プラットホームホルダとデベロッパの関係。SCEA・Boyes氏が語る | みらいマニアックス !

プラットホームホルダとデベロッパの関係。SCEA・Boyes氏が語る

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Adam Boyes氏(VP of Publisher Relations, SCEA)は、先週シアトルで開催されたCasual Connect game conferenceにて、カジュアル・ゲームのデベロッパの、ソニー・プラットホームへのリクルートを行っていた。これはゲーム業界がソーシャル・モバイル・オンラインへの傾斜を示すものだ。

以下、Venturebeatの質問とBoyes氏のコメント。
(一部抄訳。詳細は原文参照を推奨)

Q: Casual Connectでソニーが3rdをリクルートするのは初めてか
A:(Boyes氏は昨年にはソニーにいなかったので)多分そうだ。コンテンツを作ろうとしている人ときちんと話をしていくことは極めて大事なことだ。デベロッパであれば誰でもPlaystationプラットホームでコンテンツを発売できることはあまり理解されてはないが、声を大にして伝えていきたい。

Q: コンソールの向けにリクルートしてきたこれまでのデベロッパとは違うか
A:そうだ。だがコンソール向けのデベロッパについても、大手しかパブリッシュできなかったPS2やPSPの時代とはかなり違っている。

Q: PSNやデジタル販売の優先順位は高くなったのか
A:いろいろなことを積極的にやっている。F2Pもやっているし、PSMobileも始める。今回のカンファの内容はどうあれ、PSエコシステムには(様々で多様なコンテンツが)重要だということをデベロッパにしっかりと伝えたい。

Q: 新しいプラットホームでは頻繁なアップデートや分析モデルを利用して効果を上げている
A:パッチや追加コンテンツについてはかなりオープンだと思っている。難しいのはいつ実行するかだ。小規模なパッチについては、1つのタイトルに何回ものアップデートを行っているパートナーもおり、解析情報をモニターできるようなツールと技術を裏にもっていれば、定期的なパッチ投入が可能だ。

Q: それは異なるプラットホーム間で問題だった点だ。これまで話したことはあったか
A:これはデジタルによる革新の一部だ。もともとF2Pに対しては今と異なるポリシーを持っていたが、今はF2Pもマイクロ課金も行える。以前はタイトルの投入には一定の条件を課していたが、今はそのようなことはしていない。コンセプト承認のプロセスは通す必要があるが、コンソールのライフサイクルにわたって自然な形で進化してきたものだ。業界が進化している以上、我々も今まで以上に進化している。

Q: デジタル配信を利用するゲーマーはどのくらいいるのか。劇的な増加を見ているか
PSNはPSよりも新しい(のでまだ数は比較的少ない)。だからデジタル、小売の両方にフォーカスすることが重要だ。

Q: 厳しく管理されているプラットホームと、モバイル等の自由なものは別物ではないか
ソニーのコンセプト承認プロセスは、PS2やPSPの時代よりも遥かにライトになった。Shawn McGrath氏のDyadは、ああいったゲームこそ我々がもとめるものだが、10年前には考えられなかったろう。

Q: Big Fish Gamesが月8ドルでクラウドゲーミング・サービスを開始した。興味があるか
興味深いが、PSNにはPSNの良さがある。

Q: ソニーはGaikaiを活用するか。それはあなた(Boyes氏)の仕事の役に立つか
まだ話していない。

Q: どの程度の変化を想定しているか
オープンとクローズの差異についての概念は、時代につれて変化してきた。 GenesisやSNESの時代はPlayStationによって自由になった。我々は今もポリシを大きく見直し、プラットホームの自由さを改善しつつある。Dyadやもうすぐ登場するPapa & Yoは、ソニーのファンドがもたらした素晴らしい例だ。JourneyやUnfinished Swanもそう言っても良いかもしれない。ソニーのエコシステムにはそうした例が山ほどある。

Q: ゲームのサービス化は将来の問題か、今日の問題か
PSNではDC Universe Onlineがあり、CCP GamesのDust 514がある。これはEVE Onlineとも連携し、Vitaにもコンパニオン・アプリが出る。サービスとしてのゲームについて、CCP Gamesは最高のチームだ。こういったパートナーとの関係から、我々はサービスとしてのゲームを提供することができることをお見せできるだろう。

Q: 更新は日次か、月次か
デベロッパ次第だ。

Q: デベロッパが望むほどのスピードで行うのは難しいのではないか
そうだ。だがそれが我々の仕事だし、スピードをもって対応していると考えている。

Q: F2Pはそのうちに行うか
既にPSNやVitaでは行っている。今後はデベロッパ次第だが、幅広いコンテンツを取りそろえていく。

Q: ソニーはこれまでインディーズとはなかなか上手くやってきた。どのようにしているのか
私ではなく、1stパーティの功績だ。彼らは Journey, Unfinished Swan, the PixelJunk gamesといったデベロッパと密接に連携し、すばらしい仕事をした。我々のチームについて言えば、開発基金とか、GuacameleeのDrinkboxとかの話で、我々の考え方は、我々は開発基金で広くインディーズをサポートする仕組みを作った。これはロイヤリティーの一部を前貸するというものだ。デベロッパの中には、やろうとしていることをやり、また作品を発売するまでの資金難を和らげる何かが必要なところがある。開発基金を使えることになれば、デベロッパは開発資金を前借することができるようになり、開発を必要なスケジュールを組むだけの自由が手に入る。これはどちらにとってもよい仕組みだ。だが私はまずゲーマーの一人として、PSプラットホームに沢山のコンテンツが来て、しかも成功していることを喜んでいる。

Q: プラットホーム間でのデベロッパの奪い合いが激しくなっている。どうやって戦うか
いい質問だ。デベロッパーは限られているので簡単ではない。しかも今、モバイルやソーシャルも関係している。もっと魅力的なストーリーを語れることが絶対に必要だ。それは彼らのコンテンツを熱狂的に歓迎するゲーマーが、我々のプラットホームには大勢いるということだと思っている。コンテンツを求めてわたしたちのプラットホームに来るというタイプの人がいる。PSや、Vitaや、PSMobileを立ち上げて、Playstationがテーブルに広げるコンテンツを楽しみにしてくれるのだ。魅力的なコンテンツは本当に素晴らしい。だから私たちはこの(デベロッパの奪い合いという)議論に巻き込まれにくい。他の多くのプレイヤーを見ればわかるが、彼らはゲームをなによりも最優先にはしていない。今PS3でゲームを買うにはたった3ボタンで良い。だが他のコンソールでは10~15ボタンだ。対応するデバイスがやたらとあるような場合にはことさらにそうだ。PSはなによりもまずゲーム機だ。もちろんゲーム以外にも凄いことはいろいろできるが、そうはいっても、ユーザは(PSを)立ち上げるときには何がしたいか分かっているのだ。それが我々の誇りなのだ。

Q: PS3はライフサイクルの終わりにある。タイトルの投入は待ったほうがよいか
そういった話はデベロッパからはほとんど聞かない。むしろPS3フォーマットはかつてないほど盛り上がっている。とりわけ伝えたいことは、Playstationプラットホームは、デベロッパが彼ら自身の条件で作品をリリースできるということだ。ライセンス契約を結ぶだけで作品をリリースすることができる。


NS: Venturebeat
http://venturebeat.com/2012/07/31/sonys-adam-boyes-chases-developers-on-new-platforms/view-all/


みらい的コメント

新興プラットホームの登場により。3rdパーティ営業が以前より遥かに難しくなっている、とのSCE吉田氏のコメントを以前のエントリ「SCE吉田氏インタビュー(VG247)」でご紹介したが、こちらは現場からのより突っ込んだコメントだ。

紹介しておいて何だがちょっとマニアックな記事かも。個人的におもしろいと思ったのは次の点。

・3rdの獲得が難しくなっている。その重要な原因はソーシャル・モバイル勢との競合
・アクティブなインストールベースの多寡以外に、自由さや柔軟性といったプラットホームのサービスの質とでも呼べそうなものが競争のポイントとなりつつある
・プラットホームホルダには、変化のスピードが強く求められている
・プラットホーム側のリードはBoyes氏のような外部での経験が豊かな人物。内部の生え抜きでは必要なスピードは出せないのかも。PSNがインディーズ系で最近勢いがあるのはこのせい?
・Vita以来顕著だが、ソニーのゲーム事業の主導権はSCEAに移っているように見える。それはここで見られるようなSCEAとSCEJのスピードの格差に関係あるのでは?
・今回の平井氏の社長昇格はこれと同じ文脈の出来事だと考えることもできるが、もしもそうなら、ソニーの日本法人は知らない間にローカルオフィスに転落していたことになるな・・・

プラットホームホルダはかつてのような支配者ではなく、コンテンツホルダに仕えるサービスプロバイダ的な何かになってしまったのかもしれない。王様から従者とは、トランプゲーム・大貧民の革命みたいだ。中の人たちも生半可なことでは付いていけないだろう。全体として、それでも時代の変化に追いつこうと必死で走っているという印象を受ける。


だがソニー国内社内では、そんなムードはあまり感じられないっぽい。

先月7月27日に「"大企業病"の上層部にうんざりなソニー社員座談会」という記事がBJに掲載されていたが、そこではあいかわらずのソニー節、オレたち技術は抜群だけど売れないんだよね~ハハハ的なトークが展開されている。(http://biz-journal.jp/2012/07/post_453.html)

上のBoyes氏のインタビューでのソニーと、座談会でのソニーのどちらが本当かは分からない。だがこれではゲームビジネスをSCEAに取り上げられても無理もないのじゃないだろうか。
座談会の参加者は「平井さんはつなぎ」「単に英語ができる人」といいたい放題だ。この情けない記事を読み、またSCEJとSCEAのサービスのあまりの格差を見ていると、US主導の方が遥かにマシなのではないかという気がしてしまうのが悲しい。


みらい的チラシの裏

もうさ、いっそ国内のサービスもSCEAさんにやってもらえばいいんじゃね?割とマジで。