「こいつは効くから」
私の行きつけの床屋のユウジが、1年くらい前から育毛剤のサンプルボトルをくれる。
「小野さん、今なら間に合うよ、止めることはできるから。人によっては増える場合もあるから」
しかし、2~3回ちょびっと使って、それっきり忘れてしまう。
私の頭髪が減ってきている。
俺よりユウジの方が心配している。
俺の頭をいろんな角度から見ている人間と、全然見ていない本人の違いだろうか。
ユウジが焦っている。
何かやらなきゃいかんかしらね・・・・。
「小野さん、この辺ヤバいよ。この辺」
ユウジは今日、私の頭皮に育毛剤をたっぷり擦り込んでくれた。
育毛剤って、ハゲチャビン心理を巧みに利用した、ただの香りの付いた水だと疑っている私。
実際の効果よりも心理的効果の方が大きいのではないだろうか、と思っている私。
「そうじゃない、ちゃんと育毛効果があるんだ」
と言うメーカーがあるなら、挙手せよ。
自信があるなら、俺のところにサンプルを送れ!
1週間ぐらいで、髪の毛がふさふさになったら、信用してやるぞ。