和風クリスマスストーリー~三太爺とすぐる爺 その二 | 音楽でよろこびの風を

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世間を騒がす夫婦音楽ユニット 相模の風THEめをと風雲録

めをとの和風クリスマス物語 三太爺とすぐる爺 その二回目です。
昨日掲載の その一をご覧になる方はこちらへ。
http://ameblo.jp/sagaminokaze/entry-11966463423.html

初冬の中野村で捨て子を拾った三太爺さん。
その捨て子をどう育てるかで、村は大騒ぎ。
では、第二回目の物語をどうぞ!


三太爺とすぐる爺 その二

 しかしそこで、三太爺さんが声を上げます。
 「おう、佐助ドンよ。ちいと尋ねたいのだが、もしお前さんが子供を育てたとして、子供が病気にでもなったらどうするよ。」
 「そりゃあもちろん、しっかり看病して、お医者にだって見せるだ。」
 「もし、その時お前様も一緒に具合が悪くなったら、どうなさるつもりじゃ。しかし、銭は薬一人分しか買えないほどしか手元にないとしたら、どうする?」
 「子供に薬を飲ませるだよ、そりゃあたりめえだ。」
 「ようし、佐助にはちゃんと子供を育てる覚悟があるとみた。なぁ、すぐるさんよ、あんたのいうことはよくわかる。筋もしっかり通っておる。佐助ドンの稼ぎが今一つなのは、これから頑張ればいいことじゃないか。
ここはひとつ、当座の子供の食い扶持くらい用立ててもらえんかね。」
 「へん、こんな捨て子を、わざわざオレの大事な金を貸してまで育てたくはないね。それにさっき佐助はもし薬代が一人分しかなかったら、この赤ん坊にくれてやるといったが、それもおかしいんじゃねえか?佐助が薬飲んで、早く体治して、もっと稼いだほうがいいんじゃねえのか。なぁ、三太よ、オレはそう思うぞ。」
 「ははは。すぐるさんよ、まさにあんたらしいな。まぁ、金は大事だ。だがな、せっかくこんな縁でつながるかもしれない、若い夫婦と捨てられたかわいそうな赤子を、お前さんが取り持つ、というのも悪くはないと思うのだが、いかがかね?すぐるさんよ。」
 「へん、オレはご免だね。」すぐる爺さんはそっぽを向いてしまいます。

 そこへ村長のばび爺さんが助け舟の妙案を。
 「よっしゃ。じゃあ、こんなやりかたはどうだ。この村に捨てられていたのも何かの縁。そして佐助ドンが手を上げてくれたのも縁じゃ。よいか。実際に育てるのは佐助ドンとうめさん。だがそれにかかる銭やコメはこの村全員で均等に出し合う。みんな貧乏なのはワシだって知っとるが、さすがにこれだけ人数がいれば、一つの家がちょっとだけ出してくれれば、この赤子の分くらいは何とかなるじゃろ。その代りといってはなんだが、佐助ドン、村の中での仕事を皆より、多めに手伝ってくれるか?」
 「もちろんです、村長さん。ありがとうごぜえます。」
 「よ、村長、名裁きだね!」なんて景気のいい合いの手も入ります。
 「この赤子は男の子じゃったな。村のみんなで育てるのだから『村男~むらお』と名付けようじゃないか。」
 村のみんなは、わ~っとよろこびの声を上げます。
 と そこに冷水を浴びせかけるような声が。
 「オレはご免こうむるぞ。こんなガキにはびた一文ださん。」ちょっと険しい顔をした、すぐる爺さんの声です。
 「おいおい、すぐるさんよ、あんたに金を貸せっていう話じゃないんだ。みんなで出し合うのだから、あんたにお願いするのだって、ごくわずかじゃ。村一番の金持ちなんだからそれくらいはいいだろう。」
 「そいつは話のすり替えってやつだね。オレはそんな赤ん坊がどうなろうと知ったこっちゃない。」と荒っぽく言い捨て、寄合の場を出ていってしまいました。

 さすがに幼馴染の三太爺さんだけは捨て置けず、外に出てすぐる爺を捕まえます。
 「なぁ、すぐるさんよ、あんた、意地を張っているだけじゃないのか?たんとあるお前さんの財産が痛むような銭ではないぞ。」
 「へん、銭金の問題じゃないんだ。」
 「銭金の問題じゃなきゃ何なんだ。お前、引っ込みがつかなくなっただけじゃないのか。赤子をみんなで育てるなんて、なんか楽しいじゃないか。どんなに銭をため込んだって、あの世へは持っていけんぞ。」
 「うるせえやい、いいからそこをどいてくれや三太。」
とうとうすぐる爺さんは、行ってしまいました。


この続きは明日のライブ唄語りで披露します!

12月21日(日) 15時30分開演
東京は中野の 日替わりカフェ エカイエ~ののじ にて

出演 相模の風THEめをと ナミゴコチ

東京都中野区上高田1-34-1
JR中央線・総武線 中野駅より徒歩15分 東中野駅より徒歩10分
http://kaiwowaru.jimdo.com/

明日は相模の風THEめをと、今年最後のライブ。
一年間の感謝を込めてお届けします。