埋もれた情報を掘り出すヒント | 特許翻訳 A to Z

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1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

何日か前に「早期審査」の英訳語 に意識が向いたことで、そういえば日本の早期審査制度は「いつから」始まったのだろうと、ふと思いました。
そこで試しに Google で

  早期審査 日本

と検索してみるものの、制度の説明や要件などの実務的な内容が膨大な数でヒットして、欲しい情報が見つかりません。

  早期審査 日本 導入

と絞り込んでも、誤差の範囲です。

1件目にヒットしたデータには、「2016年改正特許規則が5月16日に施行され、特許出願の審査結果がこれまでより早く出願人に送付される、早期審査制度が導入された」とあったのですが、発信者はJETROで、「インドの」規則改正に関する内容です。

このように、無関係なノイズが多すぎて、検索が使いものになりません

そこで、G-Searchの新聞データベースを使ってみました。
国内の特許制度改正は新聞に載ってくるはずなので、キーワードで検索して古い順に並べ替えれば、おおよその時期を特定できるだろうとの判断です。

結果は・・・・大正解でした。
「早期審査」というキーワードで511件ヒットしたうち、古いほうから2つ抜粋します。

特許庁は「日本の特許審査は時間がかかりすぎる」というアメリカやヨーロッパの批判をやわらげるため、実用化の可能性の高いものについては優先的に審査する制度を設けて審査期間を大幅に短縮することを決めました。 (中略) 日本の特許制度についてはアメリカやヨーロッパから「日本ではいつまでたっても特許として認められず成果を生かすことができない」という批判が高まっており、特許庁ではこの早期審査制度の導入が欧米の特許摩擦の解消にも大きく役立つものと期待しています。

特許審査期間を大幅短縮 欧米の批判緩和へ特許庁 実用化可能のものを優先的に審査  1985.05.26 NHKニュース (全492字) 

 

これまで約3年間かかっていた特許審査が5カ月間ですむようになった。特許庁が2月から審査のスピードアップに取り組んだ結果で、1日、その第1号であるブリヂストン社製のRCOT(走行制御最適理論)タイヤに特許が与えられた。 (中略) すでに製品化されていたり、生産に入ることが急がれている新案について早期審査の要望が出願者の間で強いことから、特許庁は緊急性の高いものに限って優先的に審査する手続きを2月から始めていた。これまでに92件の早期審査の出願があり、うち12件に近く特許が与えられる見通し。 (以下略)

 

5カ月で特許がとれた ブリヂストン、審査スピード化の第1号  1986.07.02 東京朝刊 9頁 1経 (全426字) 

 

どうやら、1986年のようですね。
私が特許事務所に入所した1989年には、まだ審査に相当な時間がかかっていた印象が強いのですが、制度としては1986という年号が出ました。

もう一度 Google に戻って、

  "早期審査" "1986年"

で検索します。すると・・・出てくる、出てくる。

「早期審査制度は、1986年に、審査請求から最終処分の確定まで約3年かかっている状況の中…」
「1986年に運用が開始された早期審査は、累次の…」
「早期審査制度は 1986年2月に創設され、当初の約 10 年間は「事業化の近い発明」 のみを対象としていたが、1996年1月…」
「特許庁は、2000年7月に出願人のニーズにより十全に応え得るよう早期審査の抜本的な拡充策を講じた…」


G-Searchの新聞検索は、記事の中身を表示するには費用(媒体によって違います)が必要で、今回はNHKが100円と朝日が100円の合計200円かかっています。

ただ、時間をお金に換算して考えると、検索エンジンで苦戦するより有料のシステムを介在させるほうが実は「低コスト」だということが、わりとよくあります。

特に仕事で調べ物が必要な場合は、なおさらでしょう。

インターネット上のデータは、増えていく一方です。
埋もれた情報を掘り出したいときの手段の選択肢として、今後ますます、有料のデータベースが価値を増してくるかもしれません。
最低でも、どんなものがあるか概要だけでも知っておくことは、翻訳者として不可欠な時代になってきたように思います。

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