GENESIS / DIAURA | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

GENESIS(DVD付)/DIAURA
¥3,500
Amazon.co.jp

1.a genesis of the end(SE)
2.TERRORS
3.Imperial Core
4.二つの傷跡
5.DEAR RULER
6.禁示録
7.アナザゲイト
8.残月の灯
9.Lost November
10.an Insanity(Re-recording ver)
11.EVER

(クリスタルBOX限定CD)
1.Ms.psycho

独裁をテーマに精力的な活動をしているDIAURAの1stフルアルバム。
11曲入りのCDと、「TERRORS」のクリップを収録したDVDの2枚組が基本仕様。
更に、コアなファン向けに、「Lost November」のクリップやら、Tシャツやら、諸々がセットされたクリスタルBOXが、通販限定で販売されました。

とにかく、なんだろう、このクオリティは。
インディーズの1stという、荒削りな衝動性だけで作り込まれるべき位置づけの作品なはずなのに、もはやメジャー3rdアルバムくらいの完成度。
無難、と言うと、ネガティブなイメージを持たれてしまうおそれがありますが、レビュアー泣かせなくらいに課題が見つからない。

本当に、ヴィジュアル系が好きで、よく研究しているな、と感心するくらいのツボの押さえ方。
どういう曲を書いたらファンが喜ぶか、ここまで緻密に、絶妙に再現するバンドは、他に見たことがありません。
王道な曲については、過去の作品からの延長線上といったところで安心感があるし、では、新鮮味に欠けるマンネリ化したアルバムかと言えば、そうでもない。

例えば、リードトラックの「TERRORS」。
これまでの、90年代王道コテコテ路線に、アクセント的な風味を足す目的で、PIERROTっぽいリズムやメロディを持ってきた。
単体ではパワーが弱いという声もあるようですが、最初に、「らしいけれど、らしくない」楽曲が提示されることで、その後の王道ナンバーたちに対する感覚が、研ぎ澄まされていく印象。
「どうせ、コテコテだろ」という予想を、一度覆して、「いつものDIAURAではないのかもしれない・・・」という、期待半分、不安半分のマインドに聴き手をコントロールしようとするアプローチ。
この心境に持っていった時点で、既に勝負が決まっていると言っても過言ではなく、それがこの楽曲の価値であるのだと思います。

そんな不安定な期待の中で送り出されるのが、「Imperial Core」、「二つの傷跡」というコテコテナンバーなものだから、もう、「これがDIAURAだ!」という昂揚感に満たされるのは必然。
ゾクゾク感のカタルシス。
yo-kaさんの安定したボーカルも、流れるような旋律で盛り上がりを演出するメロディも、解放感に溢れていて、気持ちが良い。
構成としてはコンパクトにまとまっているのに、イメージの広がりは無限大ですね。

中盤で、ゆるめの楽曲や、癖のあるナンバーなどを配置して、アルバム全体の流れに抑揚をつけると、後半は、ラストスパートでひたすら疾走していく。
この曲順についても、非常に王道的です。
ヴィジュアル系のモチーフをふんだんに盛り込んだ「Lost November」、デモテープでのリリースも話題になった「an Insanity」、ラストにぴったりな広がりを見せるメロディアスチューン、「EVER」と、息を吐く暇もないくらいのキラーソングの嵐。
可愛げなく思えてしまうくらい、無駄がありません。

さて、限定生産されたクリスタルBOXには、これまた王道の「Ms.psycho」が収録された特典CDも付属されています。
相変わらずの昂揚感。
ギターと、ベースのフレーズバトルのような間奏が格好良いですね。
パンチ力もあるし、ミディアムナンバーが続く中盤のアクセントとして、これを入れてくれても良かったのにな。

総合的な感想として、成長の段階をすっ飛ばして、早くも完成されてしまったというイメージ。
まだまだ伸びしろがあるのか、このクオリティを維持するに留まるのか、次の展開が読めません。
少なくともこの時点では、恐るべき若手バンドといったところか。
ネクストブレイク最有力候補ですね。

<過去のDIAURAに関するレビュー>
メビウスリング
Beautiful Creature
失翼の聖域