2つのプリーム-ル その2 | ろくでなしチャンのブログ

2つのプリーム-ル その2

                2つのプリーム-ル その2

 

 

プリムール

 

 プリムール(primeur)は、「初めての」、「一番目の」を意味する形容詞。

ボルドーでは、葡萄が収穫された翌年の春(概ね4月)に樽熟成中のワインを特別瓶詰めしたサンプルワインの試飲及び先行販売が行われています。

 

 シャトーにとっては、葡萄の収穫から醗酵、樽熟、瓶詰、出荷まで2年ないし3年かかることから、プリムールで販売できた場合は早期に現金収入を得ることができる優れたシステムであると言われています。 

 

 他方、ネゴシアン、輸入業者、カーヴィスト(ワインセラーの責任者)、ホテルグループ、ソムリエ(有名店の)等は、他者より優先的に確実に購入できる機会を得るというメリットがあります。

 

 プリムール(En Primeur)は、ボルドーのトップシャトーおよそ140シャトーのオーナー達によって結成されたプローモーション団体「ユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー」が、復活祭の約2週間前に行われる一大イベント。2011年の場合は4月4日から3日間開催され、開催される1週間はスメンヌ・ ドゥ・ プリムール~Semaine de primeurs と呼ばれ、ボルドー中が沸き立つ1週間となるようです。

 このプリムール、出品できるワインは原則としてユニオンに加盟している有名シャトーのみとなりますので、ボルドーにある凡そ5,000と言われるシャトーの殆どはプリムールとは無縁の存在であり、多くは瓶詰め後の販売となるようです。

 

 世界中からおよそ3,000人から4,000人と言われるジャーナリストを初めとする業界人にとって、プリムール招待状取得の可否は死活問題にもなるようです。近年ジャーナリストの制限を行わなければならない状態と言われ、ジャーナリスト枠は150人と言われているようです。
  

 さて、いわゆるプリムール週間とも呼ばれるスメンヌ・ ドゥ・ プリムールが存在する理由は、会場に出品されない有名シャトーには直接試飲の為に訪れる必要があり、各シャトーでも独自の試飲会を開催するようですので、1週間でも短いくらいとか。

 

 では、樽熟成中のワインを試飲して果して判るものなのでしょうか。ワインは通常の状態ではないので、ジャッジには相当の経験が必要となり、テイスターの歯はタンニンで真っ黒に染めらると言われています。

 プリムールのティスティングを描写した、発行所 株式会社ヴィノテーク「スキャンダラスなボルドーワイン」を勝手に引用すると、

 

 全ての訪問者がワインを試飲できるのだが、ジャーナリストたちには専用のティスティングが用意されていて、そこでは「ブラインドで試飲しますか、オープンでしますか」と、各人が尋ねられる。シャトー・アンジェリュスでは、ブラインド希望のジャーナリストをホールの一角に集め、番号だけが記されたボトルから試飲させていた。それ以外の人は、ラベルが見えている状態のボトルから試飲する。

 試飲にあたってブラインドが良いか、そうでない方法が良いかについては、意見が分かれるところだ。ブラインド支持者の主張はシンプルであり、その方法だけがワインに偏らない判断を下すことが出来るとするものである。ブラインドで試飲する際には、色、香り、味わい、テクスチャーへと注意が向けられる。一方、ブラインドに反対する人々は、試飲に時間がかかること、判断を誤る可能性があることを指摘する。試飲会週間が始まったこの日、焦点となっていたのは、シャトー・アンジェリュスなり他のワインなりが、高い品質かどうかではなかった。たとえ貧弱なヴィンテージであっても、この試飲会にでてくるような高級ワインなら、常にある程度の品質は保っているからだ。問題は、どれぐらい高品質で、値段がいくらになるかであった。試飲するにあたってラベルがさらされている、隠されているといって、その答えは変わらない。少なくとも、そのように議論されていた。


 ブラインドであろうとなかろうと、ティスター達は各々のサンプルをグラスに注ぐのだが、このときにはワインが空気に触れるようにと、グラスの4分の1程度までしか液を満たさないようにする。そして、この貴重な液体を手の温度で温めてしまわないように脚の部分を持ち、グラスを向こう側に傾けてまずは外観を確認する。曇っていたり、泡立っていたりすれば問題である。赤ワインは熟成するにつれて色が淡くなり、茶色がかってくるが、ボルドーでも最良のワインならば、若いうちは深い紫色をしている。色には艶があるほど良い。

 

 次には渦を巻くようにグラスを軽く揺すり(スワリング)、グラスを鼻に近づけていって香りを確認する。ワインを撹拌することによって、芳香が強くなる。スミレの花、フルーティなさくらんぼ、青臭いハーブ、スパイシーな丁字といった様々な香りが現れてくる。

 ようやくグラスに唇があてられる。少量のワインを口に含んで舌の上にのせ、音を立てて空気を吸い込みながら液体を撹拌、口中に行きわたらせる。舌の先ではワインの甘味と塩味、両わきでは果実が持つ酸味、舌の奥では苦みがそれぞれ感じられる。ほおの内側ではタンニンを計るようにする。タンニンとは、葡萄の皮や種から引き出される収斂性を持つ物質のことである。味わいには、持続性があるだろうか。ワインを飲みこむことはせず、前かがみになってワインを吐き出すようにする。吐き出す先は陶製のじょうごの内側であり、それぞれのテーブルの中央に置かれている。じょうごの下にはバケツがあるのだが、バケツそのものは見えないように木樽の中に置かれている。バケツがいっぱいになったら、やせぎすな女性接客係たちが空のバケツとの交換にやってきて、混雑の中をまた戻っていく。シャトー・オーナー達も部屋のあちこちにいて、参加者がワインに下す「判決」を見守っている。

 

 たいていのティスターは、最低5秒間は口に含んでいるし、長い者だと10秒にもなる。これは、画家のパレットのような色とりどりの香りを、ことごとく識別するためである。ワインを吐き出した後には、しばしの間、次の行動を起さず、口中に残存する風味に意識を集してやる。簡単にメモをとるか、あるいはノート・パソコンにコメントを打ち込むものがほとんどである。

 ややこしいことに、新しいヴィンテージのワインはまだ赤ん坊も同然で、判断するのは容易ではない。発酵の終わった新しいワインがオーク樽に移されたのはほんの6ケ月前のこと、熟成に伴って現れる複雑性や、洗練された香りなどはまだ見えないままである。このような早い段階では、特定のワインが強健か否か、腐敗に侵されていない、熟した果実から造られたか否かを、言い当てるのがせいぜいのところであろう。葡萄が未熟状態、まだ青いような状態で収穫されていれば、決して偉大なワインは生まれない。逆に収穫が遅くなり過ぎれば、出来あがったワインにはプルーンにも似た煮えた風味が出て来てしまう。

 

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