栄華を誇った「アローズ」三兄弟の結束に楔を打ち込んだもの。それは、平成12(2000)年12月の、都営大江戸線の全線開業でした。これと引き換えに、都営バスでは路線網の大規模なリストラが敢行され、秋76(新宿駅西口-秋葉原駅)や田70(新宿駅西口-田町スポーツセンター)といった、路線の大部分が並行している系統や、茶81(渋谷駅-御茶ノ水駅・順天堂病院)のような不採算系統が廃止されました。
そして、「アローズ」三兄弟も、このリストラの波と無縁ではいられませんでした。「アローズ」の長兄とも言える「都03」が、新宿駅西口-四谷駅間をカットされ、なおかつ運転本数が大幅に削減されたからです。

勿論「アローズ」三兄弟は、現実に都営大江戸線と路線が競合しているわけではありません。しかし、それまで都心との距離の割には鉄道アクセスに恵まれなかった勝どき地区に駅ができたことにより、勝どき地区の住民や用務客の利用は、相当数バスから地下鉄に流れてしまい、「都04」「都05」も打撃を被っています。この両系統も減便されました。
では「都03」はといえば、確かに晴海地区への利用は減少していたものの、新宿-四谷-銀座地区での利用はそれほど減少しておらず、乗客そのものは多かったようです。事実、都営大江戸線全線開業の前年・平成11(1999)年の段階でも、新宿駅西口の「都03」の発着本数は、1時間あたり6~7本が確保されており、運転本数の面からも、一応は都市新バスとしての面目を保っていました。
しかし、これは「銀71」時代からの泣き所だったのですが、「都03」には長距離を乗り通す乗客が多く、収益性の面で「都02」に劣っていたのも事実です。これは、均一運賃の泣き所でもあるのですが、均一運賃の場合には、短距離の客が多いほど収益性が上がるという関係性が認められます。勿論、そうでない場合は下がってしまいます。
そこに目をつけられたのか、前述の都営バス路線網のリストラの際、「都03」が槍玉に上がってしまいました。
「都03」の路線短縮と同時に、路線の所管が杉並から深川へと移され、晴海埠頭発着の「都05」と共通化されました。勿論車両も大挙して杉並から深川へと移籍しています。これによって、杉並営業所は看板系統を失い、同時に杉並営業所は支所に格下げされ、「早稲田自動車営業所杉並支所」となっています。現在はさらに「小滝橋自動車営業所杉並支所」と変更され、あわせてはとバスに運営が委託されています。
それにしても、これまでは1時間あたり6~7本はあった四谷発着の「都03」が、路線短縮と同時に1時間あたり2~3本に削減されてしまい、気軽に乗れる系統ではなくなってしまいました。「都市新バス」の理念の一つには、「待たずに乗れる」、つまりバスを待つことにストレスを感じさせないサービスを提供するというものがあったはずですが(現に都08までの都市新バスはそれで成功した)、ここまで本数が減少してしまうと、率直に言って「『都市新バス』の看板に偽りがあるのでは?」とも思えてしまいます。
現在は路線短縮の当時よりさらに本数が減少していますが、これは本数を減らしすぎてバスを当てにできなくなったことと、東側の数寄屋橋-晴海埠頭間の運転間隔を「都05」と無理に合わせて平準化したために数寄屋橋以東の運転間隔が不等時隔となったこと(当ブログにコメントを下さった南栗橋車両管理区荒川支所様のご発言)などにより、利用しにくくなったことが理由ではないかと思われます。

現在、「都03」は深川車庫からさらに港南車庫(品川自動車営業所港南支所)に移管されています。港南車庫は現在の杉並と同様、はとバスに運営が委託されていますので、はとバスの運営ということになってしまいました。
都営バスは数年前から、赤字解消のため、支所のはとバスへの委託運営を進めていますが、それらの路線は多くが所謂「不採算路線」となっています。ということは、港南というはとバスに委託された営業所に「都03」が移管されたということは、「都03」はもはや都市新バスどころか、不採算路線に堕してしまったことを意味するともいえます。実は近年のインターネットサービスの普及により、バスの接近情報なども個人の携帯端末に配信されるようになっていて、その限りでは「都市新バス」と他の都営バスの系統との格差はなくなっています。ですから、現在走っている「都03」は、もはや「都市新バス」とは言えないのではないか。管理人はそのように思っています。少なくとも、当初の目論見とは似ても似つかない姿になってしまった、とはいえますよね。

瀕死の「都03」に対して、「都04」は短距離路線の強みか、所管営業所の変更があったくらいで、大江戸線開業などの荒波を無難に乗り切りました。
「都05」も勿論、本体が荒波をかぶったものの、「都04」同様多少の減便で乗り切り、現在は晴海通りを行く基幹系統となっています。
「都05」は新たな手に打って出ます。平成19(2007)年から土日祝日に限り、東京テレポート発着便を新設、東京駅や銀座方面とお台場地区との連絡が図られました。ただし、本数は1時間あたり1本くらいと、非常にささやかなもの。お台場地区は「ゆりかもめ」があるのですが、あれは新橋にしか達していませんから、この系統の意味は、東京駅に達することにこそあったともいえます。この路線は、昨年平成25(2013)年の大リストラの際に目をつけられ、東京テレポート発着から東京ビッグサイト発着に改められ、土日祝日のみならず、平日も運転することになっています。ただし本数はそれほど変わりませんが…。

数年前から、銀座から晴海にかけて、晴海通りの上を行く路面電車を復活させようという試みが、かなりの現実味を持って語られるようになりました。勿論、往年の都電の復活という単純なものではなく、次世代型の「LRT」という新しい路面電車。このようなことが語られること自体、実は彼ら「アローズ」の隠れた功績だったのではないか。そのように思われてなりません。
一方では「都03」の再生も期待したいところです。単純な新宿発着の復活では意味がないので、かつて都電11系統と並行するバス路線で行っていたような急行運転(主要停留所のみに停車)ということはできないものでしょうか。例えば、新宿駅西口・新宿駅東口(又は新宿三丁目)・四谷四丁目・四谷三丁目・四谷駅だけ停車とか。でも都営に関する限り、バスの急行系統は悉く頓挫していますので、難しいかもしれませんが。

数年後には大きな運命の転換点が訪れそうな「アローズ」三兄弟。LRT計画の行方も含め、大いに注目したいところです。

-その5(№2708.)に続く-