朝10時。
タヤマ実践カレッジの生徒たちが、笑顔でホテルまで迎えにきてくれた。
バイクの後ろに乗って、プノンペンの市内観光に出発する。
プノンペンの混雑した道路で、車やトゥクトゥクの間を縫って走るバイクの後ろに乗るのは結構怖くて、朝の眠気も吹き飛ぶ。
風は熱い、でこぼこのアスファルトが太陽を照り返しているかと思えば、急にくるスコールであっという間にびしょ濡れだ。
日本のODAで造られたという日本橋を渡ってメコン川を越えると、湿地が広がり、牛が草を食べ、小さな屋台が並び、鶏がヒヨコを連れて駆け回る田舎道が続く。
バナナの木の小道を抜けた先のレストランで、昼間からまるで大宴会のような盛り上がりに誰もが打ち解けた。
彼らは本当に熱心に様々なところを案内してくれた。
この日のためにインターネットで色々調べてきたのだと嬉しそうに話してくれたあの彼の解説は、きっとガイドも顔負けだろう。
こうして1日中一緒にいると、本当に色々な話ができる。学校のこと、家族の話、日本の好きなところ、カンボジアの文化や歴史、勉強のこと、将来のこと。
お互い知らないことばかり。次々と飛び交う話題に、わたしたちはいちいち驚き、感心し、考えさせられては、また話が弾む。
たくさん話してたくさん笑って、遊び疲れた帰り道、バイクの後ろで新しい友達にしがみつきながら、わたしはこのXprojectについて考えた。
彼は最後にこう言った、
「数日しか一緒にいられなくても、わたしたちの心は繋がります。友達であり、仲間です。カンボジアでは、仲間は家族と一緒です。」
わたしも、彼らも、自分の国のこと、相手の国のことについてまだまだ知らないことばかり。わたしたち日本人が彼らに何を見せてあげられるかではない。わたしたちもカンボジアで学ぶことばかりだった。
それでも、こうして日本の未来、カンボジアの未来について、一緒に真剣に考えてくれる仲間がこんなにもいるのだ。
どうやらわたしは、自分たちがやろうとしているプロジェクトについて必要以上に難しく考えすぎてしまっていたようだ。
そんなことに気が付いたのは、プノンペンの混雑した道路で、車やトゥクトゥクの間を縫って走るバイクの後ろに乗るのにも大分慣れてきたころだ。
熱い風も、夜の街を濡らす雨に打たれるのも気持ちがいい。
バイクを降りるのが名残惜しかったが、わたしのありがとうに笑顔で応えた彼はまた、夜のプノンペンの街に消えた。
【文責:PM局1年 湯本 愛】