松本龍と人権擁護法案③ | 中谷良子の落書き帳

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こちらの記事の続き

龍氏のルーツを探るため、祖父の松本浩一郎について触れておこう。
“解放同盟の父・松本浩一郎の孫”という龍氏の立場は、地元では葵の御紋の印籠のようなものである。

ある時、部落解放同盟福岡県連の大会で浩一郎氏が演説に立った。
会場は、同盟員で溢れかえって超満員。

皆が浩一郎氏の登壇を今か今かと待っている。
そこに浩一郎氏が登場。

壇上の議長席には2人の男女がいた。
その1人の女性が帽子を深くかぶっていたという。

その時、会場から罵声が飛んだ。

『きさーん!(貴様)!松本先生の前では帽子をとらんか。女の分際で無礼だろうが』

浩一郎氏は、運動家にとっては「脱帽して向かえるべき人間」、つまり、彼らにとっては天皇であり、王なのだ。
そして、孫である龍氏は王子様だ。

先ほど触れた龍氏の昔話は、はっきり言って得意げに話すほどの苦労話ではない。
だが、王子様が得意になって話すので、おそらく周囲はみんな感動秘話のようにありがたく聞いてくれたのだろう。

実際のところどうだったのか、解放同盟関係者に聞いた。

『表向きは“解放同盟の父”の孫として扱わざるを得なかった部分もあるでしょう。『松本組』も地元では有名な建設会社ですしね。ただ、同盟員の間でどう思われていたかというと、実際のところ、解放運動ではほとんど存在感はありません。解放同盟の組織内候補ということなら、松岡徹(元参議院議員)が人権擁護法案や外国人参政権の集会で立法を訴えていました。松岡が私は大阪の貧しい地域に生まれて、と話せば、聴衆もウンウンと賛同できるんですよ。ところが、龍氏の同盟員のなかでの評判はさっぱり。“解放同盟の父”の孫、よりも“祖父がそういう運動をしていた”ってだけの話です』

解放同盟員に詳しい自治体職員がこう述べる。

『解放同盟員は今回のことで嘆きの声を挙げていますよ。これまで解放同盟関係で不祥事が起こると、“松本浩一郎先生の精神を継いでいないものがやった”と強弁するのが定番だったのですが、その孫が失言をしてしまった。今回のように、龍氏が非難を浴びる記事の文脈では、必ず“松本浩一郎の孫”と紹介される。「われわれにとっての運動の祖がこういう形で名前を出されるのは我慢ならない」と憤っている人が多いんです』

つづく

Journalist・三品純氏
$Jellyの~日本のタブー~


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