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★間違いと独断だらけの日本文化紹介★
この女子高生の写真は前述の『図解 君の知らない日本文化の美』にも掲載されていますが、同書には表紙のどこにも『菊と刀』という原題は記載されておらず、
「日本学研究の元祖」ひとのおんを
「現代日本の運命に影響を与えた古典の巨著」とあるだけです。
また原著にはない図説が160、図解が30含まれており、翻訳者の解釈や見方が色濃く反映されています。
同書の序言には『菊と刀』が中国で売れている理由のひとつは、「目下の中日間の敏感な政治関係と複雑な歴史関係」にあり、「歴史を鑑(かがみ)にして、身近な隣人に対する理解を深める必要がある」ことを指摘したうえで、この本の狙いについて次のように明記しています。
「本書は斬新な『図解』編集スタイルを採用し、読者の理解を助けるために、味気ない文字をひとつひとつ簡約した流れ図にした。このほか、読者が直接に独特な日本文化を感受できるように、日本古代の精美な浮世絵を付け加えて、閲読を味わい楽しめるようにした」
ところが、内容を見ると、読者の理解を助けるどころか、逆に翻訳者の先入観や偏見が読者に誤解を与えることが懸念されるような間違いが数多く含まれています。
たとえば、「寿」と書かれたお祝いの品をプレゼントしている写真について、こう解説しています。
「まさにこのように、日本人は極めて恩に報いることに配慮しているからこそ、日本人は通常は人の恩を受けたくない習慣を身につけている。例えこの恩恵の価値がどんなに低くても、日本人はこれを負担とみなす可能性もある。写真の中の若い女性は目の前の友達にプレゼントを渡そうとしているところであるが、この女性からはうれしい表情が見えそうにない。たぶん彼女は心の中で、この恩に対して如何にして報いるかを計算しているかもしれない」
また、どこから探してきたのかわかりませんが若い女性を緊縛した写真が載せられており、次のような説明文が付いています。
「日本の伝統家庭の嫁は夫を助け、子供を教育するだけでなく、一生懸命舅(しゅうと)と姑の面倒を見なければならない。彼女たちは職業に就くことはできない。交際の範囲も広くなる可能性は大きくない。この写真の美艶(びえん)な少婦(若い娘)のように、層々たる枷鎖(かさ)は彼女を固く縛り捕えている」
さらに、多くの老人たちが体操している写真を載せ、こう解説しています。
「日本は発達した資本主義の社会といえども、実際の生活の中では依然として、相対的に保守的である。もし、どこかの老人が再婚を考えると、たぶん大半、子女の強烈な反対を受けるであろう。だから、日本の独身老人の数が非常に多い。彼らは非常に寂しい独身生活を過ごしているといえる。写真はこの日本の老人達が山登りの準備運動をしているところ。寂しくて退屈なとき、身体を鍛えるのも一つの悪くない選択である」
日本の子供の厳しい躾についても、母親の前で泣いている子供の写真を掲載して次のように説明している。
「日本の子供がいうことを聞かないとき、親が一番よく使う方法は『嘲弄』である。外界環境によるプレッシャーをかけることで、子供の自尊心を刺激して、自分の行為を改めることを促す。これは日本の『恥』の文化の最も重要な由来のひとつであるかも知れない」
また、畳の部屋の写真を載せて、「日本は子供に股割れズボンを履かせる習慣がない。日本の家は、一般的に地面は畳でできていて、赤ちゃんに汚されたら片づけられないからである」と述べています。
この他に注目されるものとしては、アメリカ占領当時の写真について、
「当時の日本内務省までも占領軍に性的サービスを提供するため、慰安所(RAA協会)を作った。日本人は『国家売春機関』と呼んでいる。この機構でサービスした日本人女性は前後合わせて、7万人に及んだ。ある中で『仕事』した女性の回想によると、最もピークのとき、1日55人のアメリカ兵を接待したことがある」
と具体的な人数まで言及しています。そして同書の結びには築地の海鮮市場の写真を掲載し、こう締めくくっています。
「清く涼しい夜、美味な海鮮。煩雑(はんざつ)で重苦しい『義務』と『情義』を脱ぎ捨てた人生はこんなに気楽で満足するものであることに、解放された日本人は気が付くかもしれない」
どうしてこういう解説がつくのかと首をかしげざるを得ないのですが、おそらくその目的は日本人の異質性を強調するところにあるのでしょう。
その根底に、日本人の異質性に目をつけた『菊と刀』をベースとした日本理解があることは間違いありません。
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