前回までの11回にわたる記事において、都営バスの「都市新バス」及びその周辺を見てきましたが、最終回の今回は「都営バスの未来」「都市新バスの未来」というものを考えてみたいと思います。

前回の記事で、私は「都市新バス」に関して

いずれ一般系統全ての底上げがなされた暁には、必然的に消えることを運命づけられた、バスの運行システムやサービスレベル改善の過渡期に現れた形態ではないのか

と結論づけました。いささか過激かとも思いましたが、「都市新バス」とは恐らく、路線バスの進化の過程に現れた一形態ではないのか、と考えた次第です。
現在ではインターネットの進歩により、都営バスのほぼ全路線で、バスの現在位置が分かるようになっていたり、停留所への接近情報(あと何分経ったらバスが来るか)を表示したりしています。これは「都市新バス」が先鞭をつけたものですが、他の系統に普及し、その限りでは「都市新バス」のアドバンテージではなくなっています。車両においても、以前はハイバックシート・冷暖房完備のハイグレードな専用車を用意していましたが、一般路線においてもノンステップバスの普及や冷暖房の装備が当たり前になったことなどで、こちらも「都市新バス」のアドバンテージではなくなりました。最近は都営バスに無線LANを搭載していますが、これも「都市新バス」だけではありませんし。
勿論これらの現象は、それだけ一般路線バス全体がレベルアップした結果ですが、では今後、「都市新バス」の未来はどういう形態になるのか。

未来の「都市新バス」は、やはり名古屋市の「基幹バス」のような、道路上にバス専用走行レーンを作り、その上で高速走行を行うという形態となるだろうと思われます。現在、JR東日本が東日本大震災の被災路線の仮復旧で採用したBRT(バス高速輸送システム)を、都市部に最適化して採用するというイメージです。
このような「都会のBRT」、実はこれから採用される可能性があります。採用区間になりそうなのが、銀座~勝どき~晴海の間。「アローズ三兄弟」の回で、「晴海通りをゆく路面電車」を取り上げたことがありますが、あれの計画では、路面電車の採用が難しい場合には、BRTの導入、そしてその後の路面電車への切り替えが視野に入っているとのことです。ということは、路面電車導入の前段階として、都市型BRTが採用される場合がありそうな気がします。
晴海方面は、6年後の東京五輪の実施とも密接に関係しており、道路の整備もこれから着手するとのことなので、この計画がどういう形をもって現実化するのか、それが非常に楽しみです。

晴海方面は「これから作る道路」の上を走るBRTですが、既存道路でもBRT化ができそうな路線があります。それが「都01」の走る渋谷-六本木-溜池-新橋間です。渋谷駅から溜池の間は、首都高3号線の真下を進むのですが、首都高3号線の高架橋の真下に、バス専用レーンを作るスペースが確保できるのではないか?と思われるのです。勿論、現実に実行するには費用がかかりますし、溜池-新橋間では整備するのは難しいと思いますが、実現したら面白いでしょうね。
もっとも実際には、東京都内は路線バスが走るような道路はどこも交通量が膨大であり、加えて所謂「路駐」の車両も多いので、バス専用レーンを確保できるところは、現実には少ないように思います。

あとは「都市新バス」からは少々外れますが、「目的を明確にした路線」というのもあっていいでしょう。観光需要に特化した「S-1」などはその典型です。これは一般路線車を改造し、車内に観光用パンフレットを置き、観光案内も交えた案内放送を流すという路線です。現在は東京駅(一部)-上野-浅草-錦糸町を運転していますが、これが走り出した当時は、今後第2・第3の路線が出現するようにも言われていたような気が。今のところ出ていないのは、やはり専用車を用意することによる運用効率の低下の問題があるのでしょうか。
観光需要以外ではビジネス需要がありまして、30年ほど前には小型車で東京駅から霞ヶ関の官庁街を通って新橋に至る「東01」というのがありましたが、早すぎた試みだったのか廃止されてしまいました。現在は、銀座や丸の内、日本橋などのエリアで無料乗車が可能なバスを日の丸自動車が走らせており、完全にお株を奪われた感があります。
東京駅から霞ヶ関地区に向かう路線、今あってもいいような気がしますね。車内でPCが使えて無線LANが使えるようにするとか。でもそうなったら、一日券を買ってずっとそこで仕事をする人が出そうな(^_^;)
これと関連して、以前取り上げた「24時間運行の是非」の問題もあります。現都知事は渋谷-六本木間の終夜運転(金曜夜~土曜朝のみ)について「失敗だったし受益者負担の原則からも疑問」と発言しています。確かにタクシーとの棲み分けや街の治安の悪化、運転手・整備工の労働環境の問題もありますので、日本では24時間化は難しいと思われます。こういうことを言うと、「NYでは地下鉄が24時間運行されているのに、日本では…」とか宣う御仁が現れるのですが、日本は日本。何でもかんでも外国に追従する必要はないでしょう。

さらに、これは多摩地区で特に顕著なのですが、都営バスの路線は「沿線住民の福祉」という面もあります。最近青梅地区で路線の改編がありましたが、本来であればこういうのが公営交通の役割だと思います。儲かるところなら民営バス会社がやればいいんですから。ただ公営の場合「受益者負担」の問題がありますので、あまり多額の税金の投入は難しいのですけどね。

…なんとなくまとまりのない文章になってしまいました。
最後に申し上げますが、「都市新バス」の功績は偉大であったと思います。それまで利用者がバスに抱いていたネガティブなイメージをほぼ完璧に払拭しました。その後仲間を増やしましたが、最近では一般系統の進歩が都市新バスのそれに追いついてしまった。しかし実はその「一般系統の進歩が都市新バスのそれに追いついた」ことこそが、都市新バスの一番の存在意義であったと思います。

これで今回の連載は終了。次回からはまた新幹線ネタです。

-完-