昔書いていた詩(174) 「琵琶の木」 「男」 「風」 | たろうくん(清水太郎)のブログ

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八王子の夕焼けの里でniftyの「清水中世史研究所」(八王子地域の中世の郷土史)とYahooで「清水太郎の部屋」として詩を書いてます。

   琵琶の木
 
 ベランダ越しに
 母の手植えの
 琵琶の木が
 風に揺れている
 
 冬は黒色の緑の季節
 自転車置き場の陰で
 夏が蹲っている
 昼寝をしている
 
 空は高さを増し
 陽は低く僕をめぐる
 
 いつもと違わない時刻が
 僕を取り囲んで
 娘がプラスチックのマイクで
 高らかに歌う
 
 
    男
 
 いつからそうなってしまったのか
 僕は42歳の出社拒否の男
 六年前の七夕の日に
 僕の心はプッンと切れた
 それからの毎日は
 転職の繰り返しで
 満足に働いてない
 妻は怒り呆れ果て
 娘だけが
 元気に歌っている
 
 
    風
 
 風が止まった
 地表が冷える
 雲が湧いた
 時が流れゆく
 往くあてのない
 人生に決別して
 男が歩いてゆく
 その男は
 僕ではないよ