嘆雨/スィミー
1.嘆雨
金沢バンド、スィミーの会場配布音源。
マイナーバンドの配布モノではありますが、きちんと歌詞カードや盤面デザインもあって、嬉しい限り。
ひたすらに昭和歌謡ロック。
ホタルの「未練」、シドの「私は雨」といった王道の歌謡ロックナンバーをなぞるような、この手の路線ではベタなコード進行だけに、耳に馴染むメロディと、切なさすら感じる哀愁が、ビシビシと押し寄せてきます。
張り裂けんばかりのタイトルコールからスタートするこの楽曲。
Ａメロ、Ｂメロ、サビと切れ間なく流れるような構成が、とてもツボ。
あまりによどみなく進行していくので、サビのインパクトが弱まってしまうかな、とも思ったのですが、完全に杞憂。
抑えの効いた渋さのあるボーカルラインではありますが、しっかり徐々に盛り上がるように展開が工夫されているし、歌い尻でのタメもあって、印象には残りやすい。
特に、最後に畳み掛けるような早口のフレーズを持ってくるあたりは、怒涛のクライマックスといったところで、これが地方バンドの配布音源かよ、と驚かされる仕上がり。
演奏面では、もう少し頑張ってほしい部分も。
途中で簡単なテンポチェンジはあるものの、全体的にはストレート。
後発バンドの難しいところではあるのだけれども、あと一歩、アレンジなり、フレーズなりに個性が欲しい。
ボーカルにディレイをかけるだけの工夫では、物足りないのが本音でもあります。
逆に言えば、原点に立ち返ったような黎明期の昭和歌謡ロックがそこにある。
それだけで、食指が伸びる人はきっといるはず。
ほとんど遠征をしないバンドとのことで、関東にもまだ未上陸ですが、せめて、音源だけでも、手に入りやすくなれば。
全力でおススメしたい期待のバンドなのですが、金沢地区の人としか共有できない現状がもったいないです。
＜過去のスィミーに関するレビュー＞