研究者として恥じないのか | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 世界を騒がせた東大の森口さんに関するニュースです。以下に転載しておきます。

 東大「森口論文の14本が不正」と認定 

 東京大学は9月20日、元同大付属病院特任研究員の森口尚史氏がiPS細胞の臨床応用を実施したと2012年10月に発表していた問題で、森口氏が同大在籍中にかかわった68本の論文等のうち、14論文に不正が認められたとの調査結果を公表した。うち5本は既に撤回されており、その他の論文等についても撤回などの対応をする方針。

 森口氏は、2012年10月19日付けで懲戒解雇されている。その他の関係者についても今後、「厳正に対処する」とし、特に医学部付属病院の助教の三原誠氏は、6論文の共著者であり、森口氏の公的研究費の管理監督者として、森口氏の不正行為を看過した責任があると認定している。

 森口氏は米国の学会で2012年10月10日、iPS細胞から誘導した心筋細胞移植を、米ハーバード大学の関連病院で、ヒトで行ったと発表。しかし、直後に同大は、正規の手続きを経た臨床応用が行われたことを否定し、虚偽の発表だとして問題視された。

 東大ではその後、大学本部に科学研究行動規範委員会を設置し、調査を開始した。対象としたのは、森口氏が、東大の先端科学技術研究センターおよび同大付属病院に1999年8月から2012年10月までの間に在籍し、発表した論文や公的研究費の実施状況報告書など計68本。

 その結果、14本の論文については、生データや実験ノートなどを要求したが、森口氏は提出しなかったため、「森口氏の不正行為の存在を全て確認することができなかった」とし、説明責任を果たさないことは、「不正行為の証拠隠滅または立証妨害」に当たると認定した。うち2012年7月のScientific Reports誌の1本の論文の図は、Advanced Fertility Center of Chicagoのホームページから盗用した図であるとした。

 東大では今後、研究における不正行為の再発防止に向け、「科学研究行動規範リーフレット」を改訂するほか、研修会を開催するなどして、研究倫理に関する周知徹底を図る方針。



 以下は私のコメントです。

 データの不正を行ってまで学術論文を発表し、森口さんは研究者として恥じないのであろうか?少なくとも研究者は実験の結果あらわれたデータに対しては誠実であってほしいと思います。

 私は大学院の頃を除き学術研究からは遠ざかっていますが、大学院生の頃に医学博士を目指して基礎研究を行っていた頃に、指導医からは「データの不正や改ざんはいけない。こんなところで魂を売ってはダメだ。」と厳しくいわれ続けていました。ですから私はデータが出るまでに時間がかかりましたが不正は行っていません。だからこそやっと期待通りのデータが示せた時の嬉しさは格別なものでした。

 この事件の前後から多くの大学で学術論文の不正問題が明らかになっています。教職者の解雇や博士号の取り消しにつながっているものもありますが当然と思います。でもこれってきっと氷山の一角ではないでしょうか。もちろん森口さんほどの大規模な不正は多くないと思いますが、医学部を初めとする理系学部での学位論文クラスだと、きっとデータの改ざんや不正はそれなりに行われている可能性があると思います。

 そうした人達はそんな形で手にした学位つまりは博士号で満足なのでしょうか。指導者もこうした学術論文を自身の業績に加えていくことでよいのでしょうか。これらの不正を逐一暴くことは決して容易ではないでしょう。だからこそ職業としての研究者はもちろんのこと、仮に学位を目指すためだけの研究者のはしくれであったとしても、データの不正や改ざんはなく正々堂々と勝負して欲しいものです。



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