30回以上に及んだ連載も、今回で最終回となります。
というわけで今回は、東海道新幹線の未来について占ってみたいと思います。

前回と前々回で「中央リニア」を取り上げた際、現在の東海道新幹線が「在来線」に転落してしまう、新幹線としての役割の大半が「中央リニア」に移るのでは、というお話を申し上げましたが、東海道でリニアが完全に新幹線に取って代わるのは、31年後の平成37(2045)年のこと。ちなみに管理人はこの年満77歳になりますが、そこまで生きていられるかは疑問です。名古屋開業の13年後だってどうなるかわからないのに。

…私事はさておき。

以前の回で、東海道新幹線の最高速度を285km/hとすること、更に早朝・深夜に限定されますが一部列車で最高速度を330km/hとすることを検討していることなどを取り上げましたが、これらスピードアップによる所要時間の短縮は数分程度で、その数分はダイヤ構成上の余裕時分に充てたいとしています。
ということは、劇的なスピードアップは「中央リニア」開業までお預け、ということでもあります。

劇的なスピードアップが見込めないとしても、さらなる増発の余地があるのか。具体的には、品川駅発着の列車が誕生しないのか。現在でも品川発の列車はあるにはありますが、早朝の1本だけ。それ以外にも誕生する余地はないのか、ということです。品川駅建設の経緯が、回送列車と干渉しない場所に駅を作ればその分増発の余地が生ずるということだったのですが…。
今のところ、これは期待できないようです。始発列車を運行するには、乗務員の待機スペースや車内販売で販売する商品などを用意する場所なども用意しなければなりませんが、品川駅にはそのような場所が無いと思われるからです(あくまで今のところ、ですが)。確かに品川駅の東京寄りに折り返し線があり、そこで整備ができるようにはなっていますから、その気になればできなくはないのでしょうけど。
あるいは、ATCのシステムを改良して、現在3分間隔が限界となっている運転間隔を狭めるか。それも技術的には出来そうな気もしますが、あまり短い時隔に列車を詰め込んでも、いざダイヤ乱れが生じた場合、収拾がつかなくなってしまいそうな気がします。

列車の本数は以上のとおりですが、では乗客のサービスに関して何か変化が見込めるのでしょうか。
よく語られるのは、「中央リニア」が出来た後は東海道新幹線の列車密度が減り増発余裕ができるのだから、山形新幹線の「とれいゆ」のような「ジョイフル新幹線」ができるのではないか、あるいは長距離の列車に関して食堂車や個室などが復活するのではないか、というようなことです。
「ジョイフル新幹線」であれば、実現させることのハードルはそれほど高くないと思われます。問題はむしろ、16連のキャパシティを埋めることが出来るだけの「集客」ができるかということです。このような列車は、おそらくJR九州のクルーズトレイン「ななつ星」と同様、「乗るためだけの列車」になりそうですから、実際にはJR東海傘下の旅行会社(JR東海ツアーズ?)が集客する旅行商品になると思われます。しかし、編成単位が16両だとすると、通常タイプの編成の1編成1323人よりは少ないかも知れませんが、それでもかなりの大きな単位になります。「ジョイフル新幹線」が実現しない一番の理由は、このような集客の難が理由でしょうね。
では、かつての100系のような、食堂車や個室の復活はありうるのでしょうか。
管理人は、以下の理由から、少なくとも食堂車に関しては難しいのではないかと思われます。300系に食堂車やビュフェを連結しなかった(できなかった)理由が、重量の嵩む調理機器や大容量の水タンクを搭載できなかったことによるのですが、このような機器を揃えた車両は軸重が重くなり、軽量化に逆行しますし、仮に高速で走れるとしても軌道に与えるダメージが大きいと思われること(かつてJR西日本が100系V編成で高速運転の試験を行ったのだが、性能的には無問題だったものの、騒音と軌道に与えるダメージの問題がどうしても解決できなかった)からすると、望み薄と言わざるを得ません。
これに対し、個室は車両重量にはそれほど影響しないと思われることから、実現可能性はこちらの方が高いかも知れません。100系の個室は、人目を避けて移動したい著名人や政治家を中心に根強い需要があったそうですが、そのニーズを充たすものとして有効なツールになりそうです。
ただ、100系だけでなぜ個室がなくなったかといえば、車内販売の女性従業員を個室に連れ込んで良からぬこと(未成年の読者に配慮してぼやかしています。内容はお察しください)をしようとしたり、特に2人用個室で顕著だったのですが、男女で乗車すると、ある行為(同前)により車内が汚れてしまったり、そのようなことが問題視されたからだといわれています。だからといって、まさか個室に防犯カメラを付けるわけにはいかないでしょうし。カラオケボックスじゃないんですから(カラオケボックスには、個室でお客が良からぬ行為に及ばないように防犯カメラが備え付けられている)。

これと関連して、山陽新幹線の更に先、九州新幹線への直通がなるのか、東京発鹿児島中央行きなる列車が登場するのかということも、愛好家の夢として語られることがあります。
現在の「16連・1323名」の不文律からすると、8連が限度の九州新幹線直通列車は東海道区間には入れないでしょう。あるいはリニアが大阪まで開業し、東海道新幹線に余裕が生じれば分かりませんが。その場合でも、長距離を走ることによりダイヤ乱れの影響が広範囲に及ぶリスクもあり、実現する可能性は低かろうと思われます。

以上、徒然に述べて参りましたが、東海道新幹線の未来を占うのは難しいですね…。車両のスペックもダイヤの完成度も、もはや行き着くところまで行き着いてしまった感があるので、管理人の貧困な頭脳では、恥ずかしながら未来予想にも限界があることを認めざるを得ません。某新喜劇の芸人ではありませんが、このくらいにしておこうと思います。

さて、これで東海道新幹線の連載は全て終了です。今年50周年を迎えましたが、その間乗客の死亡事故がほぼゼロという、輝かしい記録を継続しています(実際には平成7年、三島駅でドアに指を挟まれた男性が引きずられて死亡した事故が1件だけある)。今後の60周年、70周年まで、いや未来永劫この記録が続くことを願って、筆(キーボード)を止めます。
長らくのお付合い、ありがとうございました。

-完-