1.雨にフラレタ
2.ネオンの街
金沢を中心に活動しているスィミーの1stシングル。
まだまだ全国的には無名なバンドながら、個人的に好みである正統派の昭和歌謡系サウンドを展開しています。
"懐メロック"をコンセプトとして提唱し、ノスタルジックで昭和的なメロディを強みとしている彼ら。
本作は、無料配布でのデモ音源を除けば、待望の1stシングルとなります。
じめじめした未練節とマッチした、言葉遊び的なタイトルのつけ方も面白いですね。
強いて例えるならば、音楽的はheidi.に近いのかな。
本格的なムード歌謡を再現するというよりは、相応に疾走感を出したり、どんよりとした重さを持たせ、V系ナイズしていく手法。
歌謡メロディはコアな部分として徹底していますが、ラウドな要素だったり、ミクスチャー的な要素も含まれていたり、現在のシーンで溶け込めるようなスタイリッシュさも持ち合わせています。
「雨にフラレタ」は、まさに昭和歌謡ミクスチャー。
ラップのようなフレーズが織り込まれており、ラウド色も強め。
鬱々とした感情を吐き出すようなメロディの洪水には、気持ち良ささえ感じられ、このキャッチーさも昭和歌謡wおベースにした楽曲の醍醐味ですね。
あまりへヴィネスを求めすぎると、硬派な印象になってしまい、女々しさが薄れてしまうものですが、この辺のバランスを、世界観の徹底に求めるか、音楽的な格好良さに求めるかは好みの問題。
未練節を鬱々と歌い上げるスタイルは、この手のサブジャンルの王道そのままなのです。
「ネオンの街」は、ジャジーなベースがレトロモダンな雰囲気を醸し出す、アップテンポな楽曲。
これもまた定番と言え、アコースティック風の導入から、バンドサウンドに移行していく構成なんて、わかっていてもワクワク感あり。
演奏面で斬新な部分は、特段見受けられないものの、1曲目の詰め込み感にくらべて、ストレートに仕上げているのは好印象。
展開が多くない中で6分以上ある楽曲なので、ややダレる面もありますが、キメをつくるなどのアクセントで工夫は見られます。
2曲通じて、懐メロックにふさわしいレトロっぽさが感じられ、哀愁的な音楽が好きな人にはたまらないですね。
規模を考えれば、音のバランスの悪さは仕方ないと思うものの、演奏の粗さは課題かな。
シンプルにいくのかと思ったら、唐突に不協和音を奏でる場面もあって、強引さが曲とマッチしていない部分も。
とっつきやすさを重視するのか、個性的にするのか、整理されたら化けるのではないかと。
じめじめしたダウナー感が満載の「雨にフラレタ」、ジャジーで小気味よい「ネオンの街」と、まずは王道構成でチャレンジしてきたといったところ。
あとは、このコンセプトをどこまで継続できるか。
ある程度やり尽くしたところで、ポップやラウドに流れてしまうバンドが多い中、新たな方向性も取り入れながら、芯としてやり続けることができれば、ますます期待が高まります。