清吉が寺に行くと、既に八重が待っていた。
清吉は、八重から事の次第を聞かされた。
既に清吉は知っていた事であったが、八重様の胸の内を想像すると辛かった。
意外なことに、八重の表情は穏やかである。
それは、藤千代が笑っていた昨夜の夢の話である。
これはきっと、良き知らせであり、我々の事を守ってくれるはずと、八重はその様に解釈していた。
その為八重は、大杉達の様子を調べて清吉に報告すると言ってきた。
清吉は、逆に気を引き締めた。
長年の勘である。
人事を尽くさねば、天は味方にならない事を十二分に知っていた。
今は何もしなければ、八重は安全である。
連中は、自分しか目を向けていない。
八重に、自重する様に懇願した。
八重は清吉の身が心配であったが、言われる通りにすると約束した。
清吉は、密かに八重を邸宅まで送り届け、城へ駆けて行った。
先ずやるべきことは、藤丸の身を守ることである。