“9” / Alice Nine | 安眠妨害水族館

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“9”(初回限定盤)/Alice Nine
¥3,780
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1. Heavenly Tale
2. the Arc
3. GALLOWS
4. 花霞
5. BLUE FLAME
6. ハロー、ワールド
7. 虹の雪
8. リニア
9. Apocalypse [It's not the end]
10. Heart of Gold
11. すべてへ

Alice Nineの5thアルバム。
タイトルが「“9”」なもんだから、もう9枚目だっけ?と思ってしまいましたが、自らのバンド名からタイトルをつけるだけの自信作といったところでしょうか。

前作「GEMINI」が、抜群のインパクトを誇っていただけに、今作に寄せられる期待は大きかったのですが、しっかりと安定感のある作品を持ってきましたね。

あのクオリティは、偶然ではなく、成長の結果であることを証明した形。

早熟型かと思いきや、ここにきて、ぐっと伸びてきた印象です。


アプローチとしては、プログレ的な試みは控えめになり、ロックナンバーに絞った構成に仕上げている。

出だしは、壮大さのある「Heavenly Tale」からなので、前作の流れを引き継ぐのかと見せかけるのですが、メタリックなフレーズを詰め込んだ「the Arc」、シングルにでも持ってこれそうなハードチューン、「GALLOWS 」と、序盤は勢いを前面に押し出す構成。

じんわりと沁み込む「花霞 」、シングルにもなった「虹の雪」と、アクセントにバラードを挟みつつ、主軸としては、そのハードさを消さないようにソリッドな楽曲を中心にプログラミングされています。


その中で、「BLUE FLAME」、「Heart of Gold」が、統一感を持続しつつ、ポップさ、キャッチーさをもたらしており、シングル曲としての役割を果たしているのが好印象。

また、「ハロー、ワールド 」は、サビではメロディがあるものの、展開の半分以上がインスト+語りという、遊び心たっぷりの楽曲で、中盤、ダレてしまいそうなところに、変化をつけることができている。


そして、最後を締めくくる、「すべてへ」がキラーチューン。

タイトルや、曲順的なイメージから、壮大なバラードを持ってくるのかな、と想像していましたし、実際、導入部分は壮大なバラードの予兆のようなアレンジになっているのですが、それがブラフだったとは。

途中からテンポアップし、鮮やかなメロディアスナンバーに様変わりします。

アルバム全体としてはまとまりがあるも、個の楽曲のインパクトには欠けるところがあったのですが、この曲で、評価がひっくり返ったと言っても、過言ではありません。

それにしても、いつから将さんは、ラクリマTAKAライクなボーカリストになったのでしょう。

ハイトーンも安定しているし、歌い癖も、そんな感じ。

歌唱力が課題だった時期もあるだけに、少なくとも音源では、ネックがひとつ完全に解消されましたね。


演奏についても、同期に頼らずとも主張ができるようになった。

生音が前に出たアレンジが増えたことが、本作のロックテイストの強さと結びついている。

アイドルバンドから、ロックバンドへ。良い進化を遂げているな。


全体的に、インパクトは前作に劣ってしまうものの、継続的に良作を出せたということが重要。

ただ同じことを繰り返しているだけでもないし、まだまだ先があることをうかがわせる。

結成時に「実力<人気」だったことは否定できないので、聴かず嫌いなリスナーも多そうですが、是非、現在のAlice Nineには触れてほしいものです。


<過去のAlice Nine(アリス九號.)に関するレビュー>

GEMINI

絶景色