同じ「人」 | 学生団体S.A.L. Official blog

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この夏、私は初めてインドという国に足を踏み入れた。


夜中にデリーのホテルに到着し、翌朝ロビーへ行くとドアの向こうから、赤いサリーを身にまとった母親が赤ん坊を抱き、半裸の男の子を連れて私たちに向かって物乞いをしていた。私は、見てはいけないものを見てしまったかのようにハッと顔を背けてしまった。もちろん、そのような体験をする覚悟の上でインドを訪れたのだが、あまりに唐突で戸惑いを隠せず、これからどんな日々が待ち受けているのかと、少し不安を覚えた。


物乞いや物売りに対してどう接するべきなのか。


インドにいる間、私はずっとこのことを考えていた。道行く人を見ていると、彼らに見向きもせず歩いていく人もいれば、胸を痛めてお金を渡す人もいる。どちらが正しいかなどは一概には言えないと思う。一見前者は冷たい人のように感じるかもしれないが、その人なりの考えがあっての行動なのかもしれない。私はというと、純粋に物売りが売っているものを欲しいと感じたら買い、それ以外の時は持っていたキャンディーをあげたり、質問をしてコミュニケーションをとって楽しんだりしていた。


アーグラにあるファテープル・スィークリーを訪れた時、私は一人の12歳の少年と出会った。彼は、この世界遺産を訪れる観光客をターゲットに物売りをする多くの子どもたちの中の一人だ。

「インドの名所のポストカード、一冊50ルピー」

ポストカードをパラパラめくって私に買うようにすすめる。私はすっかり言い慣れた断りの言葉を返す。数回同じやりとりをして、私が街を見渡せる階段に腰を下ろすと彼も隣に座った。でも話しかけてくる様子はない。私に売るのは諦めたようだ。私は「毎日働いているの?」と尋ねた。それに対して遠くを見ながら「そうだよ、毎日朝からずっとね。」と答えた彼の表情が今も私の目の裏に焼き付いている。彼の瞳の奥に影のようなものを見た気がした。

それからは話題を変えて私たちは会話を楽しんだ。私はできるだけ優しく話し、笑顔を見せると、彼も素敵な笑顔で返してくれた。


結果的にはお金を物乞いや物売りに渡さないにしても、同じ人同士なのだから冷たくあたることだけは避けたい、あまりに残酷だと思った。また逆に、こちらが温かい気持ちで接すれば、その人の心に一瞬でもあかりを灯せるかもしれない。今はまずそれを目指すことから始めようと、彼と話しながら私は心に決めた。



ブッタガヤでお寺に向かって歩いていると、花売りの男の子が、買わないといった私に

「でも今からお寺に行くんだよね?だったらこれを。」

と一輪の白い花をくれた。

そのとき私の心に大きなあかりが灯った。



[文責:イベント局1年 遠藤佳]