

まず、最初に長慶太神宮御由来という漢字かな混じりの文書ですが、文体や書体からの検証が当然ありますが、実に分かりやすいものが、この文書に現れている人名です。応永二年(1395年)の南朝側の戦死者達らしいですが、その名前を幾つか拾い上げてみると、

岩崎弥助 若槻礼太郎 倉富利秋 板垣七之助 東郷八右エ門 黒田清兵衛 渋沢隆栄等・・・

応永の時代(室町時代)のはずなのに、明治以降の歴史の知識がある人には聞いたことのある名字や名前がいくつか・・・。ほかにも一条~八条までの名字が一部を除いて数字順に並んでいたり、どこかやっつけ仕事の観のある人名の羅列となっています。

長慶天皇、後醍醐天皇の真筆と称する二つの文書は、その誤字や文体の共通性から、狩野は同一人物による明治末期の偽作と結論づけています。狩野は当時書画骨董の鑑定で糊口をしのいでいたほどの目利きで、狩野に写真を渡した信者は、鑑定家として著名な狩野の御墨付きを得ることで竹内文書に箔をつけようとしたと思われます。逆効果でしたが

平群真鳥の真筆という漢字仮名混じり文は、そもそも雄略天皇の時代にカタカナが存在していたら奈良時代に万葉仮名など使う必要がない、という至極もっともな指摘ができます。さらに狩野は逃げ道がないように、漢字を「唐文字」と言っていることで、筆者の無知を明確にしています。中国を唐(から)と言うようになったのは、無論唐王朝の影響によるもので、平群真鳥の時代は、まだ唐王朝は存在していません

最後に狩野は神代文字で書かれた資料にあたりますが、これに使われている文字は、いくつか種類のある神代文字の中で、「上記」という偽書に使われている豊国文字というものです。当時は狩野はこの文字を知らなかったのですが、独自に正しく解読してしまいます。このあたりを読むと面白いのですが、それは論文を読んでもらったほうがいいので、狩野の指摘で重要なことを挙げておきます。
竹内文書は、この神代文字で書かれたものを平群真鳥が漢字かな混じり文に書き換えたものとしていますが、神代文字で書かれた文献自体に、ロクシフサン(六十三)や、マンネン(万年)といった漢数字の記述、ソクイ(即位)、スイモン(水門)といった、音読みの用語があり、これらは漢語由来の用語だという指摘です。つまり、神代文字の文献は漢字かな混じり文の原文ではなく、逆に漢字かな混じり文の原文を神代文字に起こしたものだということです。

最終的に狩野は、この文書を明治以降の偽作であると結論付けています。

よく偽書支持者は、正史じゃないから否定されていると思い込んでいますが、狩野は竹内文献の批判にそのようなことは行わず、あくまで書かれている内容のみを相手にしています。これは他の偽書否定論も同様なのですが、何故か聞く耳を持ちません。そして、世の中に受け入れられないのは何かの陰謀だと陰謀論の甘い罠に堕ちていきます。

なぜそこまでして竹内文書を支持するのか、まず不勉強・学問的な訓練不足なのがあげられますが、内容がその人の願望に沿うものだからです。
現在では信じることが面白い・本当のことは分からない・頭の固い人間が否定するといった、はっきりいえば、先人の研究をバカにすることをロマンだと勘違いしているパターンが多いようですが、竹内文書が公表されたとき、特に関心を示したのは軍人たちでした。下級軍人だけではなく、将官クラスの高級将校まで見学者が続出しています。
それは、竹内文書の内容、かつて超古代に天皇を中心とする日本が世界を支配していたという超皇国史観が、当時の軍人たちの願望に正当性を与えるものだったからです。狩野も論文において、軍人にまで影響が広がっていることが執筆の動機の一つとして懸念を示しています。

まさにシオン賢者の議定書 でヒトラーが言ったという、「内容が真実であればよい」という願望と真実の混合です。ユダヤ陰謀論もまたこの時期に日本に入ってきたもので、実は酒井勝軍という人物を通じて両者は無関係ではありません。信者の人がこの文書を古代のロマンだと思うのは勝手ですが、実際には古代のコの字もなく、ロマンにもできない代物であるのが本当の所です。

偽書色々 その3 ~シオン賢者の議定書~

偽書その3です。ヨーロッパで最大の偽書と言えば、シオン賢者の議定書でしょう。

別名史上最悪の偽書

20世紀初頭にヨーロッパに出回った偽書ですが、なぜか現代日本にも未だにこれを本気に取る人がいます。
内容としては、ユダヤ人の世界征服の計画書の体を装ったもので、実際の執筆者はロシア帝国秘密警察関係者とされています。内容は哲学・科学等の学問、歴史に及ぶまでユダヤ人によってコントロールされ、近い将来にユダヤ人の世界国家を樹立するというものです。

種本は、フランスで出版された『マキャベリとモンテスキューの地獄対話』という冊子でして、本来はナポレオン三世を皮肉ったものだったのを、いかにもユダヤ人組織による陰謀のように書き換え膨らませたものです。一時は騒がれましたが、1921年にタイムズ誌によって種本の存在がすっぱ抜かれ、少なくともイギリスにおいてはすぐにその熱は醒めていきました。しかし、この偽書に目をつけたのがアドルフ・ヒトラーです。

ヒトラーは「歴史的に真実でなくても、内容が真実であればよい」というようなことを言ったらしいですが、歴史的に真実でない内容がなぜ真実だとわかるのか?つまるところ、自分の願望を満たす内容であれば真実である、というこです。とんでもない論理ですが、現代にも自分の願望を真実と勘違いする人間はたくさんいるでしょう。ユリウス・カエサル曰く「人間は自分の信じるものしか見ない」のです。

そしてこの偽書がヒトラーに利用されたあげく、ナチスが行き着いたのはホロコーストです。この本が史上最悪の偽書と呼ばれる所以です。
願望と真実を混同する危険を人間は歴史に学ぶべきです


この本は今もユダヤ陰謀論者等、現代日本にも本気にとる人がいますが、日本人はヨーロッパの根深いユダヤ差別の歴史を知らないゆえに他人事の娯楽のように捉えるのかもしれません。また、この議定書が抽象的で人間性の一面をついていることで、内容が全て正しいと錯覚してしまう効果もあるでしょう。

実際はこの議定書から1世紀経ちますが、この議定書でユダヤ人が自己のために誘導したという科学は破綻もせずに人類はロケットを打ち上げ、月に行き、人々はカーナビ・インターネットの恩恵を受け、進化論は特定の宗教信者を除いて学問的に確立しています。科学とは事実に基づいたものであり、イデオロギーで左右されるものではないからです。そんなものに基づいているのなら、科学が発展することはありません。

またこの1世紀の歴史を見れば、ロシア帝国は倒れてソ連邦が成立し、かたや近代シオニズムに基づいてイスラエルが建国されて、さらについ最近にソ連は崩壊し冷戦が終了して旧ソ連のユダヤ人たちはイスラエルに大量に流入、イスラエルとアラブ諸国との緊張は収まらずに、そのイスラムでは過激派がテロを起こしてアメリカと対立しています。100年経っても世界支配どころか混沌としているこの状況のどこに計画が見られるのでしょう?

ネアンデルタール


現代人にネアンデルタール人のDNA、混血の可能性
 
                                                   ロイター 2010年 5月 7日

ネアンデルタールと現生人類が混血していた可能性がある・・・。ヤフーやmixiニュースで取り上げられたせいか、それぞれのコメント、日記にかなり取り上げられているようです。「やっぱり」「自分が正しかった」「混血していてもおかしくない」・・・しかし、ちょっと待ってみましょう。

少し年配の人は、混血の可能性というのが少しピンとこないかもしれません。昔の本にはネアンデルタール人は猿人→原人→新人という進化の図の中で、ネアンデルタール人は「旧人」として、現生人類の前の段階のように載っていることが多かったので、ネアンデルタール人が人類の祖先であると今も思っている人は多いと思います。
しかし、この考えは現在否定されており、ネアンデルタール人は同じ先祖から途中で枝分かれした別種の人類とされています。これを以前に細胞内のミトコンドリアDNAの分析から結論付けたのが、今回の発表をしたマックス・プランク進化人類学研究所のペーボ氏です。

そこから絶滅したネアンデルタール人の運命について、色々な考えが出ており、ひょっとして現生人類と混血したのではないか?という考えも生まれてきました。ネアンデルタールの生息した地域には現生人類の祖先も住んでおり、共存していたこと、終末期のネアンデルタールが文化的に現生人類の影響を受けたらしい痕跡があることからも、その可能性は取りざたされていましたが、分岐したのが数十万年前と、生物的差異も大きく、論議を呼んでいました。

これに迫るのはやはりDNA解析です。実は、ペーボ氏らのグループがミトコンドリアDNAを解析したときには混血の痕跡は見つかっておらず、混血には否定的な結論でした。もっとはっきりした痕跡を辿るにはやはり、その生物の全情報がある細胞核の核DNAのほうを当たらなければいけません。今回、ペーボ氏のグループはその核DNAの解読に成功し、ネアンデルタールと人類の混血の可能性を指摘しました。

ただ、注意しておくのは、この核DNAのゲノム解読に関しては既に別の研究があることです。ミトコンドリアDNAの解読をペーボ氏と共同で行ったアメリカのバークレー研究所、共同ゲノム研究所所長のルービン氏が2006年にペーボ氏から得た同じクロアチアの地域のネアンデルタールの核DNAを、ペーボ氏と別の方法で解読してサイエンス誌上に発表しています 。これによると、ネアンデルタールと現生人類の混血の可能性は低いとしています。

確かに、今回のペーボ氏の発表は、これをひっくり返す可能性があるとは思うのですが、同じ核DNAの調査で別の結論があるのですから、現在の所は今回の発表は混血の可能性が低いほうに行きつつあった議論の針を大きくゆり戻したということであり、論議の種がまた増えたという段階で捉えておくべきでしょう。多分、今後、研究精度やサンプルの数の問題が出てくると思います。

私は以前、ネットでネアンデルタールの混血の可能性を指摘する人に、現在の研究ではその可能性が低いことを指摘しましたが、このとき指摘されてやり込められた人は、自分が正しかったんだと悦に入るかもしれません。ですが、私はそのときの指摘が間違っていたとは思いません。少なくともその人は、まともな研究ではなく知識もなしに個人的な人種差別感で全く根拠のない話を吹聴していただけでしたし、そのときは少なくともミトコンドリアDNA・核DNAの双方の調査において混血に否定的な見解が出ていたときですから。
私は今後の研究でネアンデルタールの混血の可能性が高くなっていけば、それで面白いと思っていますし、知見が広がるのを楽しみにしています。古人類学はとにかく新発見で新しい人類像が生まれるのが面白い分野ですから。

ただ、この研究について、インパクトのある話だけ流してその後を流さないのは日本のマスコミの通弊ですから、また数年したら書籍か関連サイトを当たってチェックしなおさなければなあ、と、それは面倒にも感じます。

ノアの方舟

また、ノアの方舟の発見 ニュースです。

この手の話に詳しい人ならこれで何隻目だよ?と思う話なんですが、ノアの方舟発見の話は数年おきのイベントじゃないかと思うくらい、何度も現れて消えていくものです。

そもそも、標高4000メートルもの高さにまで方舟を運ぶような大洪水などというものはありえるのか?という点から考えなければいけません。聖書の字句どおりの雨による世界規模の洪水なら、その大量の水はどこに消えたのか?という疑問を抑えるべきですし、4000メートル級の津波だの洪水だのの原因になる異変があれば、洪水やその大異変の痕跡くらいは、アララト以外の地でそれまでの地質学調査によって出てこないほうがおかしいとなるでしょう。
いや、そもそも現代のアララト山が、聖書のアララト、もしくはその原型になったシュメール神話の大洪水の地だという確証がどこにあるのでしょう?こういったことを抑えようとする大洪水信者というのは、まずお目にかかれません。

放射性炭素測定法も、それによってメディアの関心が高いとかありますが、以前にもそういう調査結果というものが添えられた話もありますが、なぜか信者さんのサイトでは結果が変わっていたことがあります。ですから、どこで調査したのか、本当に現地の木片なのか、検査データを実際に示して検証される必要があるでしょう。

今回の発表 は木造構造物というものの動画 までついていますが、その入り口周囲の映像もなく、ただその内部という映像しかありません。その艱難の様子という動画 は、何回か登っているのを繋ぎ合わせた単なる登山映像です。動画のラストで、目的地についたかのように、なにか喜びを皆で噛み締めている様子がありますが、後ろに続く、軽装の人たちは一般の登山客ではないかなあ、と。特に後ろから、怪訝な表情で見ている腕を組んだカップルらしき一組はスタッフには見えませんが。

これを世界遺産申請しようと、もう動いている段階で自分たちの調査に対する慎重さという要素が全く見られず、すでに怪しいものだと言わざるを得ません。

経歴詐称

今日の読売新聞の一面で元東大助教のアニリール・セルカン の件が掲載されたそうです。
当のアニリール・セルカンは既に博士号剥奪・懲戒相当という、東大始まって以来の処分が下されていますが、その後も東大は関係者の調査を続けているようです。

私はこういった分野で素人ですが、NASAの宇宙飛行士候補に選ばれたというセルカンの宇宙服姿の画像を見れば一発でその胡散臭さが見えてきます。一部では、研究者の盗用ではなく、詐欺師が研究者の世界で詐欺を働いたとも言われるような有様です。

宇宙飛行士姿のセルカン


実際の宇宙飛行士、リチャード・ヒーブ氏の1992年の画像


経歴詐称・論文盗用という事実を知っていると、NASAの宇宙飛行士候補だスキーの金メダリストだのが実に胡散臭くみえるものですが、指摘されるまで周囲の人間、そのカレッジにお金を払って受講をしていた人たち、マスコミ等が東大助教という肩書きに踊らされ続けてきたのです。セルカンのみならず、関係者にも厳重な処分・社会的な制裁が下されて欲しいものです。

ところで、元々この件を追求し続け、セルカンの論文盗用、経歴疑惑の証拠を集め、セルカンの仮面をはがすのに大きく貢献したのが、2ちゃん理系(全般)板 住民をはじめとするネットの有志の人たち でした。
2ちゃんには弊害が多く、怪しい情報に振り回されることが多いのは確かですが、それぞれの専門板には下手な専門家よりはるかに専門知識が多い住民もいることも確かで、沖縄の与那国の海底遺跡と騒がれた海底地形についても考古学板において徹底的な検証 がされています。

以前に調べ物について書きましたが 、情報の取捨選択さえ慎重に行えば、ネットを使うとよりリアルタイムに下手な書籍や雑誌よりも正確な知識を得ることができます。

偽書色々 その2 ~大特許状~

昨日はコンスタンティヌスの寄進状を紹介しましたので、その流れでヨーロッパの華麗なる一族、ハプスブルク家に関する偽書、大特許状を取り上げたいと思います。

フランク王国のカール大帝が得た西ローマ皇帝位は、その後、フランク帝国の分裂や帝のカロリング家の消滅など、あれやこれやがありまして、中世から近代にかけて、ドイツ国王が名乗るのが通例になりました。これが神聖ローマ帝国です。
神聖ローマ帝国だのドイツ王国だの言っても、当時のドイツは統一国家では全くなく、バイエルンやザクセンといった、いわゆる有力諸侯達が割拠する状態で、皇帝位も世襲ではなく、これら諸侯達の選挙によって選ばれることが多いものでした。この諸侯たちによる選挙は、1356年、ルクセンブルク家の皇帝、カール4世によって、選挙権を帝国内の7つの有力諸侯に限ること(七選帝侯)を含めて、明確に制度化されました(金印勅書)。

この時、ハプスブルク家は、すでに何人かの皇帝も輩出しており、オーストリアその他の複数の公爵領を領する有力諸侯であり、さらに当時の当主ルドルフ4世はカール4世の娘婿でありながら、この七選帝侯には含まれませんでした。
それに対し、ルドルフは我が家は帝国諸侯よりさらに爵位の高い大公であると称しはじめます。そして皇帝にしか認められない授爵権、その他の特権を主張します。
実は、この大公という爵位は、それまでの歴史に存在しない爵位で、ルドルフが勝手に作ったものです。これに対し、皇帝カール4世は当然、その大公という爵位とやらの根拠を示せとルドルフに言います。これに対してルドルフがカール4世に差し出したのが、後世に言う大特許状です。

面白いのが、この大特許状、カール4世の委嘱を受けたペトラルカの鑑定によって、最初から偽書であることがバレバレのものでした。補強証拠として、歴代皇帝の特許状とやらに添えられた2通の手紙というのが、ローマ時代のカエサルと皇帝ネロのものだったのです。勿論、ローマ時代に当時のドイツ諸邦国など存在しないので手紙など書きようがありません。これは、ルドルフはばれることを百も承知で、皇帝を挑発してみせたのです。

カール4世はこれに対して懲罰を行おうにも、ルドルフはあらかじめ、同盟政策によって皇帝とやりあう気満々で下手に手を出すわけにもいかず、結局、この騒動はうやむやにされることになったのです。
その後、ハプスブルク家の皇帝、フリードリヒ3世の時代になり、なんとこのイカサマ特許状は正式のものとして帝国法に取り入れられます。そして、その後ハプスブルク家は帝国の終末に至るまでのほとんどの期間神聖ローマ皇帝位を独占し続け、大特許状はハプスブルク家の権威の源泉の一つとなります。

後世のハプスブルク家の女帝マリア・テレジアは正確に言えば皇帝ではなく、ハンガリー女王・ベーメン女王・オーストリア大公でしたが、このオーストリア大公という位が大特許状から来ているのは言うまでもありません。

先のコンスタンティヌスの寄進状といい、でたらめな偽書でも本物としてしまえば、歴史に大きく影響をあたえるものです。

偽書色々 その1 ~コンスタンティヌスの寄進状~

一応このブログを歴史好きのカテゴリーにおいているので、歴史のことに触れてみようと思います。
ただ、通り一遍の歴史では面白くないので、偽書というものに焦点をあててみたいと思います。偽書とは、簡潔にいうと「著者や時代を偽った書」でして、古今東西、様々な偽書があり、それを信じる人が絶えません。中には明らかに偽書と知っていてそれを利用する人間もいます。
それで、偽書というものをいくつか紹介してみようと思います。

まず最初に、「中世最大の偽書」と言われる、コンスタンティヌスの寄進状をヨーロッパ史から挙げたいと思います。
これは、簡単に言うと、ローマ帝国のコンスタンティヌス大帝が、ローマ教会に帝国の西半分を寄進しましたという内容です。
コンスタンティヌス大帝と言えば、ディオクレティアヌス帝の四分統治後、帝国を再統一して首都をコンスタンティノープルに移した皇帝です。そして、なによりも、それまで迫害されていたキリスト教を公認した皇帝として、キリスト教徒には絶対的な名君でした。
ただ、この皇帝が教会に帝国の西半分を与えたかといえば、そんなことはなく、その死後も普通にその一族に帝国は継承されています。この偽書は、8世紀にローマのサン・ジョバンニ・ラテラノ寺院の聖職者が、ローマ教皇の座所になっているサン・ピエトロ寺院に対して、自寺院の優越性を示すために偽作したもののようです。

では、なぜローマ教皇はこの偽書を利用したかといえば、「当時のローマ教会は皇帝が欲しかった」の一言です。8世紀は名目上の宗主である東ローマ(ビザンツ)皇帝の力は西ヨーロッパには及ばず、教皇庁は自分たちを庇護してくれる”ローマ皇帝”が必要でした。世界を支配する”ローマ皇帝”というものは、それだけの重みがあったのです。ただ、実際には東ローマ帝国の力は、ローマ教会の縄張りである西ローマ地域には及んでいません。
そこで、フランク王国のカールに目をつけ、彼を西ローマ皇帝に戴冠させることで、自分たちで皇帝を作っちゃったのです。これがカール大帝で、このときがヨーロッパの始まりとも言われています。

この時に使われたのが、”コンスタンティヌスの寄進状”です。帝国の西半分がローマ教会に寄進されたということにしてしまえば、東の皇帝にも正統性を主張できますし、西の皇帝(フランク皇帝)に対しても、ヨーロッパの地域では皇帝は教皇の委託を受けて統治しているんだぞという、権威の優越を主張できます。この偽書は、当時の教皇庁には実に利用しやすいものだったのです。ここで教会の良心とか誠実という道徳はどうなってるの?と思う人もいるかもしれませんが、だいたい歴史とはそういうもので、あまり人に単純な良心や理想を求められないものです。

乱暴な言い方をすれば、現在のヨーロッパの成立には、一編の偽書が大きな影響を与えたとも言えます。

この”教皇の皇帝への優越”の理念が、その後の中世ヨーロッパに影響を与え、ローマ帝国の継承者を主張する神聖ローマ帝国皇帝とローマ教皇の対立である聖職叙任権闘争、イタリアのゲルフとギベリンの争いなど、ヨーロッパ国際関係にその後も重大な影響を与えることになります。

ちなみにこの寄進状に偽書の指摘がされたのは15世紀、偽書と決着がついたのは18世紀と、千年もローマ教皇庁に影響を与えた偽書でした。

不可思議探偵団

新番組の『不可思議探偵団』を観てみました。さすがに2012年のマヤの予言などというマヤ人が言ってもいない予言は、もう取り上げなかったですが、今度はアポフィスの衝突ですか・・・。

まるで、人類滅亡がまた先延ばしになった気がしないでもない話ですが、アポフィスはウィキペディア にも詳しいですが、もう何度もニュースになっていて、それほど旬というわけではない情報です。

アポフィスの衝突可能性について、当初NASAが、大災害の可能性のあるトリノスケール 4と発表したのは本当ですが、その日のうちにスケール1に修正されています

13歳の少年が、2029年の接近の時に静止衛星に衝突する可能性を加味して、2036年に衝突する可能性を示したのも、確かに話題にはなりました。この件も、少年がNASAの計算ミスを指摘したことは述べてNASAが間違いを犯したように放送していますが、その後、NASAの方からも少年のミスを指摘しているのを放送しないのは不公平ではないかと思うのですが。現在、NASAの予測では、トリノスケール0で、さらに衝突の可能性は低く予想されており、正確な予測は困難にしろ(それゆえにロシアが対策を考える事態になったのでしょうが)、高確率なほうの予想を引き合いに出して、いたずらに不安を煽るべきではないと思います。

それにアポフィスがもし、衝突した場合、広範な被害が出ることは確かにしても、恐竜絶滅の要因の可能性のある、チチュルブ・クレーターの隕石を引き合いに出すべきではありません。400メートルのアポフィスと、10キロメートルオーバーのチチュルブの隕石では、災害規模は全く違うのは言うまでもありません。人類滅亡だの文明の崩壊を示すような映画の映像を出すのは止めて欲しいものです。

解明を目的にするのなら、もうちょっと詳しく正確に放送してくるだろうかと、ちょっとは思っていたのですが、やっぱりバラエティ番組というのは、何度終末ネタを流しても懲りてくれないんですねえ(ノДT)