2007年イチオシの本―「男の子の脳、女の子の脳」再び | 非常勤講師はつらいよ―私学非正規教員の本音と生活向上作戦

2007年イチオシの本―「男の子の脳、女の子の脳」再び

ブログネタ:2007年のベスト本 参加中

 9月のクチコミ「秋の夜長におススメな本 」として紹介したものと被って恐縮ですが、今年はこの1冊しか読んでいないものであせるしかし、本など全くといっていいほど読まない自分が、今年は興味をもって読んだものがあるだけでも快挙であります。(^_^;
タイトルにもあるように「男の子の脳、女の子の脳 」という本です。前回の紹介の際には飛ばし読みしていた段階でしたが、その後、通して読みました。その書評は改めて書こうと思っていたので、この機会にする事にします。

 私が大学時代、ホルモンを専門としておられる先生の授業で「脳の性差」に少し触れられていました。その時は、ホルモンの影響にもよるような事を聞いた記憶があるのですが、この本によると、既に遺伝的に組み込まれているものだという。つまり、男女の脳には、それぞれY染色体・X染色体によってコードされたタンパク質がそれぞれ豊富に存在するとの報告があるとの事。

目の網膜の構造にも性差があるので、好みの色や得意な質問(女の子は「これは何ですか?」が得意で、男の子は「これはどこにありますか?」が得意)、その他様々な嗜好も異なるのです。
その他、空間移動をする際や感情の処理なども違ってくるそうです。

 そして、こうした脳の違いによる行動や学び方の違いに移っていきます。
本書については夏にも「高校生水死と男の子のリスク 」の中で触れましたが、男の子は危険な事をしたがる(スリルを味わうのが好き)との事です。

友情に関する男女差については、主に以下のような事が書かれています。かなり納得。得意げ
男の子はけんかをよくするが、その後にはもっと仲良くなる。これに対し、
 女の子は滅多にけんかしない反面、一度すると関係の修復が難しい。
男の子の関係の中心はゲームや活動であるのに対し、
 女の子は会話が友情の中心となる。
③ストレスがかかった時、女の子はより同性からの支援を得ようとするが、
 男の子は一人になりたがる。

学び方」の章では、
幾何学の男女別教え方の例(これにはあまり賛同出来なかったのですが)、
読書の違い(男の子はノンフィクションを好み、女の子はフィクションを好む)などが紹介されていますが、
驚いたのは、ほどほどのストレス(制限時間など)は、男の子は成績を上げるのに対し、女の子では成績を下げる(思うように力が発揮出来ない)との事。
この影響は、大人では小さくなっていくそうですが、しかし考えてみたら思い当たるふしがあるかも・・・女って損ですね。。

 前回 も書いたように、の子と女の子とでは脳の成長過程も異なるため、大人よりも子供の方が性差が大きいです。しかし、親や教師達はその違いを知らないため、男の子も女の子も損害を被ってきた。
アメリカでは、子供達が「病人」として扱われ、薬を服用させられている現実があるそうです(そうした実例も紹介されている)。
このような悲劇を回避するためには男女別の教育が必要と、アメリカでは男子校・女子校や(共学から)別学組織に切り替えた学校で、男女とも成績が上がったり、より自分らしくいられるとの好結果がもたらされています。あと、女子生徒の望まない妊娠も減ったという報告もあります。
かつては、男の子も女の子も、世代を超えた同性だけのコミュニティーから学び取る事も多く、それによって社会化されてきた。しかし「男女平等」の下そういう機会が失われた事で、大切なものが失われている。
今もう一度、男女の「違い」を認識し、それぞれに適した形で子供達を育む事が必要なのでは、と結論づけられています。

 なお、この本の原著は「Why Gender Matters 」というもので、日本語版の方はアメリカ特有の事情(薬物・性・同性愛など)は削除されたり、そのごく一部が別の章に組み込まれたりしています。

 自身の経験から女の子女の子の指導はツボが分かるものの、男の子男の子については未知であった自分には、彼らを知る一助になったと共に、女子についても再認識させられ、ものすごく勉強になった一冊でした。本


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