三太爺とすぐる爺 その1 | 音楽でよろこびの風を

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世間を騒がす夫婦音楽ユニット 相模の風THEめをと風雲録



もうあさって、ですが。
相模の風THEめをと 今年最後のライブを行います。

12月21日(日) 15時30分~
東京は中野の 日替わりカフェ エカイエ~ののじ にてです。
出演 相模の風THEめをと ナミゴコチ
東京都中野区上高田1-34-1
JR中央線・総武線 中野駅より徒歩15分 東中野駅より徒歩10分
http://kaiwowaru.jimdo.com/

この「ののじ」は僕の昔からの仲間、ばびろん佐藤さんがマスターをしているカフェです。

21日はクリスマススペシャルストーリーをお送りします。
日本昔話風クリスマスストーリー「三太爺とすぐる爺」を作りました。
これをめをとの曲と交え、「唄語りライブ」としてお送りします。

ただ。
この物語の創作に力が入りすぎました。
全部朗読すると1時間以上かかってしまいます。
そこで、ライブでは中盤の一部を抜粋して読むことにして、そこに至るまでの前半の物語をこのブログ上でお届けすることにしました。
これを読んでからご来場いただけると楽しみが増すかもしれません。
今日と明日の二回に分けて、ご覧下さい。
それでは始まり始まり~~。



  三太爺とすぐる爺   その1


 昔々、この中野の土地に すぐる爺、という金貸しのおじいさんと、ちょいと貧乏だけれど気のやさしい三太爺というおじいさんが住んでいました。ちなみに「三太爺」は数字の三に太いという字を書いて「三太」ですから、サンタクロースとかいう西洋の人とは関係ありませんよ。
 この二人のおじいさんは、小さなころからこの中野の村で育って、いわば幼馴染。でも、仲がよいかといわれれば微妙。まぁ、つかず離れずといったところです。

 そんな中野の村に、また今年も冬がやってきました。日を追うごとに寒くなってきます。

 すぐる爺さんは、金貸しなだけあってケチです。えぐい商売をしているので、村人に嫌われています。でもそうはいっても、いざという時に用立ててくれる人が一人もいないと、それはそれで大変。村人の多くは貧乏なので、すぐる爺に頼らざるを得ません。    

 12月も半ばになった冬の朝、三太爺が近所を散歩していると、小川の近くで何やら泣き声のようなものが聞こえます。
「おぎゃあ おぎゃあ」とくれば、もうお分かりですよね?小さな小さな赤ん坊が、この寒いのに菰(こも)にくるまれただけで川岸に置かれています。三太爺さんはびっくり。近寄って抱き上げます。
「おお、どうしたんじゃ、こんな寒いのに。お前のかあさんはどうした。」
 でも、赤子に問いかけたところで返事はありません。それに、問いかけるまでもなく三太爺にもわかっていました。この子は捨て子なんだろうって。
 幸いなことに、捨てられてからさほど時間もたっていない様子。体も冷え切っているわけではありません。何はともあれ、このままにはしておけません。この子を抱き上げて、ひとまず家に帰りました。三太爺は一人暮らしなので、子供の扱いもあまりうまくはありません。まずはおなご衆の誰かに声をかけなきゃ。

                    
 隣に住むばあさんに声をかけました。
 「おーい、小さな赤ん坊を拾ったのじゃ。どうも捨て子らしい。ちょっとお前様も見てくれんか。」ばあさんも、取るものもとりあえず外へ出てきます。
 「まぁ、こんな小さな子が捨てられてたって?大変じゃないか。と、とにかくまずは暖めなきゃ。三太爺さん、すぐ火を起こしておくれよ。そいでお湯を沸かさなきゃ。」
 そうこうしているうちに、村人も集まってきます。
 「どうしたどうした。」「あらら、こんな小さな子が。捨て子かい?」
 あっという間に村中に知れ渡ります。
 ばあさんが当座は面倒を見ることになりましたが、ばあさんも一人暮らし。それに自分が食べるので精いっぱいの暮らしぶり。とても、長い期間面倒を見ることはできそうもありません。
 その夜、村人は寄合を開きました。もちろん、この赤ん坊の面倒をどうやって見るか、という話し合いです。
 村長のばびじいさんはじめ、みんなで話をします。
 「あー、こういう小さい子を育てるんだったら、若い夫婦もんのほうがいいんでねえか?」そんな声も上がる中、おずおずと佐助ドンが声を上げます。
 「あの~」
 「おう、なんだ佐助ドン。」
 「オラとよう、ウチのうめとの間には子供ができねえ。もう一緒になって何年もたつのによう。だからよ、もしよかったら、オラッチが育ててみてえんだが。」
 「おおお、それはいいじゃねえか。おれ達も余計なお世話とは知っていたが、ちょいと心配してたのよ、お前たちのこと。そうか、育ててくれるか?」
 「あああ、だけんどよ、こんなこと言っておきながらアレなんだけれど、オラたちもまぁ、自分で言うのは恥ずかしいんだが、銭も米もぎりぎりしかねえ。なさけねえ話なんだけんど、そのう、すこしばっかり銭か米を助けてもらえたら、何とかなりそうな気がするんだけど。」
 すると、そこですぐる爺が鋭い声を上げます。
「おい、佐助よ。それはちいと筋が違うんじゃねえか。おめえが育ててえんだったら、その赤子の食い扶持くらいは自分で何とかせいよ。それが筋ってもんだろ。」
                      
まさに正論。佐助ドンもうつむいてしまいます。
 「そうだよなぁ。それはその通りだぁ。おらが甘かったよ。すまねえ。」


明日に続きます。