(再掲) PSPの歴史からPS Vitaの今後の動向を考える | みらいマニアックス !

(再掲) PSPの歴史からPS Vitaの今後の動向を考える

PSPは米国で累計2,000万台を売り上げた。(グローバルでは7,000万台)
まず、年ごとのHWの売り上げは次の通り。

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・米国での発売は2005年。発売から9か月で3.6百万台を売るという好スタートを切った
・翌2006年には急減速。おそらくソニーがPS3のロンチに注力したため
・2007年には価格を$200から$170に値下げ。2007年、2008年は好調を維持
・翌2009年には、さらなる価格の引き下げ等の措置にもかかわらず、突然の不調に転落
・そのまま2010年、2011年と続落

Michael Pachter(Wedbush Securities)らのアナリストは、2009年のPSPの劇的な転落を、Appleの携帯機及びiTunesの登場の影響によるものだと述べている。

以下は米国でのパッケージ版タイトルの発売状況。昨年はわずか平均2タイトル/月に減少している。

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以下は米国でのPSN版タイトルの発売状況。

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デジタル販売への注力を裏付けるように、現時点では、PSPは凡そ半数のタイトルをPSNで発売するまでになった。現時点ではPSPのUMD版タイトルは595であり、これに対してPSN版は302である。
UMD版からPSNへの展開はあいかわらず行われているが、PSNでリリースされるタイトルの多くをminiが占めている。miniのリリースは続いており、多いときには月に数タイトルのリリースが行われている。

だが売り上げは芳しくない。Michael Pachter氏によると、PSPの全ソフトウェア売り上げは2009年から2010年にかけて33%減少し、その翌年2010年から2011年にかけて更に50%減少した。
またRichard Hill-Whittall氏(ICON Software)によると、同社の8つのminiタイトルはこれまで累計で14.7万本を売り上げた。ただしこれには無料で配布されたBashi Blocksの8.3万本が含まれているそうだ。


NS: Gamasutra
http://www.gamasutra.com/view/news/39843/Looking_toward_Vitas_future_by_examining_PSPs_past.php


みらい的コメント

PSPが北米で売れていないという事実はよく知られるところだが、経年で整理すると、売れていない=ずっと低調なセールスという単純なイメージとは違う、なかなかに興味深いストーリーが浮き彫りになってくる。

ざっくり言って、この分析からは以下のようなことが分かる。

・PSPはずっと低調なセールスだったわけではない。2008年まではむしろよく売れていた
・PSPを殺したのはDSでも3DSでもなく、iPhoneをはじめとするモバイル機だった
・ソニーはDL販売には熱心で、PSP Goはその路線上にあった
 Goは実験機等ではなく、おそらく次世代の本命機だった。Goの失敗はソニーには手痛かっただろう
・値引きの効果は大きかったが、iPhone等モバイル機との戦いでの劣勢を覆す力はなかった

これを見ると、USが主導したと思われるVitaがなぜiPhoneを強烈に意識しているのかが分かる。要するに、北米で「PSPを殺したのはDSでも3DSでもなく、iPhoneをはじめとするモバイル機だった」からなのだ。

Vitaのコンセプトを一言でいえば、それはつまりぼく(SCEA)の考えた最強のPSPで、iPhoneに対してリターンマッチを挑むぜ、ということなのだと思う。
日本から見ると、Vitaはいまいち位置付けが分かりにくいが、それはたぶん、PSPがiPhoneに殺されておらず、ちゃんと主役を張っているという世界線上に日本があるからなのだろう。日本でのPSPの敵はDSだったし、3DSのコア層狙いの失敗が明らかにしたように、すみ分けができる相手だったわけなので。

欧米市場でのVitaの前途が明るいとは思えないし、その点ではアナリスト諸氏の懸念は正しいと思う。
だが、Vitaは対iPhoneとの戦いを前提に考え抜かれていることは確実だ。横から殴り倒されたPSPとは、そこは大きく違う。一体どうなるか、大変興味深いことだ。


追記:

Vitaの今後にの見込みに関するエントリ「SCEA:Vitaの売上は許容できる範囲。状況は良くなっていると感じている」のコメント欄の議論が続いていることから、参考として2012年08月12日のエントリを再掲。一部誤字等のみ修正。