第5706回「シャッターアイランド その1、ドグラ・マグラを連想させる怪作 スコセッシ監督」 | 新稀少堂日記

第5706回「シャッターアイランド その1、ドグラ・マグラを連想させる怪作 スコセッシ監督」

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 第5706回は、「シャッターアイランド その1、ドグラ・マグラを連想させる怪作 スコセッシ監督」です。


 この映画を観て連想したのが、夢野久作の「ドグラ・マグラ」でした。精神病院を舞台とした暗鬱極まる推理小説です。現在ではなじみのない文体で書かれていますので、読みづらい小説になっています。ただ、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」、中井英夫氏の「虚無への供物」と並び日本推理小説界の三大奇書と呼ばれています(※)。


 既に書いたブログから「ドグラ・マグラ」の冒頭部分を再掲することにします。

 『 巻頭歌として、「胎児よ  胎児よ  何故躍る  母親の心がわかって  おそろしいのか」が掲載されています。そして、本文は「・・・・・・ブウウ―――ンンン―――ンンンン―――。」で始まります。現代であれば、ボーンと表現すると思います。振子時計が時を打つ音です。「わたし」は、その音で目覚めます。しかし、自分の名前を含めて、過去の記憶が欠落しているのです。今日の日付さえ分りません。どうも、精神病院のようです。


 隣の部屋では、「お兄様~、お兄様~」と慟哭する少女の声が聞こえます。「わたし」は、騒ぎを聞きつけた看護師に、自分の名前と今日の日付などを聞きます。やがて、"若林博士"がやってきます。若林博士は、「わたし」の記憶が回復すれば、全てが明らかになると語ります。そして、隣室の少女を紹介します。見覚えがないのです、しかし、すごい美少女です。


 若林博士はさらに語ります。「わたし」の記憶喪失は、亡くなった"正木教授"の「解放治療」によるものであること。その解放治療が実証できれば、ダーウィン、アインシュタインの功績にも匹敵すると。「わたし」の記憶を回復させるために、正木教授の部屋に連れてきます。そこに、分厚な資料があります。そして、「ドグラ・マグナ」なる本があります。本を開きますと、巻頭歌につづき、「・・・・・ブウウ―――」で始まっています。入院患者である大学生が、一気呵成に書いた本であるとのことです。・・・・ 』


 結末にたどりつくまでには、オデッセイ並みの努力が必要なミステリ作品になっています。


 話を「シャッターアイランド」に戻しますと、嵐の絶海孤島ものです。ふたりの連邦保安官が、ボストン沖の精神病院に行きます。子ども三人を殺害した女の患者が脱走したからです。しかし、嵐に見舞われ、保安官は島から出ることができません。


 島にあるのは、厳重な監視下にある精神病院だけです。保安官は、この島でどのような真実を見出すのでしょうか、という展開です。そして、冒頭に二つの謎が提起されています。

1. 四の法則とは何か

2. 67番目は誰?(島に収容されている患者は66人、それ以外の患者とは)


 本格推理小説を読みなれた人物でしたら、早い段階で真相に達するかもしれません・・・・。次回、ストーリーについて書く予定です。


(補足) 冒頭の写真は、"goo映画"から引用しました。ふたりの連邦保安官がフェリーで島に到着した冒頭のシーンです。


(追記1) "三大奇書"については、既にブログに書いています。

「ドグラ・マグラ その1」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10317360998.html

「ドグラ・マグラ その2」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10317414698.html

「ドグラ・マグラ その3、ネタバレ」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10317460690.html


「黒死館殺人事件その1」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10360149691.html

「黒死館殺人事件その2」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10360262592.html

「黒死館殺人事件その3」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10360430292.html

「黒死館殺人事件その4、ネタバレ」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10360698298.html


「虚無への供物その1、序章」  http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10379899523.html

「 〃 その2、第1章」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10380001628.html

「 〃 その3、第2章」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10380236797.html

「 〃 その4、第3章」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10380441606.html

「 〃 その5、第4章」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10380512371.html

「 〃 その6、終章、ネタバレ」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10380537591.html


(追記2) 「匣の中の失楽」を加えて"四大奇書"と言うこともあります。

「その1、前説」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10385903323.html

「その2、序章~2章」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10386072989.html

「その3、3章」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10386203311.html

「その4、4章」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10386536165.html

「その5、5章、終章」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10386664977.html