今、英国で新聞を購入するなら

『デイリー・テレグラフ』 がおすすめです。


皆様もお聞き及びかもしれませんが

現在英国では

国会議員のどう考えても常識はずれな

経費請求・受理の実態が

政界を揺るがす大問題となっております。


その批判の先陣を切っているのが

『デイリー・テレグラフ』で、

先週からもうこれでもかとばかりに

スクープを連発しておりまして。


スクープとはすなわち

支給された経費の詳細な内訳。


もう英国下院議員の皆様ったら

何と申しますか、本当好き放題

経費申請をしていらっしゃいましてね。


「プール建設費」だの「庭園維持費」だの

「ヘリポート建設費」だの「シャンデリア代」だの

「家のお堀の掃除代」だの

・・・それは本当に下院議員としてのお仕事上

絶対に必要な支出だったんですか、という。

プールなんてそれはどう考えても

個人的な支出と違うんですか。


昨日はとうとう

司法大臣(Justice Minister)が

停職に追い込まれる事態 になりました。


英国の議員は自分の地元と

議会の開かれるロンドンとの二箇所に

住居を構えることが多く、

その『2軒目の家』に関しては

維持費を公費として

申請できることになっています。

この司法大臣は

2005年に議員に選出されて以来

3年間で約6万6800ポンドを

この『2軒目の家』維持費として

手にしておりました

(これは『2軒目の家』維持費として

経費申請できる限度額だそうです)。


つまり1週間につき443ポンドの家賃を

この司法大臣のために

納税者が負担していたのです。


で、この司法大臣の『1軒目の家』、

選挙区にある自宅なんですが、

この家の家賃として彼が支払っていた額が

1週あたり100ポンド以下だったことが

このたび明るみに出ましてね。

・・・相場からして安すぎるこの家賃。


うん、なんだか

あやしい匂いがする展開だよね!


なおこの司法大臣、他にも

「ディッシュウォッシャー:239ポンド」

「風呂場の洗面台:225ポンド」

「掃除機:185ポンド」

「マッサージチェア:730ポンド」

などを経費として計上していらっしゃいまして。

そうですよね、司法大臣たるもの

マッサージチェアは業務上必要不可欠・・・って

ちょっと待てい!と全国民が突っ込み中


ちなみにこの人

「アイポッド:299ポンド」

「ポータブルDVDプレイヤー:205ポンド」

なんかも経費として申請していて、

しかしそれらは

不受理の憂き目を見ています。

・・・当局もその良識があるなら

「バスルーム代:1420ポンド」

の領収書も通しちゃ駄目だと思うんです。

だいたい何ですか「バスルーム代」って。

これはあれだな、さては全面補修したな、

自宅の風呂場を、国民の血税を使って。


というかこの大臣、本当に手当たり次第に

身の回りのすべての支出を

経費として申請していた様子。

あんまりこういうことを

他人に対して言いたくないんですけど・・・

恥ずかしくないのか貴方は、という。


しかし、こんな厚顔無恥な真似をしていた議員は

この人だけじゃないんです。

『デイリー・テレグラフ』によりますと

他の議員さんも堂々と

馬糞:1袋あたり70ペンス」とか

「チョコレートで出来たサンタ:59ペンス」とか

「便座:他の部分も色々補修して計112ポンド」とか

そういうものを経費として計上していましてね。


数年前に日本で

政治資金規正法が改正されたとき

その議論の過程でどこかの議員が

「1円以上の領収書の提出を義務化したら

自動販売機で買ったジュースの代金を

経費として申請できなくなる!」

みたいなことを言い、世間の失笑を買いましたが

・・・政治家の倫理って洋の東西を問わず

こんなもんなんでしょうか・・・

それにしても何が恐ろしいって

英国下院議員の皆様のこれらの経費申請は

別に法に抵触しているわけじゃないんですよ。

それゆえ一部の議員は

この問題が表面化したときに

「別に法律違反じゃないじゃん!

何騒いでんのさ愚民どもが!(意訳)」

みたいなことを言っちゃいまして。

怒りの炎に重油を注ぐ

てのはああいうことなんですね!


こういう泥沼化、私は嫌いじゃないですぜ!


ちなみにこの『デイリー・テレグラフ』は

現在の野党、すなわち

保守党を支持している新聞で有名です。

今回のスクープも

まずは与党労働党の閣僚・議員が

批判の的となりまして、

なるほどさすが『デイリー・テレグラフ』と

人々が感心したところで

今度は野党・保守党に斬り付けた、という。


こういう情け容赦のなさ、私はむしろ大好きですぜ!


ちなみにスコットランド独立派の期待の星

スコットランド国民党党首アレックス・サモンド氏も

見事にこのスキャンダルの大波に巻き込まれました。

サモンド党首ったら

2005年の8月から9月にかけて

800ポンドを

「食費」として経費計上していたことが発覚。


しょ・・・食費っ?


当時のレートがたしか

1ポンド=200円くらいなので

2ヵ月で「食費」16万円。

お腹が相当減っていらしたんでしょうね。


なお2005年の8月から9月、

議会は休会中でした(詳しくはこちら に)。


「それにしてもさ、僕も仕事上

色々な経費を申請するけどさ、

月によっては他の仕事が忙しくて

申請書を提出する時間が惜しいな、と

つい自腹を切って

済ませてしまうこともあるんだよね。

わが国の議員はどれだけ暇なんだろう」

とは夫(英国人)の弁。


「何をおっしゃる、

経費申請専門の担当者を各議員が

雇っているに決まっているじゃないですか」

「・・・なるほど。で、その担当者のお給料も

議員は経費として申請できるわけですね」


ある意味完璧なシステムですよね。


個人的に私が一番笑ったのは

「電球取替え代:

他の作業代も含めて135ポンド」

だったんですが

(次点は『髪染め代』かしら・・・

『ペットの餌代』も捨て難い)、

しかし今までのところ

やはり一番恥ずかしい経費申請内訳は

夫の見たポルノビデオ代:10ポンド」ですね

(この件については以前の記事 をご参照ください)、

これ以上の恥辱はなかなかありませんわ。

スミス内務大臣、貴方がナンバーワンだ!



政治家に清廉潔白さを求めたい貴方も

そこまでは望まない、しかしせめて

最低限の矜持だけは守って欲しいという貴方も

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スコットランドひきこもり日記-お願いします

今回の騒動が

英国の市民の間に政治不信を招くことは

避けられない事態だと思われます


「次回の選挙の投票率は下がるだろう」

「こういうときにこそ

極右政権・極左政権が誕生してしまう

可能性が高い」

と先日ラジオで専門家が懸念を表明していました


面白おかしく書いていますけど

事態は割と深刻なのです