妊娠と腎疾患 Part3 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

5、妊婦は腎盂腎炎になる危険性が高いか?
 危険性は高くなります。妊娠時の黄体ホルモンの作用や妊娠子宮による圧迫により尿管壁・腎盂の弛緩拡大が起こり、膀胱尿管逆流現象により腎盂腎炎を起こしやすくなります。

 腎盂腎炎は全妊娠のおよそ1~2%に起こり、妊娠中の非産科的な入院理由として最も多いものです。また、母体の疾病率の増加や周産期予後不良転帰のリスク因子でもあります。妊婦さんは無症候性細菌尿(最も多いのは大腸菌E.Coliです)になるリスクが高く、無治療の場合にはその約40%が症候性の尿路感染症・膀胱炎・腎盂腎炎になります。

 全妊婦さんに対する無症候性細菌尿のスクリーニング検査および治療は、症候性の尿路感染症のリスクを70%低下させるため、初回の妊婦健診でルーチンに行われるべきです。


6、妊娠は尿路結石の発生率を増加させるか?
 増加しないといわれています。尿路結石症は2000例の妊娠に対して1例以下の割合で発生し、妊娠によりその発生率が増加しているわけではありません。診断は尿の顕微鏡検査・超音波検査などで行われます。もし尿路結石症と診断された場合には、副甲状腺機能亢進症の評価のために血清リンとカルシウムの測定が望まれます。


 今回の記事は産婦人科シークレットの内容を参考にして記載しておりますが、内容はオリジナルです。
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