太陽と月 / カルペディエム | 安眠妨害水族館

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太陽と月/カルペディエム


1. 太陽の花
2. 雨
3. 小さい羽
4. 命の跡
5. 恋文
6. 蝶の贈り物
7. 世界樹
8. 罪と罰
9. 蕾
10. 月の種

カルペディエムの2ndフルアルバム。
2014年11月に会場限定でリリース、12月からは一部店舗での流通もスタートしています。

前作よりも、やや引き締まった全10曲。
現在入手不可となっている限定シングル5曲もリテイクされ、聴き逃していた新規ファンへの救済策としても機能しそうな一枚になりました。
逆に言えば、既存曲が多いということでもあるのだけれど、アルバム曲も丁寧に作り込まれている印象で、トータル的な価値観を損なう内容にはなっていませんのでご安心を。

斬新なことをやっているわけではなく、流行をなぞっているわけでもなく、ひたすらやりたい音楽に打ち込んでいくスタイル。
その結果、世界観重視の歌モノが多くなっているのだけれど、音楽的な振れ幅を持ったうえで表現を続けているからか、マンネリ感はありません。

序章的なイメージを与えつつ、しっかり壮大さを演出していく「太陽の花」でスタートし、疾走感のある「雨」、耽美的、白系的なミディアムナンバーとなった「小さな羽」へと続いていく。
この3曲が実に象徴的だと思っているのだが、音楽的なアプローチはバラバラ。
しかしながら、カルペディエムのサウンドであるという主張が、そのどれからも伝わってくるのである。
"次にどんな曲が来るかわからない"というワクワク感と、すっと体に入っていく耳馴染みの良さとを両立している本作の出足の良さ。
チャレンジングではあるが、成功するとこうも鮮やかなのか、と驚かされます。

中盤で好みだったのは、「恋文」。
ダンサブルなリズムに対し、メロディは哀愁を帯びている。
淡々としている展開に対し、感情は徐々に高まっていく。
これまた意外性のあるサウンドではあったのだが、しっかりと彼らの色に染め上げていますね。
直後に、初期の代表曲である「蝶の贈り物」が畳み込まれる構成もたまらないな。

クライマックスは「罪と罰」、「蕾」の流れだろう。
本作中でもっとも激しく、ザクザクと切れ込むようなロックサウンドを奏でる「罪と罰」でテンションを高めてから、泣きのギターが名曲感を煽るバラード、「蕾」に繋げるのは、もはや反則。
感情の抑揚をメロディそのもので表現していると言いますか、とにかく心を揺さぶられ、涙が滲んでくる美しさ。
適切に伝える語彙がないことを悔やみたくなるほど、このメロディラインがツボなのですよ。

最後に用意された「月の種」も、クローザーとして効いている。
すべてを洗い流すように終わっていく後味の爽快感。
「太陽の花」ではじまり、「月の種」で締めるというギミックも手伝い、シングルで聴いていたときとは違った顔に見えてくるから面白いものです。

ドラマティックな構成だった「Carpe diem」と比較して、作品全体でのメリハリはないのだが、だからこそ全力投球感がある。
ひとつひとつが濃密で、まさに捨て曲なし。
前作が、"ビギナーズラック"ではなかったことを示しました。
今年はもっと飛躍してほしいなぁ。

<過去のカルペディエム(Carpe diem)に関するレビュー>

罪と罰
月の種
手招く影と君
Carpe diem
M
約束
蝶の贈り物