「月に囚われた男」★映画のMIKATA【⑨】ダンカン・ジョーン監督★映画をMITAKA… | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

◆作品データ

上映時間- 97分/ 製作国- イギリス/公開情報 -ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/初公開-10年4月10日/

■オフィーシャルサイト

http://bd-dvd.sonypictures.jp/moon-otoko/

◆スタッフ

監督: リチャード・ブルックス/ 製作: リチャード・ブルックス/原作: トルーマン・カポーティ/脚本: リチャード・ブルックス/撮影: コンラッド・L・ホール/音楽: クインシー・ジョーンズ/

◆キャスト
ロバート・ブレイク ペリー・スミス /スコット・ウィルソン ディック・ヒコック/ジョン・フォーサイス アルヴィン/ポール・スチュワート ジェンセン/ジェフ・コーリイ Mr.ヒコック/ジェームズ・フラヴィン クラレンス/ジェラルド・S・オローリン ハロルド・ナイ/ジョン・ギャローデット ロイ・チャーチ/チャールズ・マックグロー テックス・スミス/ウィル・ギア/ジョン・マクライアム/レイモンド・ハットン/


流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・


2010年の「積み残し特選映画」の第二弾は、「月に囚われた男」です


「月」は未だに人類の夢の対象なんでしょうか…?宇宙を舞台にした映画は、月と宇宙への探査が、莫大なお金がかかるのと、月への探査ロケット打ち上げや、月面探索が、もはや国家間の科学技術の開発競争の勝利感も意義も伴わなくなったので、月からより遠くの金星や火星にさらに探査の触手が伸びています。「月」はだから、人類の夢の対象ではなくなった…!


では、人類にとって「月」とは何なのでしょうか…?宇宙への無限の夢と人間の科学技術の限界を広げる叡智の段階から、月はあたかも第二の「地球」のように、鉱物資源開発の惑星であり、「宇宙」はもはや、地球と人類の発生の秘密を探るための、宇宙の起原探求につながり、さらに宇宙空間の軌道を飛ぶ衛星が、地球上の情報通信衛星に利用されるやら、衛星を軍事目的に利用され、宇宙衛星が攻撃衛星に計画されたり、とうとう「宇宙」は、ロケットでの遊覧飛行を売る観光資源になりました。「月」や「宇宙」空間は、もはや人類の夢の対象ではなくて実用段階に入っています。


よって、なかなか映画化の魅力的なストーリは見つからなくなっています。昨年2010年も、宇宙を舞台とした映画も少なかったです。僅かに「スタートレック」(2009年5月29日公開)やアニメとはいえ宇宙の映画と言える「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010年12月1日)などは、ついこの前に上映されたばかりの新作映画です。


そんな時代に公開された映画「月に囚われた男」です。面白いならば尚更に注目です。実のところ、「月」という題名を見てやや倦厭していた所もあるので、私も未だに見ていなかったです。ところが意外や意外、面白い。


今まで月と宇宙を舞台にした映画は数多くあります。例えば、火星へ向かって飛び立つ人類史上初の有人火星宇宙船カプリコン・1NASAの国家的陰謀と詐欺に翻弄される宇宙飛行士、政治に利用される宇宙開発を描いた「カプリコン・1」(1977年。ピーター・ハイアムズ監督)は、見事に加熱する宇宙開発競争を皮肉った作品でした。月へ向けて打ち上げられたアポロ13号に予想外の突発的な爆発事故が発生した。宇宙船と飛行士に絶望的な危機がのしかかるー。NASAの管制センターは、乗組員を無事地球に帰還させるために、子供のパズルを解くような科学技術の難問が突きつけられる。「アポロ13」(1995年。ロン・ハワード監督 )は、あたかも古代ギリシャ哲学者たちのように「自然」と向き合うNASAの「科学」を純粋に楽しめました。


その外、ざっと私の記憶をかき混ぜて探してみると、「2001年宇宙の旅」(1968年。スタンリー・キューブリック監督)も、「スターウォーズ」(1977年。ジョージ・ルーカス監督)も、「エイリアン」(1979年。リドリー・スコット監督 )も、「未知との遭遇」(1977年。スティーヴン・スピルバーグ監督 )も、「インデペンデンス・デイ」(1996年。ローランド・エメリッヒ監督)も全て、地球外生物と人類との接触のだったり、宇宙人たちとの侵略戦争だったり、宇宙空間に冒険する人類を描いていました。そこにはまだ未知の宇宙がありました。これら「月」と「宇宙」のそうそうたる傑作があるSFf映画なのですから、さらにこれ以上の傑作を新しく公開すると言うのは、余程大胆なストーリで、映像の斬新性を企む監督でなければ、到底敢えて製作できないですね…。


さて、「月に囚われた男」は、500万ドル以下の低予算で製作した映画であることと、デヴィッド・ボウイの息子ダンカン・ジョーンズが初監督となった映画で、話題となった作品でした。そして、遥か彼方の宇宙戦争でも、宇宙人の侵略でも、ロボットと人間が協労する宇宙開発でもなくー、月の資源を採掘する私企業と、クローン人間を利潤追求に悪用する「事件」という、今ここに現実に起こりそうな意外に身近なストーリでした。


「月に囚われた男」のストーリはこうです。


近未来の地球は、エネルギー源が枯渇し月面での採掘に頼っていた。地球のエネルギー源に必要な鉱物を採掘するため、月の基地に滞在中のサム(サム・ロックウェル)は、「LUNAインダストリー」と3年間の契約で一人もくもくとロボットを相手に作業していました。月にたった一人で滞在していた彼は、ある日、妻の幻影を見ると言う奇妙な出来事に遭遇する。地球との直接通信は許されず、話し相手は1台の人工知能コンピュータ(「アメリカン・ビューティー」でアカデミー主演賞を受賞したケヴィン・スペイシーが声で出演。)だけでした。今の彼の楽しみは、2週間を残すだけになった任務終了と、地球への帰還の日でした。


船外作業をしていた時に、サムは採掘車両と接触して負傷する。意識を失った彼を救助したのは、サムと同じ顔をした人間、遺伝子によって人工的に製造された「クローン人間」サムであった。クローン人間のサムは、サムと同じ顔と身体と心と言葉と意識を持つ。サムがクローン人間サムと遭遇したときから、「LUNAインダストリー」への疑問が始る。


サムは会社が秘密裏に複製を製造していたクローン人間サムに、この企業「悪」を暴いてくれることを託し、自分は月に残り彼を地球に帰還させる。やがて、クローン人間サムは、地球で「LUNAインダストリー」を告発する…。


「月に囚われた男」は、月を舞台にしていながら遺伝子操作やクローン人間というテーマを映像化しています。これがこの映画の斬新さではないだろうか。


敢えて2010年の「特選映画ベスト16」にさらに1本追加させてください。

1)「最後の忠臣蔵」 (杉田成道監督)。

2)「武士の家計簿」 (森田芳光監督)。

3)「 君が踊る、夏」 (香月秀之 監督)。

4)「悪人」       (李相日監督) 。

5)「ゴールデンスランバー」(中村義洋監督)。

6)「おとうと」(山田洋次 監督)。


7)「ノルウェイの森」(トラン・アン・ユン監督)

8)「トランスポータ3」 (オリヴィエ・メガトン監督)。

9)「ミレニアム・ ドラゴン・タトゥーの女」「ミレニアム2・火と戯れる女」    「ミレニアム3・ 眠れる女と狂卓の騎士」

10)「ソルト」 (フィリップ・ノイス監督)。

11)「シャッターアイランド」 (マーティン・スコセッシ監督)。

12)「シャーロックホームズ」 (ガイ・リッチー監督)。

13)「セックス&シティ」( マイケル・パトリック・キング 監督)。

14)「しあわせの隠れ場所」(ジョン・リー・ハンコック 監督)。

15)「インビクタス」 (クリントイーストウッド監督)。

16)「オーケストラ」(ラデュ・ミヘイレアニュ監督)。

17)「月に囚われた男」(ダンカン・ジョーン監督)


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