Switch / STEREO.C.K | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

Switch (限定盤)/STEREO.C.K

¥3,000
Amazon.co.jp

1. Grow&Crow
2. Virtual
3. Chameleon
4. Station
5. Squall
6. Vortex

ex-蜉蝣のBa.kazuさん、Gt.ユアナさんを中心に結成されたSTEREO.C.K。
本作は、初の全国流通音源となる1stミニアルバムです。

"シンプルでストレートなロック"が、活動開始時からのテーマとのこと。
確かに、ビートロック、ビートパンクがメインに据えられていて、同期を使わず生音だけでアレンジされる楽曲構成は、彼らの青春を彩ったのであろう90年代V系シーンの香りを漂わせています。

アルバムのスタートは、リードトラックとなる「Grow&Crow」。
彼らの新たな代表曲となるべくナンバーで、パンキッシュなリズムに重なる、歯切れの良いメロディラインが気持ち良い。
ライブでの盛り上がりが目に浮かぶようです。
リバースシンバルからルートを刻むベースに繋がるイントロの段階で懐かしさが全開。
これだと、ついついボーカルは荒々しくなってしまいそうなところですが、勢いを殺さず、丁寧さも残すVo.瀬音さんの歌唱センスは素晴らしいな。

「Virtual」は、メンバーがLUNA SEAを意識していると公言しているダークなビートロック。
王道すぎて、最近は逆に聞かなくなったフレーズが目白押しで、個性化を狙わず、素直に好きな音楽をやってやろうというスタイルが、もっともビビッドに反映された楽曲と言えるでしょう。
懐かしいだけでなく、現代のサウンドメイクで再現してくれるのもありがたいですね。
続く「Chameleon」は、2分半に凝縮されたファストチューン。
とにかく速いのですが、激しさよりも、ポップでキャッチーなメロディが前に出ているのが面白い。
疾走感のある楽曲だけで3曲を消化しますが、それぞれタイプが異なるものを持ってきており、ダラダラと1曲を引っ張ることもないため、新鮮さはしっかり維持されています。

アクセントとなるのが、「Station」。
こちらは、80年代をイメージしているようで、レトロな空気感。
なんとなく、哀愁を帯びている。
テンションで引っ張っていくだけでなく、こういう引き出しもあったのか。
1stシングルからの再録となった「Squall」は、ギターソロが書き換えられています。
こちらも、レトロな哀愁テイストを与えつつ、疾走感を取り戻し、メロディアスに駆け抜けていく。
全体的なアレンジに変化はないものの、シングル発表時から化けたものだなぁ。

ラストの「Vortex」は、ツタツタと激しいハードナンバー。
やはり、これもサビでメロディは歌謡曲ライクなのだが、忙しなく刻まれるリズムのせいか、メロディアスなだけでなく、ダークな一面もリスナーに強く与えています。
ラスト、低音に抜けていく歌い方などは、本当にLUNA SEAが好きなのだろう、といったところ。

90年代っぽさを狙うバンドが増えてきたとは言え、意図的にやっているのか、自然体でやっているのかで、だいぶ印象も変わってくる。
彼らの場合は、完全に後者。
青春時代の音楽をストレートに表現しようとした結果、この音楽性となっているわけで、嫌味っぽく聴こえないのが強みかな。
意識していると言っても、構成やフレーズは、きちんとオリジナルに昇華。
当時を知らなくても楽しめる、正当派のヴィジュアル・パンクバンドでもあるのです。

変態的な音楽性の代名詞であった蜉蝣のメンバーが、反動のように素直な音楽を志向しているのも不思議なものだ。
ただし、真逆の方向を向いているようで、時折、蜉蝣を思い起こさせるアグレッシブなフレーズやメロディラインが飛び出してくるあたり、興味深いですよね。
なんだかんだ、染み付いているのか。

そういう意味でも、等身大。
それで、ここまで格好良いものを作れるのだから、伊達にキャリアは積んでいません。

<過去のSTEREO.C.Kに冠するレビュー>
残響