風疹接種後の妊娠、中絶不要 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 日本産婦人科医会のホームページに「妊娠に気付かずに風疹含有ワクチンを接種してしまった時の対応」をまとめた資料が掲載されています。

 聞くところによると、妊婦さん自身ならいざ知らず、産婦人科医や小児科医でも、妊娠に気付かずに風疹含有ワクチンを接種してしまった時に人工妊娠中絶を勧めるケースが少なくないようです。勉強不足から来る無知のために図らずも人工妊娠中絶が選択されてしまうことがないように啓蒙するためのものなのでしょう。

 以下に転載しておきます。次のリンクからでもみられます。
http://www.jaog.or.jp/medical/document/rubella_vaccine.pdf

 風疹の患者数が急増し、全国に拡大しています。風疹ウイルスの感染を予防することを目的に、風疹含有ワクチン(麻しん風しん混合ワクチン、風しんワクチン)の接種を希望する女性が増えていますが、妊娠に気付かずにワクチンを接種した場合の対応を記載いたしました。

 万が一、ワクチン接種した後に妊娠が分かった場合でも、世界的にみてもこれまでにワクチンによる先天性風疹症候群の発生報告はなく、その可能性は否定されているわけではありませんが、人工中絶等を考慮する必要はないと考えられます。 (風疹予防接種に関するガイドライン‐ 任意接種を実施する医師のために –国立感染 症研究所感染症情報センター 2005 年 8 月 22 日 http://www.nih.go.jp/niid/images/idsc/disease/rubella/041119/041119guide.pdf より 抜粋、11 頁)

 また、『風しんワクチン接種後に妊娠が判明したり、避妊に失敗したりしても世界的 にこれまで風疹ワクチンによる先天性風疹症候群の報告はない』とすでに診療ガイドラ インでも述べられているところです。(産婦人科診療ガイドライン-産科編 2011、248 頁解説末尾参照)

 なお、麻しん風しん混合ワクチンならびに風しんワクチン添付文書には 『妊娠可能な婦人においては、あらかじめ約1カ月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2カ月間は妊娠しないように注意させる。』とされておりますので接種前の説明、指導は大切です。 一方、男性の場合、ワクチン接種後、避妊の必要性はありません。

 妊娠していることを知らずに風しん含有ワクチンの接種を行った症例、ならびにワクチン 接種後 30 日以内に妊娠した症例、合計 2,292 人について検討したところ、
–ワクチン接種後30 日以内の風疹抗体測定でIgM抗体陰性、IgG抗体陽性であった女性(接種時、すでに風疹ウイルスに免疫があったと考えられる例)が316人(13.8%)
–IgM 抗体陽性であった女性(接種時、風疹ウイルスに感受性であったと考えられる例)が 288 人(12.6%)
–ワクチン接種後30日以上経過してからの抗体測定で IgM抗体陰性、IgG抗体陽性であった女性(接種時、すでに風疹ウイルスに免疫があったか、感受性であったか判断のつか ない例)が1576 人(68.8%)であった。
–ワクチン接種後 IgM 抗体が陽性であった妊婦(接種時、風疹ウイルスに感受性であったと 考えられる例)の 75% が、妊娠 5 週以内の接種であったとしているが、先天性風疹症候群の児の出生はみられなかった。
- しかし、妊婦へのワクチン接種は避けることと、風疹ワクチン接種後 1 ヶ月間の受胎は避けるように推奨されている。



 今回のような風疹の大流行が見られる前から、このブログでは風疹についての話題、そしてワクチン接種についての話題を何度か取りあげてきました。ですから、私自身からすれば、今回の様な内容については当然ながらすでに周知の事実だったのではないかと思うのですが、そうではなかったのですね。

 以下にリンクをつけておきます。
http://ameblo.jp/sanfujin/entry-10777640300.html
http://ameblo.jp/sanfujin/entry-10778449366.html
http://ameblo.jp/sanfujin/entry-11398010712.html
http://ameblo.jp/sanfujin/entry-11466409684.html
http://ameblo.jp/sanfujin/entry-11479954714.html

 勤務医であっても開業医であっても同じなのですが、正しい知識を持って診療にあたることの大切さを再認識させられます。そして医療に関しては素人である多くの妊婦さんに対して、正しい啓蒙活動を行っていけるようにしなくてはなりませんね。

 というわけで、今回の内容も是非とも、周りにいる妊婦さんに教えてあげてください。


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