昨年(過去5年間で最高)からの風疹の流行に伴い、昨年は5例、今年に入ってすでに1例の先天性風疹症候群の発症が報告されています。そして、風疹は今後数年は増加傾向で推移することが予測されています。ちなみに今年は昨年比の9倍に達するほど流行しています。
これを受けて日本産科婦人科学会は2月1日に、妊婦の夫に風疹ワクチンの接種を勧める通知文を発表しました。
以下に要点を示しておきます。
1、先天性風疹症候群が昨年5人、今年すでに1人発生しました。(極めて重大な問題です)
2、昨年は風疹がこの5年間で最大の流行をみせており、さらに今年は昨年の9倍、しかもその患者の8割が男性です。
3、先天性風疹症候群の発生経路からみて夫からが多いです。したがって、夫へのワクチン接種が予防対策としては最善です。
4、もちろん対象妊婦は風疹HI抗体陰性あるいは16倍以下です。(今回の通知ではHI法ができない地域があるために低抗体価の数値を明示できませんでした。)
5、4の妊婦は産後にワクチン接種を行います。
6、CRSは届出感染症であることを小児科医で再確認します。(知らない小児科医がいます)
7、この数年の風疹流行の発端は、風疹抗体未保有の20代-40代男性が風疹予防策を行っていない風疹流行地区(インド・ベトナム・フィリッピン・パプアニューギニアなど)に旅行あるいは出張して風疹感染し、帰国後同僚、家族に感染し流行となっています。したがって、このような地域に渡航する前に風疹ワクチンを接種します。
以下は私のコメントです。
一戦で周産期医療に携わる産婦人科医・小児科医にとって、これまで風疹の母児感染を予防するために妊婦の夫に予防接種をするという発想は乏しかったように思います。
妊娠初期に風疹抗体の有無を調べ、抗体のない妊婦には人混みや保育園・学校などでの風疹感染に注意を促してきました。そして産後には風疹ワクチン接種を勧めてきました。しかし、夫に関しては抗体検査や予防接種を含めてほぼノータッチというのが実情でした。意外な盲点であったと思います。
母児感染予防のために妊婦の夫に予防接種を勧めるという勧告は驚きですが、風疹の母児感染の成立を媒介しているのが夫である可能性が高いとすれば、これは極めて効果が高い予防方法でしょう。そしてこれが本来の姿であり、もっと早くから気づかれ対応されてもよかったのかもしれません。
妊婦の夫への風疹ワクチン接種は、明日からでも役立つ大切な知識となるかもしれません。私自身も早速実行していきたいと思っています。
興味があれば以前の記事も参考にしてみてください。
先天性風疹症候群に関する記事はhttp://ameblo.jp/sanfujin/entry-10777582661.htmlです。
風疹ワクチン接種のすすめに関する記事はhttp://ameblo.jp/sanfujin/entry-10777640300.htmlです。
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