“インド人はよく人を騙す”
そんな偏見を持ちながら私はインドの地に降り立った。
騙されるから、注意しなければ。
お金を巻き上げられるから、用心深くいかなければ。
そんな風に思いながら最初の町、デリーを過ごしていた。
9月6日
アーグラにて。
この日私たちはアーグラ中心地から少し離れたところにあるファテープルスィークリーという遺跡を訪れた。
そこでは子供たちがポストカードを売っていたり、飴やチョコ、ガムをちょうだいとしきりに言ってくる。
また、中を案内してくれた人も、最終的には小さな像を売りつけてくる。
ゆっくり遺跡を見ることができず疲れてしまった私ともう一人の友達は、石畳に腰かけ、このあとどうするか、地図を見ながら話し合っていた。
すると突然後ろから、インド人に話しかけられた。
「今いるのはここだよ」
「ここはきれいだからぜひ行った方がいいよ」
「ここは無料でここは有料、260ルピーかかるよ」
「この門を出て左の方向に歩けばすぐ着くよ」
など、その地図を指さしながら丁寧に教えてくれた。
その後少し会話をしたあと、私たちはおすすめされた有料の方の遺跡へ行こうと、腰をあげた。
すると彼が、
「有料のところに行く前に、ここのモスクを案内してあげるよ」
と言ってくれた。
しかし正直なところ、その前に“案内”という言葉に引き付けられて少し嫌な思いをしていたので、私たちは警戒した。
またなにか売りつけられるのではないだろうか。。。
だが、そんな私たちの不安はお構いなしにガイドは始まった。
簡単な英語で、私たちにわかるように何度も説明してくれた。
時折、「picture,ok」とすすめてくれて、とても親切だった。
しかしそのときの私たちにとってはその親切さが怖かった。
いつお金を請求されるかびくびくしていた。
「私たちは、そんなにお金を持っていないの。だから、お金払えないよ。」
私はおそるおそる、しかしはっきりと伝えた。
その瞬間、彼は少し寂しそうな顔をした。
「僕はただボランティアで君たちを案内しているんだよ。お金なんかほしくないよ。」
私はとても申し訳ない気持ちになった。
インド人=騙す、と思っている自分がとても恥ずかしくなった。
彼はとても誠実だった。
別れるとき、私たちは彼に飴をプレゼントした。
「親切に案内してくれてどうもありがとう。とても嬉しかったよ。」
彼ははにかんで笑った。
【文責:渉外局1年 沼澤綾子】