その17(№1627.)から続く


約半年にわたってお付き合いいただきました「浪漫一刻値千金」も、今回で最終回。

最終回の今回は、小田急ロマンスカーの将来の見通しについて述べてみようと思いますので、よろしくお付き合いの程をm(__)m


1 今後の車両の陣容は?


昭和32(1957)年のSE(→SSE)車登場以来、MSEまで8代にわたって登場していますが、今後新車の投入が予定されているということです。

それがMSEとは異なる「9代目のロマンスカー」になるのか、それともMSEのリピートオーダーになるのかは不明ですが、そうなると必然的に退役するロマンスカーが出ることになります。

退役するロマンスカーは、車齢でいえばもう30年に達する最古参のLSEか、あるいはバリアフリーに対応できないという点で言えばハイデッカー構造の客室を持つHiSEかRSEでしょうが、ことによるとVSEとMSE/EXEの2タイプに収斂していくのではないでしょうか。


現在、小田急では何かあってダイヤが乱れると、ロマンスカーをすぐに運転中止にしてしまいます。その理由は、LSE、HiSE、RSE(371系も含む)、EXE、VSE 、MSEと6系列ものロマンスカーが存在し、LSE/HiSEとEXE/MSEをひとくくりにするとしても4種類となり、振り替えが円滑にいかないため、それならいっそのこと全部運休してしまえという方針で、このような対応がとられると聞きました。

しかし、それでは特急料金収入の減少が不可避ですから、できるだけダイヤ乱れなどによる運休をなくす方向をとるべきだと思います。そのためには、JRの東海道新幹線や湘南新宿ラインのように、車種を絞り込んでいく方向をとるべきではないかと思います。そうすると、噂されている新特急車の増備も、MSEのリピートオーダーの線か、あるいはVSE、それと同様の展望構造を持つ車両かと予想されます。

もし小田急ロマンスカーの陣容がVSEとMSE/EXEに統一されたとすると、現在RSEを使用している「あさぎり」はどうなるのでしょうか。最悪の場合廃止か、廃止をまぬかれたとしても、MSEかEXEの6連が御殿場線に乗り入れることになるのではないかと思われます。スーパーシート(グリーン席)がなくなってしまいますが、これは「あさぎり」のグリーン車の利用率次第でしょうね。

さらに、小田急ロマンスカーのブランドイメージを高めているのは、やはり「前面展望」ですから、その点も忘れてほしくないと思います。現在、前面展望席を持っているロマンスカーは7編成(LSE3編成、HiSE2編成、VSE2編成)ありますが、LSEとHiSEが全て退役してしまうと、前面展望席を持っているロマンスカーはVSEの2編成だけになってしまいます。VSEが現在の小田急のフラッグシップであり、かつ2編成しかないことで運用を固定し、そのレア感がさらにステータスを高めていることは疑いないところですが、2編成だけというのはいかにも少ないと思います。確かに現在は、本来のロマンスカーの顧客である箱根への観光客が減少傾向にありますが(それもVSE投入でかなり持ち直したらしい)、たとえ用務・通勤で乗る場合であっても「乗って楽しい車両」であることはサービスには違いないのですから、前面展望席のある車両が(VSEでなくとも)もっと増えてもいいのではないかと思います。

このあたりは管理人の妄想の炸裂となってしまいますが…。


2 江ノ島線系統への「てこ入れ」は?


既に見たとおり、江ノ島線の特急は距離が短いこともあるのか、平日は見る影もなく減便されてしまいました。

しかし、江ノ島線の競争相手である湘南新宿ラインには、グリーン車はあっても着席保障のある指定席車はありません。そこで、湘南新宿ラインへの対抗策として、この「着席保障」のアドバンテージを生かせないかという問題が出てきます。


方向は2つあって、ひとつは特急料金の値下げ(①)、もうひとつは乗車券だけで乗れる一般車両を併結することです(②)。

順に得失をみていきましょう。


まず、①の方向に関してですが、近鉄の南大阪線・吉野線系統の特急が行っているように、江ノ島線系統について特急料金を400円の均一料金とする方法があります。

しかし、現在の「えのしま」の利用率に鑑みると、こちらの方向はかえって料金収入を減らすだけで、企業としての小田急にはプラスにならない結果になってしまう心配もあります。

では②の方向ならいいのか。この方向は、25年前の昭和60(1985)年に南海の特急「サザン」で最初に実現され、一般車(通勤車)を併結し、一般車に乗車の場合特急料金不要というもので、着席需要と料金不要の速達需要を両立させるものとして注目されました。後に、名鉄でも同じような方式で、指定席車と一般車を併結するやり方をとっています。

問題は小田急がこのような方法を取れるかですが、車両面では通勤車とEXE又はMSEに併結対応改造を施すだけで実現できますから、あまり問題はありません。

それよりも、この方式の大きな問題は、それまで「全車指定席」としてきたロマンスカーのステータスやブランドイメージが地に落ちるのではないかという懸念です。「小田急ロマンスカー」といえばそれ自体ひとつのブランドですから、そのブランドをある意味で「安売り」することになってしまわないのか。その点が懸念材料となると思われます。

そうなるとしばらく「えのしま」は現状維持が続くのでしょうが、何らかの動きがあってもおかしくないと思います。


3 最後に


ロマンスカーはSE車以来、いやそれ以前の1910形や1700形のころからずっと、スピードと高品質なサービスを売りにしてきました。現在は「新宿-小田原60分」というのは過密ダイヤもありできない相談になってしまいましたが、それでも居住性のよさや行き届いたサービスなどは依然健在です。それが現在の、ロマンスカーに対する(愛好家ではなく)世間一般の評価につながっているのでしょう。


長らくの連載にお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

2010年の連載記事は今回で終了ですが、来年2011年も企画を考えておりますので、どうぞお楽しみにm(__)m


-完-